阪急と東急は兄弟のような関係だった

 東急からの呼びかけに、JR2社とともに阪急も応じたということだが、この東急・相鉄の沿線はもとから阪急と浅からぬ関係にある

 まず東急と阪急。沿線風土が似ているとしばしば言われる両社は、創業期も縁がある。鉄道の沿線に住宅やデパートを建て、学校を誘致し、遊園地も開業させる──そんな私鉄の多角的経営モデルを確立させたのが、阪急を大手私鉄に飛躍させた小林一三。小林は戦前に、田園都市株式会社という不動産会社の経営に参加。同社を後に引き継いだ五島慶太が鉄道部門を目黒蒲田電鉄として鉄道経営にも乗り出し、現在の東急グループの母体になった。

 ゆえに創業1910年の阪急と、1922年に目黒蒲田電鉄を創業した東急は先輩・後輩のような間柄。阪急が1929年に梅田にいち早く阪急百貨店本店(うめだ阪急)を開業させれば、東急も1934年に渋谷駅に渋谷初のデパートとして東横百貨店(後の東急百貨店東横店)を開業させるといった具合に阪急の経営モデルを東急も踏襲していく。

 かようにして両社の沿線の街は住みたい人気ランキング上位を保ち、ハイソな雰囲気づくりに成功。東急なら二子玉川・自由が丘、阪急ならば西宮北口や宝塚・夙川と人気のエリアがズラリ。すでに2020年9月から両社と阪神電鉄でコラボラッピングを施した「SDGsトレイン」を運行中である(’23年3月までの予定)。

 さらに東急沿線の周辺には阪急系列の小売店が進出することも。例えば大井町。東急大井町線・JR京浜東北線・りんかい線が通る大井町駅だが、ホテルやスーパーなどが集まった総合商業施設の阪急大井町ガーデンが営業中で、この一帯だけは阪急西宮北口駅に近い阪急西宮ガーデンズにどことなく雰囲気も似ている。

 新横浜から横浜市営地下鉄ブルーラインで5つ目の港北ニュータウンの中核・センター北駅前にも都筑阪急が営業しているなど、阪急と東急は何かとウマが合うというわけだ。