愛犬に向けていた愛情が外に。独身の今だからこそ見える世界を大切にしたい

──「最後の遠足」というエッセイでは、2年前に他界した愛犬のことに触れています。ふかわさんにとってその愛犬は、どんな存在だったのでしょうか?

亡くなってから、その存在の大きさを痛感しました。特に最後の数年は、心のどこかに“いつかお別れをしなければならない”という思いがあり、より愛情が深くなっていたような気がします。愛犬に向けていた時間や愛情が、お別れを機に少しずつ外に広がっていき、今回のエッセイにも書いたような、1枚の葉っぱをはじめとする、ほとんどの人が気にしないような存在に向けられていった。そんな風に感じています」

──もし、ふかわさんにパートナーやご家族がいらっしゃった場合、今の独特の感性はどのように変化していくと思いますか?

「パートナーや家族ができたとしたら、その存在がまぶしすぎて、いま見えている世界が見えなくなってしまうかもしれない。僕はそれを恐れているんです。タイトルの『ひとりで生きると決めたんだ』は結婚する、しないの話ではないんですね。僕は、独身の今だからこそ見えて出会える世界を大切にしたいと思っているだけなんです」

ふかわさんの見えている世界、とても興味深いです。いつまでもその輝きが失われませんように! 撮影/伊藤和幸

(取材・文/熊谷あづさ)


【PROFILE】
ふかわりょう ◎1974年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学在学中の'94年にお笑い芸人としてデビュー。長髪に白いヘアターバンを装着し、「小心者克服講座」でブレイク。後の「あるあるネタ」の礎となる。現在はテレビMCやコメンテーターを務めるほか、ROCKETMANとして全国各地のクラブでDJをする傍ら、楽曲提供やアルバムを多数リリースするなど活動は多岐にわたっている。著書に『世の中と足並みがそろわない』(新潮社刊)など。

『ひとりで生きると決めたんだ』(ふかわりょう著/新潮社刊)1400円+税 ※記事中の写真をクリックするとアマゾンの商品紹介ページにジャンプします