今が正念場。それでも続ける意義、院内店舗が目指す姿とは
──事業として、厳しい時期はありましたか?
知久:コロナ禍で打撃を受けたこともあって、実は今がいちばん厳しい時期ですね。20年という長い期間やっていると、既存店舗との契約更新という課題も出てきます。今は軒数を増やすよりも、病院ごとのニーズを見ながら丁寧に対応し、リニューアルなどもしつつ、今利用してくださっている方々を大切にしていければと考えています。
──ローソンとタリーズの両方が併設されている病院を見かけるのですが、一緒に出店するメリットなどはありましたか?
知久:病院がリニューアルされるときは、コンビニと飲食店を同時に公募することが多いんです。コンビニではローソンさんが院内店舗に積極的なので、よく店舗がお隣になることが多いですね(笑)。コンビニとカフェ、どちらもあることによる相乗効果は感じています。病院の中で、人が集まる憩いの場所になっていると思います。
田中:カフェとコンビニはお客様の利用シーンも異なると思いますので、さまざまな選択肢があるのはお客様にとってメリットかと考えます。例えば、コーヒーを飲みたいと思ったときに、時間に余裕がある方はカフェに行かれると思います。でも特に時間のないドクターや職員のみなさんは、マチカフェをさっと買われるなど、お客様によって使いわけをしていただいていると感じます。
──ちなみに院内には、他にどういった店舗があるのでしょうか。
田中:院内専門で展開している食堂事業者さんや、病院で使用するシーツ等を管理するリネン業者さんなどがいらっしゃいます。ローソンでも食堂業者さんやリネン業者さんを併設して出店したケースもあります。
──最後に、院内店舗はどのような存在でありたいですか。
田中:やはり“ほっとできる場所”でありたいと思っています。つらいことがあったときも、うれしいときも、当社の商品やサービスを通して、心がほっとする、前向きな気持ちになっていただけたらうれしいと考えています。
知久:病院の現場自体は緊張感のあるものだと思うので、リラックスしていただきたいという思いがあります。こちらもあまり特別なことはしないで、日常のように過ごしてもらう。病院の中だけれど、普段と同じような感覚を感じていただきたいなと思っています。
──当たり前の日常を、感じてもらいたいという部分ですね。
田中:コロナ前は、週末になると入院患者様のご家族が来られたりしていました。お孫さんと一緒に店内のイートインスペースでアイスを食べたり、ご友人と楽しそうに団らんされている姿を見かけたときは、こちらもうれしくなります。またそういう光景も見られるのではないかと期待しています。
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もしかしたら、院内店舗を利用したことがない方もいるかもしれません。ローソンやタリーズコーヒーの取り組みから、何気ない日常への感謝や、健やかに暮らすことの大事さについても考えさせられます。院内店舗を利用する機会があれば、企業のその熱意を感じ取ってください。
(取材・文/池守りぜね 取材協力/タリーズコーヒージャパン株式会社・株式会社ローソン)