精神的な負荷を伴う卵子凍結を経て、筆者が“思い知った”こと

――卵子凍結までの具体的なステップを教えていただけますか?

「まず、さまざまなリスクを確かめるために、性病の感染歴を検査しました。以前、HPV(ヒトパピローマウイルス)、子宮頸がんウイルスの感染は無料で検査できると記事で知り、検査したことはあったのですが、驚く結果が出ました。

 自覚症状はなかったのですが、複数の性病に感染していたことがわかったのです。ただ、お医者様からは、卵子凍結に影響はないだろうと言っていただけてホッとしましたね」

――若い世代で梅毒が流行(はや)っていると聞きますし、検査は大事ですね。

「そう思います。無自覚のまま、誰かにうつすこともありえますし。あと、紹介していただいた団体の方からは、HPVワクチンを打つようすすめられました。一度感染していると、発症した後に長引いたり、妊娠にも影響が出るかもしれないという理由からでした。

 それで、かかりつけの産科婦人科の先生……、サーファーかと思うほど真っ黒に日焼けした男性の先生に(笑)、接種をお願いしました。さまざまなウイルスの型に対応したワクチンを実費で打とうとすると、最大15万円近くかかるそうです。たしかHPVワクチンは、当時接種を逃した人でも、無料で接種する機会を得られる人もいたと思うので、早めの接種をおすすめしたいです

※参考:ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種を逃した方へ~キャッチアップ接種のご案内~(厚生労働省ホームページ)

――通院などで大変だったことは?

「生理が始まった日から換算して通院日が決まるので、“休暇取得の調整が難しいな”と感じることがありました。

 通院以外では、10日間ほど服用するお薬と、自分で打つための注射、凍結の前日に必要な点鼻薬などが処方されました。点鼻薬が、卵子を留めるために重要らしく、“もし忘れたら、病院に緊急電話をかけてください”と言われました。

 注射は2種類あり、ひとつは糖尿病の方が食事前に自分で打つような、ごく細い針のもので、痛みもあまり気になりませんでした。もうひとつは、点鼻薬と同じ、凍結の前日に打つもので、“ザ・注射”という感じでした。

 さすがに自分で打つのはすごく怖かったですし、皮下脂肪をつまんで、“どうしよう……”と、恐る恐る打ちました。これは、精神的にも結構負担が大きかったですね」

――薬や注射の副作用はいかがでしたか?

「低刺激だったからか、普通に仕事もできましたし、凍結前日に遊びへ行くほど元気でした(笑)。凍結の日、お医者様から“卵子は4つ取れましたが、凍結できるのはひとつだけ”と言われて、それとは関係ないそうですが、内心、“前日に遊びすぎたせいかも……”と反省したくらいです。

 凍結可能な卵子がひとつだけという事実も、かなりショックでした。実は、クリニックに通うたび、待合室にいるほかの方と私は違うと思っていたんですよ。

 私以外はパートナーと来院していることもありましたし、“私は不妊治療のために来ているわけじゃない”という気持ちがあったのだと思います。でも、ショックを受けたときに、“私もほかの方と何ら変わらないんだな”と思い知らされました

勇気を持って話してくれた 撮影/fumufumu news編集部