──すてきなお話ですね……お互いのどんなところに魅力を感じていますか?

ぴろキュウは足りないものをそれぞれ補っているコンビです。清水さんは個性的な表情をするってよく言われますけど、おれは、それが清水さんのパワーだと考えていて。そのパワーと、怒りや喜びをわかりやすく出せる清水さんの表現力のおかげで、難しそうな漫才も笑いになって観客に伝わる。それはキュウにとってすごく大事なことなんです。さっき清水さんが「ぴろにはやりたい笑いがある」って言いましたけど、おれのやりたい笑いはシュールになりやすいしパワーを持ちにくい。そこを清水さんが補ってくれています。

清水おれにないものはぴろのネタ作りの能力と、ネタの細部までこだわる繊細さです。コンビ結成当初は「そこまで細かく決めなくていいんじゃない?」と思ってたんですけど、だんだんとその繊細さを理解できるようになりましたね。

 あとは雰囲気ですね。おれのパワーや表現をほめてくれましたけど、ぴろはほかの人が出せない唯一無二の雰囲気、たたずまい、しゃべり方、声を持っている自分が言ってもウケないことでも、ぴろが言うとウケるんです。普通のことを言っても、ぴろの雰囲気があれば面白くなるんですよ。

目指すはM-1優勝! “キュウの勝利の秘訣”とは

──それはお互いコンビを組んでから感じたことですか?

ぴろ:はい。清水さんが相方になったことで「清水さんの武器をおれのやりたいお笑いにフィットさせないと」と感じてキュウは進化しました。例えば、おれがふたりいたとしてもできない漫才が、清水さんとならできる。キュウの勝利の秘訣はそこにあります。

──おふたりがお互いの話を否定せず頷(うなず)き合っている姿が、まさにキュウさんの漫才の面白さにつながっているのを感じます。今回、M-1ファイナリストになって仕事のオファーも増えたと思うのですが、そこで新しく気づいた相方の一面などありますか?

清水:毎年、千鳥さんの『相席食堂』(朝日放送テレビ)でM-1ファイナリストがロケをする回があります。今回出演させていただき、ぴろの地元に行って当時の先生と話す機会があり、「ぴろってこんなヤツなんだ!」って驚きましたね。知らない一面があったので。

ぴろでも、きっと芸人はお笑いをするときに見えている姿が「その人」なんです。おれは、とろサーモンの久保田(かずのぶ)さんに可愛がってもらっていて、まさに久保田さんがそうですよね。ほかにも、借金を抱えているようないわゆる”クズ芸人”が最近よくテレビに出ていますが、彼らはちゃんとお笑いで稼いでいる純粋にすごいと思うし、本当のクズはテレビに出て有名になることなんてできない。彼らの笑いに対する向き合い方が「人」として表れていると思うんです。

──今後のおふたりの目標は?

清水・ぴろM-1グランプリで優勝したい!

清水M-1に関しては優勝してやっと解き放たれるので、優勝してふたりでやりたい漫才を続けて、全国で単独ライブをしたいですね。おれはよく「役者の仕事もまたしたい」って言いますが、それはM-1優勝あっての話で、勝たなければどうにもならないと思っています。

ぴろ今まさに2023年のM-1に向けて、鉄砲に弾丸を詰めるような気持ちでネタを作っている最中です。優勝の先はなるようになると思いつつ、できるだけ今のキュウのスタイルを変えずにどこまでいけるか、挑戦したいです。

お互いの個性を漫才に生かして独特のスタイルを貫く、それがキュウ 撮影/伊藤和幸

(取材・文/若林理央)


【PROFILE】
キュウ ◎清水誠とぴろからなる、2013年5月に結成したお笑いコンビ。ステージでは日常においてはありえない会話を繰り広げ、独創的な空間を作り出す。ゆったりとしたテンポで繰り出される不条理かつ不可解とも思われる漫才は、ボケやツッコミという概念を崩して新たな境地に達している。'15年より「めっちゃええやん!」というフレーズを推した漫才も行う。「M-1グランプリ2022」では決勝進出も果たし、着々と活躍の場を広げている。'21年6月より、キュウの実験的サロン「研Q室」もスタート。

◎清水さんTwitter→@pentachansp
◎ぴろさんTwitter→@piroguramu
◎キュウの実験的サロン「研Q室」→https://q-lab.fun/