コツメカワウソはペットとして飼えるの?

 コツメカワウソは多くの動物園や水族館で飼育されていて、全国各地にはカワウソと触れ合える「カワウソカフェ」なるものも存在しています。またよくSNSでコツメカワウソと一緒に暮らしている人たちの投稿も見かけますが、コツメカワウソはペットとして飼育できるのでしょうか?

 元飼育員の筆者としての答えは、「飼育できるが、絶対におすすめしない」です。

 まずコツメカワウソは10~15頭の群れで暮らす動物であり、声を使って仲間とコミュニケーションを取る習性があります。その声は大きくて甲高く、しかも起きている間はほぼ絶え間なく鳴き続けます。また1頭で飼育するとコミュニケーション不足で強いストレスを感じ、体調を崩してしまう可能性もあります。

 また魚や甲殻類を主食としているため、そのウンチは生臭くて非常にキツイ臭いがします。さらにウンチが非常に水っぽく、自分のテリトリーを主張するために長いしっぽでそのウンチを散らかす習性もあります。部屋がウンチまみれになってしまうため、毎日しっかりと掃除をしなければなりません。

 またカニの硬い甲羅やニワトリの頭の骨ですらバリバリとかみ砕く、鋭い歯と強い顎を持っていますので、遊びでも噛まれたらまさに流血沙汰。大ケガは避けられません。

 さらにコツメカワウソは一般的なペットではないため、コツメカワウソを診察した経験があり、適切な診療ができる獣医師がほぼ存在しないのです。

 新江ノ島水族館ではコツメカワウソを飼育する際、健康管理には特に気をつけているそうです。

コツメカワウソがなりやすい病気として、腎結石や尿路(尿管)結石が挙げられます。当館では結石ができないよう食生活の改善に取り組み、体温測定、採血、レントゲン、エコー検査等の健康管理を実施し、少しでも健康で長く生きられるよう心がけています。

 来館したときにカワウソの体温測定をしていることもありますが、コツメカワウソが嫌がらないように優しくゆっくり行っています。体温測定の場面に出会ったときは、そっと応援してもらえると嬉しいです」(飼育スタッフさん)

 コツメカワウソは「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」、通称「ワシントン条約」の付属書Iに掲載されています。付属書Iに掲載されている動物は国際的な商取引が禁止されていますが、この条約の対象となるのは野生動物だけ。つまり日本国内で繁殖した個体に関しては対象外となるのです。そのため条約の抜け道として「国内で繁殖させた」と偽り、海外で捕獲した個体を密輸して販売しているという事例も少なくありません。実はコツメカワウソを飼うだけで、知らぬ間に野生のコツメカワウソを絶滅の道へと進ませてしまう可能性があるのです。

 最後に、新江ノ島水族館のコツメカワウソ担当スタッフさんからメッセージをいただきました。

「コツメカワウソはとてもかわいい生き物です。そのかわいさゆえに、飼ってみたいと思うのは当たり前のことだと思います。

 しかしここで考えてもらいたいのが、コツメカワウソという生き物についてです。カワウソは野生動物であり、愛玩動物ではありません。そして絶滅のおそれがあるということ。かわいいからこそ、好きだからこそ、今一度カワウソについて考えてもらえたら嬉しいです」(飼育スタッフさん)

(取材・文/三日月影狼)

●新江ノ島水族館
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