映画、ワイン、ダンス。誇り高く文化を守ってきた国

  『斜陽の国のルスダン』の舞台化にとどまらず、近年の日本ではジョージアへの関心が増しつつある。一例が映画だ。20世紀初頭から現代まで、ジョージア映画の名作を集めた「ジョージア映画祭」が2022年には年内をかけて日本国内11都市を巡回、’23年2月17日からはジョージア生まれのオタール・イオセリアーニ監督の全作品を上映する「オタール・イオセリアーニ映画祭」が東京を皮切りに全国各地での上映が始まる。ジョージアは名匠を輩出した映画の国でもあり、並木さんもセルゲイ・パラジャーノフ(1924~1990/トビリシ生まれのアルメニア人監督)の作品を好きで観ていたそうだ。

周辺地域に比べて独自の歴史と文化を持つ点で、日本とジョージアは似ているかもしれません。周りの国々の影響を受けながらもジョージアは文化を守り、それを特別な誇りに思っています。とりわけダンスや、世界最古のワインはこの国の誇りです。そして人々は互いに思いやり配慮することができます。こういった気質が、日本のみなさんにも共鳴するのかもしれません」

 とレジャバ大使は語る。

 ジョージアは近代にも帝政ロシアに支配され、1917年にロシア革命で帝政が崩壊すると翌年に独立を宣言するも、’21年にソビエト赤軍の侵攻で社会主義共和国として編入され、’91年に独立を回復した歴史がある。2015年には国際的な国名をロシア語の「グルジア」から英語由来の「ジョージア」に変更。数百年ぶりに強国の影響から脱したこの国の豊かさを伝えるため、ついにはジョージア文化を案内するガイド本『大使が語るジョージア 観光・歴史・文化・グルメ』(星海社新書)をこの1月26日に発売するに至った。

『大使が語るジョージア 観光・歴史・文化・グルメ』(星海社刊) ※記事中の写真をクリックするとアマゾンの商品紹介ページにジャンプします

「2019年に日本に赴任しましたが、そのころからジョージア文化への日本での関心は高まりつつあったと思います。ただ、ジョージアのエキスパートは日本でも少なくて、もっとこの国を知りたいというニーズに私が応えていった結果、こうして話題にしていただけるようになりました。

 私はジョージアの特定の何かの専門家、というわけではありませんが、ジョージアと日本のために知識と経験を提供してきました。このたびの本でも、ジョージアの情報がもっと伝わるといいですね」

 ヨーロッパとアジアの接点で苦難の歴史の中でも文化を守り、ジョージア人というアイデンティティを忘れなかった人々の営みが、機が熟したかのように日本でますます脚光を浴びつつある。ようやく日本からの海外渡航も自由になりつつある今、ふたつの国の距離がさらに近くなることを期待したい。

(取材・文/大宮高史)