みんなで鰹節文化をつないでいきたい
「近ごろは中学生とか、若いお客様が増えてきました。私たち日本人は鰹節が好きなんだなってつくづく思います。鰹節は昔から継がれてきた食文化で日本の味を守ってきた価値ある存在。私たちの味覚DNAは立派だと実感しています」
「ミシュランガイド東京2022」「ミシュランガイド東京2023」の「ビブグルマン」に2年連続で掲載された。
「いまだに信じられない(笑)。でも嬉しかったのは、審査員のコメントに『日本の味を伝える、まさに日本のお母さんのような存在の店』とあって、日本の食の基本だと言ってくださったことです」
今年2月には初めてのエッセイ本『鰹節を手削りする 美味しい暮らし』(主婦と生活社)を著した真依さんだが、今後は海外進出も考えていて、鰹節の可能性をグローバルに拡大する予定だという。
「パリとイタリアのシェフが大勢お店に来てくれるので、ヨーロッパのシェフたちとコラボして、世界の視点で鰹節を見てみたいです。鰹節だけではなく、日本を離れていろんなインスピレーションを感じたいですね。
鰹節を手削りする暮らしの中で、おいしいと感じる文化をつないでいくことが私の目標。本が出ましたとか、賞をいただきましたとか、感謝することはいっぱいあります。でも暮らしにつなげていくという意味では、勝負はこれからだと思います。
いろんな人にお店に立ってもらって近々、夜営業もやろうと考えています。削り器をカウンターに置いておつまみに鰹節をかけたら楽しいですよね。私はワークショップをやったり、学校給食のために削りに行ったり、鰹節を広げる活動もやっていく予定です。
おじいちゃんとおばあちゃんの思いを受け継いで10年。鰹節への愛情でここまで続けられたという。
「友達に“お前にこんなガッツがあったか”なんて言われます。不思議と辞める考えが出てこなかったことかな。ひとえに“カツオ愛”です(笑)。
東京・月島の住吉神社に『鰹塚』があって、カツオの神様が眠ってるんですよ。毎年、挨拶に行っています。暮らしの中に少しずつ鰹節が広がっていくことを願って」
(取材・文/浦上優 撮影/山田智絵)