──あと、カンガルーみたいにポケットがあるけど、おしりに向かって後ろ向きについているそうですね。
ウォンバットの袋が後ろ向きについている理由は、前向きについていると穴を掘ったとき、かき出した土が袋に入ってしまうから。それで後ろ向きについたと言われています。
なので、たまにウォンバットの子どもが袋から顔を出していると、上から母親のうんちが降ってくることも(笑)。ちなみにコアラとウォンバットは近縁なんですけど、コアラも袋が後ろ向きについてるんですよ。
──そういえば、なんとなく顔も似ていますね。
似てますよね。共通の先祖を持っているようです。
日本の動物園でウォンバットを見るときのポイントは?
──ところで、ウォンバットの毛は硬いんですか? カピバラと似ているような気がするんですけど。
似てるけど、ウォンバットのほうが毛深いんですよ(笑)。カピバラはアマゾンの川に住んでいるので、逆に毛深いと水はけが悪くなってしまう。でもウォンバットは穴を掘るので、汚れないように体をコーティングするため、毛の密度が高いんです。
──ウォンバットはつぶらな瞳が印象的ですが、喜怒哀楽はあるんですか?
寝ているときは巣の中にいるので観察できないんですけど、怒ってるなとか、甘えてるなという声はわかります。
──感情はあるんですね。
人間が持つ感情とはおそらく違いますが、敵が向かってきたときに威嚇したり、メスのウォンバットに近づいたり、親に甘えたりというコミュニケーションの方法としての声は持っていると思います。
──実際にウォンバットをこの目で見たくなりました! 日本でもウォンバットが見られる場所が茶臼山動物園(長野県)と、五月山動物園(大阪府)の2か所にあるそうですが、実際に動物園に行ったらどこを見たらいいでしょうか?
うーん、そうだなあ……。動物園だと水を与えられるし、水分の多いフルーツなども食べていると思うので四角いうんちを見つけるのは難しいかもしれません。やっぱりかわいい顔して意外とデカい体とか、顔に似合わず鋭い爪などを見てほしいですね。野生動物特有の力強く生きる姿を見ていただけたらいいのかなと思います。
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【後編】(2月12日11:00公開)では、ウォンバットをはじめ野生動物たちがさらされている危険について高野さんがとことん話してくれました。
(取材・文/花村扶美)
〈PROFILE〉
高野光太郎(たかの・こうたろう)
ウォンバットを愛し、またウォンバットに愛されたウォンバット研究者。 愛知県出身。2012年に日本の高校を卒業後、タスマニア大学理学部動物学 科・同大学院生物化学修士課程修了。 メルボルンでの就労経験を経て、現在はサンシャインコースト大学健康• 行動科学部でさらなるウォンバットの研究に携わる。