日本生まれのパンダが、なぜ中国へ行くの?
2023年2月に4頭のパンダが中国へと渡ったことは、ファンを中心に大きな関心を呼び、ニュースなどでも大きく報道されました。そのため、みなさん記憶にも新しいのではないでしょうか。このときは別れを惜しみ、涙ぐむファンの姿も報道されました。「日本で生まれたのに、なぜ中国へ渡らなくてはならないの?」と思いますよね。それはパンダの未来のためなんです。
最初に説明したとおり、パンダはレッドリストで「危急種」に指定されています。個体数を増やすためには、まず繁殖をさせること。そのため各国へ貸し出すのも繁殖と研究が目的で、原則としてオスとメスのペアで貸し出されます。そして繁殖に成功すると、生まれたこどもも、2年をめどに中国へと送られます。これは近縁を避け、より個体数の多い場所で相性のよい相手と繁殖を目指すためです。
和歌山県にあるアドベンチャーワールドには、2023年2月まで永明(えいめい)というグレートファーザーがいました。彼は同パークで16頭の父親となり、そのこどもたちも中国で親となって、現在は23頭もの孫にひ孫までいます。彼のこどもたちは、その名前に同パークがある白浜の「浜」の字が付くことから、中国でも「浜家(バンファミリー)」と呼ばれる大家族となっているのです。永明は2022年、日中の友好関係に貢献したとして、大阪の中国総領事館から「中日友好特使」にも任命されています。
今いるパンダは、すべてレンタル
現在、日本にいるパンダはすべてレンタル。中国側に支払う費用は1頭につき年間95万ドル(約1億円)ほどです。こちらはパンダの保護費という名目のため、レンタルというと語弊があるかもしれませんが、報道ではわかりやすくこう表現されることが多いのです。
かつて中国はさまざまな国にパンダを贈与してきました。俗に言う「パンダ外交」です。誰もが心ひかれる珍獣・パンダを贈ることによって、相手国に中国によいイメージを持ってもらう、そこから政治的な利益を引き出していく、いわばイメージ戦略のようなものです。
しかし、1981年に中国がワシントン条約に加盟。ワシントン条約は、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約。絶滅危惧種だったパンダは保護対象となって国際取引が禁止となり、かつての贈与から繁殖と研究を目的とした貸与へと変わったのです。このときからパンダの保全のためとして、いわゆる“レンタル料”が発生するようになりました。