Creepy Nutsも僕らも、どんな顔してたらいいのかわからない
──一方で佐久間さんのラジオによれば、現段階でコント師としての明暗が分かれているのが「器用で上手なR-指定さん」と「まだ“伸びしろ”があって未知数の松永さん」でした。みなさんはCreepy Nutsおふたりの演者としての魅力を、どのように感じていらっしゃるのでしょうか?
オークラ R-指定のラップを聴いたときに、劇団ひとりの単独ライブや(立川)志の輔さんの創作落語をイメージしました。1人でステージに立つ人間の最高峰、みたいな姿を連想して。今回はそういう僕のイメージをライブに落とし込んでみました。でもそのイメージを軽々と超えてきたから、すごいなって。「もっと進化できるな」と稽古しながら感じている状態ですね。
飯塚 R-指定くん(以下:Rくん)はとにかくうまいね! 求められていることを的確に理解して、すぐ形にしてくれます。今回、Rくんが主役のネタがあるんですけど……度肝を抜かれると思いますよ!
角田 稽古中に言われたことを直して試行錯誤している様子を見てたら、「Rくんって飯塚さんに似てるな」って思ったの。
豊本 あるかもね。Rくんは自分の頭で納得するまで、きめ細やかにブラッシュアップしていくタイプだよね。やるたびにセリフを微調整しているのが本当にすごい!
飯塚 演出するたびによくなっていくタイプだから、Rくんは放っておいても大丈夫。で、松永くんは……。
豊本・角田 飯塚さん、ラジオで何しゃべったの?
飯塚 ラジオで紹介したエピソードのときだけ、松永くんの調子がめちゃめちゃ悪かったの。うちらも若手のころ、スタッフがたくさん見ている中でやるコントがいちばんやりづらかったでしょ? それと同じ状況になっちゃって。
オークラ 見学者がいっぱい来るの初めてだったんだよね? そこに今回の武道館ライブにゲスト出演する佐久間さんが来てイジり始めたもんだから、コント先生の飯塚さんも乗っかっちゃって(苦笑)。
──ラジオで飯塚さん、「松永を落第させずに卒業させてやる」ってコント教師としての血が騒いでいましたよね(笑)。
飯塚 松永くん、緊張しちゃって雰囲気に呑まれていましたからね。そういう状態のときに何か注文すればするほど、おかしくなるじゃないですか。その様子を楽しんでいました(笑)。でも悪いことしちゃった。これから松永くんが稽古場に来たら謝らなきゃ。
一同 (爆笑)
角田 松永くんっていい意味で思い切りがいいよね。何も考えずに稽古場へ来て、大胆なことをしてくれる。自然体でいるとタイプが異なるのが、Creepy Nutsの魅力なんじゃないかな。
豊本 ニコイチ感あるよね。普段一緒に活動しているうえでもタイプが違うからいいって場面がたくさんありそう。松永くんは何をしてくれるのか予想つかないから、本当にワクワクする。
オークラ 松永が抱えている“厨二感”をコントに落とし込んだら絶対におもしろいですよね(笑)。ただ、言うても彼はDJで世界一になった人物。そのキャリアをエンタメに落とし込んだら、またすごいことができるんでしょうし。まだその部分は稽古できていないんですけど。
──楽しみですね! 番組では佐久間さんが「オークラさんの脚本や作風に共鳴したCreepy Nutsが音楽をつけた」とおっしゃっていました。ヒップホップとお笑いの融合は、どんなイメージで果たされるのでしょうか?
オークラ ヒップホップとお笑い文化の「交流」というより、「お笑いにCreepy Nutsが乗っている」って言ったほうが適切かもしれません。というのも、Creepy Nuts個々人が持つスキルではなく、「人間性」を前面に出しているんですよね。ラジオパーソナリティーであるCreepy Nutsの精神性をコントの世界観に落とし込んだり、ドラマチックなラップをつくるR-指定や“厨二感”満載なDJ松永の人間性にスポットライトを当てて、「どうしたらもっとおもしろくなるんだろう?」「カッコよく見えるんだろう?」というトライ&エラーを、いつもとは異なる方向性で形にしてみたいと考えています。
──吉田ユニさんが手がけたキービジュアルにも、そういった想いが込められているのですか?
オークラ そうですね。結果、これまで観たことがないようなショーができあがったのはいいけど……完成した作品を、自分たちでも「なんと括っていいか、まだ分からない」んです。ユニさんには、僕から「まだ自分たちの括り方を知らない人たちの“混沌”を表してください」とオーダーしました。そうしたら、03とCreepy Nutsが縦軸と横軸で編み込まれているあのデザインを提案してくださって。キービジュアルからコントの世界観をもらったり、刺激を受けたりしましたね。
──ラジオパーソナリティーとしてのCreepy Nutsの精神性を、オークラさんはどんなところに感じていらっしゃいますか?
オークラ 自分たちの突き進む道が歓迎されず、雑音が聞こえてきたときの反応かなぁ。Rと松永って学生時代は一軍じゃなかったのに、最近になってスターになりましたよね。けど人気が出たことを「リスナーから歓迎されていない」と思い悩んでいる。そういう姿勢を、彼らのラジオからすごく感じるんです。エンタメや笑い話にしながら、悩みを吐き出しているような。それって03にも通じるんじゃないかな、と僕は思っているんですけど。
飯塚 稽古も序盤だし、まだ正直わからないんですけど……「似たようなタイプなんだろうな」とは感じてた。僕らも華やかな学生生活を送っていなかったし。
角田 モテたことなんて一度もないしね。
豊本 冴えなかったもんね〜。
飯塚 好きなことを続けて、苦手なことは一切やらず逃げ続けてここまで来ましたから。で、最近ちょっとだけ「コントおもしろいね」ともてはやされるになった。だから正直どうしていいか、わかんないんですよね。50代に突入して、そんな季節になりました。
角田 持ち上げてもらえるほど、何か達成した覚えがないんだよね。
豊本 どんな顔してたらいいのか、わからないんです。
飯塚 そういう僕たちの心境を、このライブでオークラが表現してくれているんだろうなって。ご覧いただけたら、うれしいです。
(取材・文/岡山朋代、編集/福アニー、撮影/有村蓮)
【Information】
●公演『東京 03 FROLIC A HOLIC feat. Creepy Nuts in 日本武道館 なんと括っていいか、まだ分からない』
日時:2023年3月4日(土)17時半開演、3月5日(日)16時開演
出演者:東京03/Creepy Nuts
ゲスト:
3月4日(土):佐倉綾音/若林正恭(オードリー)
3月5日(日):百田夏菜子(ももいろクローバーZ)/春日俊彰(オードリー)
全公演:吉住、GENTLE FOREST JAZZ BAND、佐久間宣行 ほか
作・演出:オークラ
配信チケット:4500円(税込)
販売期間:3月26日(日)20時まで
アーカイブ期間:イベント終了後即時~3月26日(日)23時59分