人によって症状がさまざまで、検査で異常を発見しづらいことから、診断がつきにくい「耳管開放症」。自律神経の乱れが原因とされ、根本的な治療のためには心身のバランスを整える必要があるという。しかし、どうやって整えていけばいいのだろうか?
(耳管開放症に多い症状やはインタビュー前編で詳しく紹介しています→記事:「耳管開放症」って知ってる? 耳鳴りやめまいが生じる“現代病の原因と治し方”を医師に聞いた)
◇ ◇ ◇
「耳管開放症」の改善には生活習慣のヒアリングが必要不可欠
堀院長は、患者自身が、自分自身の現状をしっかりと自覚できるきっかけを探るため、「なぜ、ある時期から症状が出たのか」「特定の場面で悪化することがあるのか」というように、原因と背景を見直していくところから始めるという。
過去の受診歴や治療歴、症状の経過、家族背景、成育歴などに加え、多様なストレス負荷の有無も深掘りする。さらに、心理検査で心理状態を評価したり、血液検査で潜在する鉄欠乏性貧血を見つけたりするなどして、さまざまな方向から原因を探っていく。
「この病気の耳のさまざまな不快な症状には、“卵が先か、ニワトリが先か”みたいな混乱があります。 本人は、“耳の不調が原因で、その結果、不眠や疲労が悪化している”と訴えます。
しかし、実際には、“不眠や疲労の結果、耳の症状が悪化している”とも言えます。いずれにしろ、ストレスの悪循環に陥ってしまうのです」
そのため、堀院長は必ず「ストレスを自覚していますか?」という質問をしている。この質問をすると、仕事や家庭のさまざまなストレスを告白する人が多いという。一方で、「ストレスをまったく自覚していない」と答える人もいる。
そこで、心理検査をしてみると、正の範囲内であることも少なくないそうだ。ただし、このような人たちの中にも、時間をかけてじっくりと振り返ってもらうと、次第に無自覚だった自身のストレスに気づく場合があるという。
「人間の心と、身体、とりわけ聴覚の器官である耳管の機能は、密接に心の深層と関係しており、この領域については、まだ科学的に明らかになっていないことがほとんどなんです。
また、医療全体に言えることですが、ストレスに関連する病気に対して、精神科・心療内科の治療では薬物療法のみに頼ることが多いのが現状で、そこには限界があります。
一方、患者さん自身が、主体的に自分自身のメンテナンスに積極的に取り組む、いわゆる、“セルフケア”には、大きな可能性があります。実はここにこそ、現代ストレス病を克服するうえでの、大きなカギだと考えています」