精子提供者との出会いと、コロナ禍で生じた恋愛観の変化

――後編でじっくり伺いますが、留学先での出会いには、卵子凍結の際の精子提供者もいるとか?

「はい。ドイツで仲よくなった友人が、私に精子を提供してくれると言ってくれたことで卵子凍結を本気で考えられたと思います。本の中では、彼からの提供を前提に話を進めていましたが、実はその後で事情が変わってしましました。

 というのも、彼はパートナーとの関係性を大切にしたいという気持ちが強まり、精子を提供することに悩み始めてしまって……。

 別の友達から、“あなたのことだから、彼が提供してくれた精子で子どもが生まれたら、相手のことを深く考えずに写真とかをどんどん彼に送りつけちゃうと思うから、考え直したほうがいいよ”と指摘されました。

 私が無邪気に送った写真でも、それを見た彼や彼のパートナーはきっと複雑な気持ちになるかもしれないと、そのときやっと気づいてハッとしました。相手をよく知っているからこその難しさを、今になって感じているところです

――出版から半年がたち、さまざまな変化が生じているのですね。著書のラストで“モテ”への興味が薄れたと述べていましたが、今のお気持ちは?

「おかげさまで、2022年の秋の終わりごろから“モテ”たい気持ちが再び沸いてきたところです(笑)。実は、秋の初めに新型コロナウイルス感染症にかかったり、勤めていた会社を辞めたりしました。先ほど言ったように、精子をくれる約束をしていた友達との関係も含めて、いろいろな変化があったんです。

 そうした中で、気持ちもだんだんと変わってきて、今また人恋しくなってきたというか。ただ、コロナ禍でどうやって新しく出会いを見つけたらいいかわからず、友達に相談したんですね。そうしたら、マッチングアプリをすすめられて。

 プロフィール写真を、“どう見ても、これ、私じゃないよね?”と思うほど、キレイに加工してくれたり(笑)、食事会のセッティングをしてくれたり、全部お任せしました」

――最近、ときめく出会いはありましたか?

「はい。友達にすすめられた当初は“この文化(マッチングアプリ)は自分に関係ない”と思っていたんです。初めましてのメールのやりとりすら、どうしたらいいのかわからず、友達に頼りっきりでした。

 でも、少し慣れてくると、普段とは違った交友関係を築くことで、“いろんな方とつながり、会って話したりするのって楽しいな”と思うようになったんです。

 実は、昨日も最近出会って“ちょっといいな”と思った人と食事に出かけたところです。ただ、飲みすぎて、醜態をさらしちゃったので、その後の展開は期待薄なんですけど……(笑)」

――また、好奇心旺盛な黒川さんが戻ってきたようですね。次にどんなアクションを起こそうと思っていますか?

「本を出したことをきっかけに、たくさんの方が感想を寄せてくださいました。どれも興味深いと感じているので、もっとじっくりと話を伺いたいなと思っています。例えば、ポッドキャストなどを利用して、そうした方に直接話しかけられたらいいなと。

 ヨーロッパの読者さんからは、“黒川さん、モテるから遊びに来てください”と言ってもらったので、本当にモテるかどうかを、いつか直接、確かめに行ってみたいですね(笑)

他者から受けた助言を素直に実行する黒川さんだからこそ、道が開き続けるのかもしれない 撮影/fumufumu news編集部