田舎のコンビニにいそうなカップル、反抗期の息子と上手に話せないお父さん、7年ぶりに再会した元夫婦……。

 どこにでもありそうな日常に迫ったネタで、YouTubeやInstagramで人気急上昇中のお笑いコンビ、スクールゾーン。緻密な人間観察をもとに作られた物語のなかには、笑いだけでなく胸をわしづかみにされるような切ない描写もあり、新世代のコント芸人のなかでもひと際、異彩を放っています。

 高い演技力にも定評があり、その才能はユーミンや竹中直人さんなど数々の大物芸能人も認めるほど! フジテレビの人気番組『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』の常連でもあるおふたりに、ネタ作りのヒントやコンビの歴史、これからの目標について語っていただきました。
(※インタビューを前後編にわたってお届けします。前編ではスクールゾーンが得意とする、あるあるネタの誕生秘話や、ユーミンとの交流についてもお聞きしました!)

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ユーミンも爆笑! 韓国料理店あるある

──昨年は、松任谷由実さんのいちばんの推し芸人としてバラエティ番組に登場し話題になりました。

俵山 ユーミンさんが僕たちのSNSを見てくださっていて。最初に聞いたときはびっくりしました。2021年には『松任谷由実のオールナイトニッポンGOLD』にもゲストで呼んでいただいて、本当にありがたいです。

橋本 ぼく、今年の初夢にユーミンさんが出てきたんです(笑)。そのことをユーミンさんに伝えたくて新年のあいさつとともにメールしたら、「スクールゾーンは大丈夫、あなたは素敵な色気があるから大丈夫よ」ってお返事をくださって。

俵山 2021年に『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』で僕が優勝したときも「ほら、やっぱりそういうことよ!」って喜んでくださいました。こんなすごいアーティストの方に響くものが、僕たちのネタの中に少しでもあるのかと思うと嬉しいです。

ユーミンもお気に入りの“韓国料理屋”シリーズ(YouTube「スクールゾーンChannel」より)

こんな人いる! クセになるモノモネシリーズ

──おふたりとも2019年からInstagramを始めて、日常の「あるあるネタ」をアップし続けています。俵山さんは「人間モノマネ」のシリーズで、老若男女問わず幅広いキャラクターを変幻自在に演じられていますね。

俵山 「よくネタがつきないね」って言われることは多いんですけど、人の数だけやりようはありますね。とりあえずカツラかぶってみたり、サングラスかけてみたり、いろいろやっているうちにできあがる感じです。

橋本 二人でいるときに見た光景や人が、結果としてネタになることもあるよね。

俵山 いまは普段の生活のなかからヒントを得ることがほとんどです。仕事で出会う人もそうですし、映画や読書の内容が思い出とリンクして、キャラクターが思い浮かぶこともあります。

『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ』で優勝した際に披露したネタを4連発!(YouTube「スクールゾーンChannel」より)
どこかで会ったことがある……? どんなキャラも器用に演じる、まさに憑依型芸人!(YouTube「スクールゾーンChannel」より)

──橋本さんは得意の韓国語を生かした「韓国あるある」で、BTSなど韓流アーティストのファン層からも注目されています。

橋本 新大久保の韓国料理屋でアルバイトをしながら、独学で韓国語を覚えました。お母さんの影響で中学生のころから韓国ドラマが好きで。そのころはあんまりお笑いには興味がなかったんです。

──どんな学生時代でしたか?

橋本 ほかのお母さん方から「あの子、変じゃない?」って言われるような子どもだったと思います。いたずら好きで、体育祭の徒競走でもわざとフライングして、失格になったことを気づかずにそのまま最後まで走り切る人を真面目に演じたりしていました。

 あと、中・高を通じてサッカーは頑張ってました。中学では原口元気選手と同じクラブチームで、一緒にプレーしてたんです。埼玉・秩父の農業高校に進学してからもサッカーは続けました。

新大久保にいそう! 橋本さん演じる「韓流好き女子・りょう子ちゃん」シリーズ(YouTube「スクールゾーンChannel」より)

お笑い好きと韓ドラ好きの学生が出会うまで

俵山 僕は新潟出身なんですが、中学生のころからお笑いが大好きでした。『M-1グランプリ』や『はねるのトびら』を見て、漫才師のつっこみってかっこいいなぁって。キングコングの西野亮廣さんに憧れて、新潟育ちなのに関西弁でしゃべったり(笑)。一方で親が教師で厳しかったので、真面目でもありました。僕もサッカーをやっていて、ガキ大将みたいな部分もあったかな。

──俵山さんは新潟県でも有数の進学校出身で、しかもご両親が教師で、お笑い芸人になることを反対されませんでしたか?

俵山 「大学に行っといたほうがいいんじゃない?」とは親に言われました。結局許してくれましたけど、どうせ僕がすぐ心折れるだろうと思ってたみたい。

 上のきょうだいが、大学を途中でやめたりしている姿を見て「大学ってそんなにいいところなのかな? やりたいこと探すって言っても自分はもうあるし」と考えてもいました。親も安定はしているけど、大人って100%超楽しいってわけじゃないんだと。

小学生の女児からおじいさんまで、数百ものキャラクターを見事に演じ分ける俵山峻さん。特技は幼少期からたしなむバイオリンで、ネタ内で披露することも 撮影/吉岡竜紀

橋本 僕はいろんなところでも話してるんですが、高校3年生の下校時に、泥だらけで泣いてる小学生とおばあちゃんが一緒に歩いている様子にたまたま出会ったことがきっかけなんです。その姿がなんだか悲しくて、でも何もできない自分がいやで、ふと「芸人になろう」って。僕が有名人だったら、このふたりを喜ばせることができたのに、と感じて。

──すてきなエピソードですよね。

橋本 でも最近になって、ふと記憶がよみがえってきて……。この頃、僕お笑い芸人にはまったく興味なかったはずだと思っていたんですが、実はひとり、いたんですよ!

