『カメラを止めるな!』との共通点

 製作したENBUゼミナール(※)は2018年6月に都内2館から最終380館以上、220万人以上を動員した『カメラを止めるな!』(上田慎一郎監督)で知られる。作品は『カメ止め』と同じ「シネマプロジェクト」の第10弾として企画された。

(※)東京・五反田にある俳優・映画監督の養成スクール。卒業生に映画監督の市井昌秀、岨手由貴子、早川千絵、劇作家の本谷有希子、根本宗子など。シネマプロジェクトでは『カメラを止めるな!』のほかに、今泉力哉監督『サッドティー』『退屈な日々にさようならを』、二ノ宮隆太郎監督『お嬢ちゃん』など10作品を製作・公開してきた。

「コロナ禍で業界全体が止まった時期があったじゃないですか、あのときに私がENBUゼミナールに売り込みに行ったんですね。まさにカメラが止まった、という出発点からです。

 われわれ監督はものを作っていかなきゃいけないし、俳優は世に出ていかなきゃいけないし、“一緒に映画を作りましょう” と。コロナ禍が厳しくて撮影時期が延びたり、中止を余儀なくされたりしましたが、そのたびに団結力が強くなった気がします」

 2021年の3月から4月にかけて、ワークショップオーディションを実施。応募者667名から書類選考で選ばれた107名が5組に分かれて参加した。外山監督自身が「真剣勝負だった」と語るこのワークショップを経て、33名のキャストが選出された。

演出中の外山文治監督。コロナ禍の中2021年12月、のべ21日間の日程で撮りきった

 それにしてもティー・ガールズを演じた熟女たちなど、個性ゆたかな高齢者キャストには驚かされる。SNSやインターネットを通じた告知でも《年齢・性別制限なし(60歳以上大募集!)》とはうたっていたが……。

「実はワークショップを通じて映画を作る中で、一番のネックはそこだったんですよ。世に出たい若者はたくさんいるし、若者の応募は見込めるだろうと。でも扱う題材が題材ですから、シニアの方がどれくらい来るのかなっていうところが大きな課題だったんですね。

 ところがたくさん来たんですよ。世の中に出ていきたい人は若者だけじゃないんだ。高齢者だって人生を畳むだけじゃない。未来を見つめてチャレンジしているんだ、っていうことにも気づかされました」