──最初は売上が振るわなくても、“続ける”という判断はされないんですか?

「ユーザーのことを考え、“黒字にも赤字にもならないけどいったん続ける”という判断はあります。ただ、最初に赤字だったゲームが黒字になったパターンは10本に1本もなく、ほとんどはリリース時点で見切りをつけられます。

 映画でも、最初の興行収入が足りないからと言って、“これは館数が足りないからだ!”といって、上映数を50館から1000館に増やそうとは思わないですよね。それと似た構造がアプリゲームにもあります」

──なるほど……。アプリゲーム開発者の方からすると、家庭用ゲームと違い手元に作品が残らないということに思うところはありそうですね。

「そうですね。知り合いの開発者からも聞きますが、5年以上かけて結局リリースできなかったり、せっかく作ったゲームが50人にしか遊ばれていないというデータを目の当たりにしたとき“いったい何のために……”という虚しさはあるそうです。せっかく作って何も残らないとなると、クリエーターにとっても救いがありません。

 ただその点、家庭用ゲーム(※)には救いがあります。売上本数10万本を狙って1万本しか売れなかったとしても赤字ですが、自身が作ったゲームは手元に残ります。完全に無駄ではないんですよね」

※家庭用ゲーム: Nintendo Switch(任天堂株式会社)、Play Station(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)、Xbox(Microsoft)など、「専用のゲーム機」で遊べるゲーム全般。

◇  ◇  ◇

次の章では、“家庭用ゲーム”の復活劇と、日本アプリゲームの未来を読み解く

【後編:“冬の時代”を乗り越えた家庭用ゲーム。『ウマ娘』に続く、日本アプリゲームの生存戦略は】(4月3日18時公開)

(取材・文/阿部裕華、編集/FM中西)