俵山 当時よく口ずさんでいたリズムネタを、急に最近思い出したんだよな(笑)。

橋本 沖縄県出身のピン芸人、デイエノボルさん! 検索して久しぶりに動画を見たら、この方は絶対に優しい人なんだろうなということがまず伝わってきて。

俵山 めちゃくちゃ笑ったけど、人柄の良さが動画ににじみ出てたよね。こっちがおもしろいとか好きとか言うのもおこがましいくらいの大先輩だよ。

橋本 俵山がいつも、キングコングの西野さんとか、ロバートの秋山さんとか、憧れていた芸人の名前を出すけど僕にはいない、と思っていたら……。

俵山 ちゃんといたんだよね。この12年間、はしも(橋本のこと)からデイエノボルさんというキーワード聞いたことなかったけど(笑)

NSCでは落ちこぼれ、涙の解散劇も

──では、おふたりとも2010年に高校を卒業してすぐ、吉本興業のお笑いタレント養成所であるNSCに入学されたんですね。

俵山 東京NSCの16期で、この年は東京大阪合わせて1000人くらい入学生がいたかな。大阪にはビスケットブラザーズのふたりがいて。

橋本 僕らは落ちこぼれ組だったよね。

俵山 まず、大卒や社会人で入ってきた人たちとは全然違う。高卒は意外と少なくて、いまも東京16期で残っている高卒コンビは僕らだけです。

橋本 人としての経験値がまず違ったね。

俵山 常識もないし。一歩間違ったら回転寿司屋で悪さしてたかもしれない。

橋本 大丈夫? 僕はしないです(笑)

俵山 みんなトガッてるから「おもしろくないやつとはしゃべらない」って雰囲気もあった。

橋本 大人としゃべれなかったよね。同期では、ゆにばーすの川瀬(名人)なんて9歳も年上。けど川瀬は優しくて、お兄ちゃん的な存在でね。

俵山 そのうち僕らはNSCにいるのもだんだんつらくなって、行かなくなって。

橋本 出席日数が足りないから、このままだと吉本所属になれないと言われて。あわててふたりで階段を掃除したりして、努力や真面目さをアピールしました。わざわざ掃除用のヘラも買って。

俵山 そこでも掃除しながら、周りにいる人たちのモノマネをして笑ってました。でも当時は、それをネタにしようなんて一切考えてなくて。ネタとはもっと高尚なものだと思ってたから。ケンカしつつ、徹夜で血ヘド吐きながら作るもんだ!って(笑)。あのとき掃除しながらやっていたことを、そのままネタにしたほうがおもしろかったのかもしれない。でも当時は漫才に対する憧れが強すぎて。

韓流アーティストへの愛とリスペクトがあふれる橋本稜さん。Instagramでは「韓ドラあるある」のシリーズも大人気 撮影/吉岡竜紀

──NSC在学中にコンビを組まれたんですね。

橋本 お互いに別のコンビを組んでたんですけど、解散をきっかけに僕が俵山に声をかけました。もともと仲がよくて、お互いK-POPが好きだったんで新大久保に誘って。

俵山 僕はお試しのつもりでした。

橋本 だから1回解散してるんですよ。僕がふられちゃって。ある日突然、俵山が家に来て、泣きながら「ごめん、解散しよう。俺、三浦5リットルとコンビ組みたいんだ」って。え? 三浦5リットル?って。

俵山 デビューして、1年目くらいね(笑)。

橋本 でも、1週間ですぐ僕のところにホクホクとした顔で戻ってきて。「やっぱり違った」と。

俵山 当時は漫才への思いがあったから、僕は純粋なつっこみをやってみたかったんです。はしもとやっていたネタでは、普通のつっこみじゃなかったんですよね。これはやりたかった漫才じゃないって、そういう時期がありました。

──当初は漫才にこだわっていたんですね。

俵山 でもデビューから5、6年めで漫才の単独ライブをやったとき、しゃべりで伝えたいことがないって気づいて。素の会話だけで笑わせるのは限界があるなと。

橋本 しゃべってて楽しくなかったよね。

俵山 漫才のネタを作るのが苦痛でした。けど劇場ではランキングシステムがあるので、下のクラスに落ちたくないとか、そんなことばかり考えてましたね。

(※インタビュー後編では、スクールゾーンが漫才からコントへ転向したきっかけや、登録者数16万人を超える話題のYouTubeチャンネルなどについてお聞きします!)

(取材・文/植木淳子)

【PROFILE】
スクールゾーン 2010年12月にコンビ結成。東京NSC16期生。緻密な人間観察をもとにしたコントが人気で、東京・渋谷のヨシモト∞ホールを中心に活動中。公式YouTubeで「のぞき見シネマ」を毎週土曜日に更新。

◎スクールゾーン単独ライブ「花冷えにより、」2023年3月18日(土)
配信開始14:00 配信終了15:00 ※見逃し視聴は3/20(月)14:00まで

◎「花冷えにより、」の配信チケットはこちらから
https://online-ticket.yoshimoto.co.jp/products/yurakucho-230318-1400
◎YouTube「スクールゾーンChannel」https://www.youtube.com/@SchoolzoneChannel
◎俵山峻Instagram https://www.instagram.com/tawara711/
◎橋本稜Instagram https://www.instagram.com/schoolzonehsm/