ものまねよりも大事なのはトークだと気づいた

 ドアの開閉音のものまねでは、「本物の電車のドアと同じように、口の両サイドから空気を出して再現します」という技法まで丁寧に説明して笑いを取る。ものまねの芸だけが立川さんの引き出しではないのだ。

「実は乗り物ものまねで、いちばん大事なのはトークなんだと後輩芸人たちにも話しています。お客さんを飽きさせないことの大切さに20年前に気づいて以来、私のステージはネタにする音の解説漫談・ものまね・まとめトークの3段構成で練っています。ただものまねを披露するだけではダメなのも、列車を走らせるだけじゃなく安全・定刻が求められる鉄道と一緒ですね」

 マニアックな音の解説や「元セメント会社社員」のユニークな経歴、そして視線が合ったお客とアドリブでのコミュニケーション、決めゼリフは「あなたはこれから電車に乗るたびに、あの黄色いヤツを思い出して笑いが止まらなくなる」。話芸も立川さんのステージには欠かせない。旅先で本当に立川さんのものまねを思い出して笑ってしまったという感想を聞かされることもあるそうだ。

「例えば蒸気機関車(SL)のものまねはすごく肺活量を要するので、マイクなしではさすがに体力面でやりづらくなってきます。でもトークならアドリブでいくらでも盛り上げられます」

 年齢を重ねても活躍できるスキルを培ってきた。おかげで芸人の仕事のほかに司会やセミナーの仕事でも全国を飛び回っている。

「サラリーマン時代は出張で新幹線や寝台特急に乗れることが楽しくて仕方なかったのですが、趣味を仕事にすることができた結果、かえってプライベートがない感じですね。新幹線に乗っても絶対に眠らずに音を聴いてネタを研究してしまいます。でも鉄道が好きですから、今の仕事が私の使命と思っています」と充実の日々だ。

安全確認のポーズも板についたもの

(インタビュー記事の後編と新幹線ものまね動画はこちら→「日本の鉄道の楽しさは世界トップクラス」外国人にも大ウケ! 鉄道ものまねレジェンド・立川真司35年越しの夢​

(取材・文/大宮高史)

《PROFILE》
立川真司(たちかわ・しんじ) 1959年12月生まれ。大分県出身、埼玉県所沢市在住。小野田セメントでのサラリーマン経験の後、独立しものまね界へ。テレビ・ラジオ・イベントなどでの鉄道・飛行機ものまね芸歴35年。ものまねショーレストラン『そっくり館キサラ』レギュラー出演中。アマチュア無線技士3級資格保持。

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