――どういうことですか?
「ホロライブの"尊さ"をきちんと布教するために、キャラクターが話すエピソードをすべて理解したうえで作品をつくる責任があると思っています。だから描く前に“この人のことをちゃんと知りたい”と思って、過去の動画を何時間も見あさって、徹底的に解釈するんですよね。シンクロ率を高めていくっていうか……。
するとアニメを作り終えるころには、もうそのキャラが大好きになってしまっている、という……もうなんか至福の時間ですよね(笑)。この感覚は手描きアニメだけでなく、絵師さんも同人マンガ家さんも同じだと思います。
それで作品を発表したらSNSでリアクションがあるわけです。その声がモチベーションになって、また創作しよう、と。それで、またホロメンの動画を見まくって、“今日も推しが尊い”ってなって、創作して……というサイクルで、どんどんホロライブ沼にハマっていくんですよ(笑)」
――(笑)。おもしろいです! 「ファンアートを作る」という行為は、マジでオタク化に一直線なわけですね。
「そうなんですよ。そのなかで、最初はholoXの戦隊モノ感が好きだったんですが、今は設定がブレちゃう部分とかも推せるようになりました。ちょっと"メタい"発言になるのですが“しっかり者なのに配信で失敗しちゃう”とか“清楚キャラなのに下ネタを言っちゃう”とか(笑)。配信者としての素が出ると“お、推せる!”って思いますね。
同じキャラクター化された個体でもアニメやマンガと違って、ときに予測不能なヒューマンエラーが起きるのは、Vtuberならではのおもしろみだと思います。何が起こるかわからないからこそ、毎日見ていても飽きない。いや本当におもしろいので、今後も僕たちの動画を通して、精いっぱい応援していきたいです。
今後は"手描きの枠を超えていきたい"と思っています。今は手描きアニメだけですが、ミュージックビデオの制作や、コミックマーケットなどへの出展を考えています。いろいろとチャレンジしながら、自分たちが得意なことを通して推していきたいですね」
文化系人間たちならわかる「同じクラスの仲よくなりたかった子」
インタビューにあたって、筆者もホロメンの配信を見た。「いやまさかハマらんやろ」と思っていたが、結果から申し上げると、いま私は数名のYouTubeメンバーシップに登録している。いやほんまに恐怖。怖いくらいおもしろい。
インタビュー中にこまいぬさんと「ホロメンは文化系の学生だった人が、当時友達になりたかった女子なんですよね」という話になった。彼女たちのトーク内容から何かしらの"オタクみ"を感じるのだ。「あれこの人、もしや陰キャ(同族)か……?」みたいな、謎の安心感がある。
「ボカロを聴きながら登下校し、休み時間はラノベを読んでたあの子」みたいな。「ニコ動ネタや東方ネタでニヤニヤしていたあの子」みたいな。なんか、配信から"そこはかとない陰キャのかほり"が漂ってくるのだ。これは以前の記事で、アキバのコンカフェを回ったときに感じた安心感に近い。【参考→「ネットとメイドカフェって似てる」100店舗以上回ったふゅーちゃーさんが語る“コンカフェ20年史”が面白すぎた】
そういう子が、頑張ってアイドルをしている。これはもう応援するしかなかろう。私も学生のころは文化系男子特有の「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」ゆえに、デュフデュフ唱えることしかできなかったが、大人になった今は微力ながら応援ができる。くそぅ。私に絵の才能がある世界線で、ホロライブに出会いたかった。ファンアートってすばらしいなぁ。本気でそう思いながら涙目でスーパーチャットを投げる日々を送っている。
ゲーム好きの方はもちろん、こまいぬさんのようにアニメ・マンガ・インターネットなどのオタク文化が好きな方は見るべきコンテンツだ。マジで推しが尊すぎて用法用量とか音速で無視してしまうほどおもしろいので、ぜひ扉を開いてほしい。
(取材・文/ジュウ・ショ、編集/FM中西)