強烈な「個」を持つ人は与える影響が強い

――神木さんが演じる小四郎は、新次郎の明るさや純粋さに次第に感化されていきますが、逆に新次郎が小四郎に何か感化された、影響されたなと感じたことはありましたか。

 きっとあるんでしょうけど、具体的に作品の中で小四郎からこういうことを言われて、新次郎が変わったというようなことはないんですよ。コミュニティが変わったことで新次郎にもある変化が起こるのですが、うつけ者と言われている人たちの一番強いところって、その人の「個」がめちゃくちゃ強烈なんですよね。その強烈な個性を持った人は影響を与える力が強いので、周りの人は何かをもらうことがものすごくあると思っています。そういう意味では、小四郎と新次郎の関係は作中でうまく描かれているなと思います。

 新次郎はみんなからは「うつけ」と思われて少し距離を置かれていたけど、庭の仕事をさせてみたらすごい才能があることがわかります。そういう新次郎の魅力を知って、お初との恋愛関係でも、新次郎に対して「この人に何をしてあげられるんだろう」という道筋を、弟たちや周囲の人たちが作ってあげているんですよね。それは「借金を背負った藩をどう立て直していけるんだろう」ということと一緒だと思うんです。そういうところが僕はこの作品の中で特に好きなところでした。

――おっしゃるように、人と違う個性を持った人を隠そうとか排除しようとするのではなく、その人のいいところを伸ばそう、育てようとしているところが私も素敵だなと思いました。ただ、無垢さやピュアさは、意識しすぎると不自然にも見えてくるものかと思うのですが、それを自然体に演じるうえで心がけたことはありましたか?

 きっと、新次郎のような人ってたくさんいるんですよね。おじいちゃんでもピュアな人っているじゃないですか。あとは、普段は普通に仕事をしているけど、実は趣味がプロみたいな腕を持つ人とか。そういう人の笑顔を見ていると、すごく無垢な感じがするんです。僕はこれまでそんな人たちとの出会いが多かったので、彼らを見習って、さらに目の前に見本となる前田監督がいたので、自分で役を無理やり作り出すようなことはなかったです。

松山ケンイチさん 撮影/篠塚ようこ

――他の作品でも、無理やり役を作り出すよりは、参考になる人を軸にされることが多いのですか?

 それがほとんどですね。出会いや関わりの中で気づくことや発見はたくさんあるので、いろいろな人と出会いたいなと思うんです。

 自分の幅の中だけでピュアさの理論を組み立てて役を作り上げると、ものすごく狭くなってしまうんですよ。そういう意味でも、自分の世界を広げていくことで演じるのがどんどん楽になってくるので、いろいろな人と出会うことは意識しています。