女性最高齢は82歳のおばあちゃん

 着想のもとになったのは2013年10月に報道されたニュース。

 男性が約1000人、女性が約350人という会員数の「高齢者売春クラブ」が警視庁に摘発されたというもの。最高齢は男性が88歳のおじいちゃんで、女性は82歳のおばあちゃん。男性経営者も70歳だった。

 当時の新聞記事には《(逮捕された)男は「40歳以下はトラブルが多いので高齢者を対象にした。風俗業の印象を与えないために、『茶飲み友達募集』として人を集めたが、売春希望者には趣旨が分かると思った」などと供述し、容疑を認めている》とある。

「真っ先に私が思ったのは、“この1350人もの人たちはどこへ行ってしまうんだろう?” ということでした。もちろん法に触れることはNGだとしても、摘発して何か変わるんだろうか。こういうことで救われる人もいるだろうに……と、自分の中の正義感が揺らぎましたね。

 そして、そのときに感じた “揺らぎ” をいつか映画にしたいと思うようになりました」

 事件をヒントに『茶飲友達』のもとになる脚本の執筆をスタート。10年近くの歳月をかけて企画・撮影・劇場公開までこぎつけた。

「三行広告を出したこと、新聞を見て会員になった人が1000人以上もいたことだけを残して、ストーリーの展開は全部オリジナルです」

ギャンブル依存、親と子の関係、貧困や予期せぬ妊娠など、さまざまな生きづらさが描かれる (C)2022茶飲友達フィルムパートナーズ

「シニアがメインとなる事件ではありますが、売春クラブを運営する側を若者に変更して、高齢者をたぶらかす若者たち = 騙(だま)している側も実は明日が見えないという現実も描こうと。若者の閉塞感のようななものを入れることで、全体を通して日本社会の現実が浮かび上がってくるといいなと思って書きました」