白鳥兄妹に訪れた変化。とうとう記念すべき日が──

 先ほど紹介した白鳥兄妹ですが、私のクラスで給食を食べることができるようになりました。そして数日後には、授業にも参加できるようになりました。「4時間目に体育で縄跳びと跳び箱をやるから参加してみないか」と誘ったら、4時間目から登校してくれたのです! 体育に参加した日のことです。何か思うところがあったんでしょうね。妹の祥子さんが言ったんです。

「自分のクラスにも行けるような気がしてきた」

 その日の5時間目、祥子さんは2年生の自分のクラスに顔を出しました。子どもはちょっとしたアクションで驚くほど変わります。私はその可能性を信じています。

 祥子さんよりも難しいだろうと思っていたのが、5年生の凛太朗さんでした。3年生の2学期から登校できなくなっていましたから、時間がかかるだろうと思ったのです。しかしその凛太朗さんも、1年生と一緒に給食を食べ、一緒に掃除をするうちに、変わっていきました。4時間目の体育や音楽に参加し、いつの間にか3時間目から登校するようになりました。1年生の子どもたちと過ごすことが心地よくなっていったのです。いや、1年生ではなく、仲間と過ごすことが心地よくなっていったのでした。

 どうにか朝から登校できるようにしたいというのが私の願いになっていきました。私は意図的に学区巡りというイベントを企画し、1、2時間目に設定して、凛太朗さんに声をかけました。当日の朝、どうなるものかと待っていると、ついに(!)凛太朗さんが登校してきたのです。

 クラッカーを鳴らしてみんなでお祝いをしました。彼は同じ日の午後、5年生の自分の教室にも顔を出し、とうとう丸1日、学校にいることができました。3年生の2学期以来の記念すべき日になったのです。忘れもしない、ある年の3月9日のことでした。田中まさおと白鳥親子の特別な出会いでした。

(取材・文/牧内昇平)

【第2次訴訟の原告を募集中】

 田中まさおさんの裁判を支える「田中まさお支援事務局」は'23年4月23日、第2次訴訟の原告の詳しい募集内容を公開しました。主なポイントは以下の4点です。

《原告の応募条件》
1. 個人的な利益ではなく、本訴訟の趣旨に賛同してくれる人
2. 給特法が適用される、公立学校の現役教員もしくは元教員の人
3. 長時間労働を理由とする国家賠償請求を行いたい人
4. 正式に原告となる場合、訴訟費用として20万円を負担できる人

 田中まさお支援事務局によると、すでに教員を退職した人でも、時効(原則3年)が過ぎていなければ裁判を起こせます。また、裁判の費用については、クラウドファンディングなどで寄付を募るため、個人の負担は20万円に抑える、としています。7~8月の夏休み期間に説明会を開き、そこで弁護士や支援事務局のメンバーたちが面談を実施します。詳細は田中まさお支援事務局のTwitterアカウントなどへ。

◎田中まさおさん公式Twitter→https://twitter.com/trialsaitama
◎田中まさお支援事務局公式Twitter→https://twitter.com/1214cfs
◎著者・牧内昇平Twitter→https://twitter.com/makiuchi_shohei