「自然の中で自分を見つめ心を解放してもらいたい」とビーチクリーン活動に励む
そして'99年からは由比ヶ浜でビーチのクリーン活動を開始、さらに2018年から、静岡県の南伊豆や長野県の小谷村(おたりむら)で自然に親しむイベント『PEACE MAN CAMP』を企画・開催している。
「『ひるどき日本列島』やその後の『遠くへ行きたい』などの旅番組に出演するたびに、素晴らしい経験をさせてもらっているなあと感じていたんです。そこで体験した感動は、自ずと自分の曲にも反映される。自然と向き合い共生し、頑張って生きている多くのみなさんにお会いできたことは、生きるうえでの宝物だと実感しました。だから、この感動を直にファンのみなさんや次世代の子供達にも伝えたい! と思って始めたイベントです」
イベントには、北海道から九州まで全国から幅広い世代が参加するという。
「南伊豆では、地元の漁師さんのレクチャーのもと、海の生き物に触れて、ときにはその場でトコブシやウニをまるで縄文時代のように食べさせてもらうのですが、ファンの方たちも歓喜の声をあげるほどに盛り上がります。子どもだけじゃなくて、私たち世代のいい大人が“ここまで喜ぶとは!”って、私も驚きました! こういう体験をするうちに、やっぱりみんな、原始の自分に戻る。自分の命の源はスーパーやコンビニじゃない! この海なんだと認識し、その体験によって“海をきれいにしたい”って自然に思えるんじゃないでしょうか。だから海のゴミも当たり前い拾って帰るんです。
『PEACE MAN CAMP』は、コロナ禍になってからは中断していましたが、昨年の4月はみんなストレスを抱えていると思ったので、“外なら大丈夫!”と思い、勇気を出して開催。20年前に出会ったわが森、南伊豆の『マーガレットグラウンド』で大空の下、みんな声出しOKで、大声で歌ってもらいました」
このように自然と共生し続ける白井だが、自身の活動を通して番組やCMへの出演が決まったり、渡辺裕之が主演した茨城県の町おこし映画『桜田門内の変!?』にて「人生オセロ」という楽曲を提供したら、渡辺の出身地である水戸がたまたまオセロの発祥地だったことで喜ばれたり……。とにかく“偶然”と呼ぶにはあまりにもタイミングよく星のめぐりが連なっている。この不思議については、インタビュー第1弾でも紹介した白井の初著書で前回『ありがとうMama』にも綴られている。
中でも、20年以上も前に鎌倉の自宅でアナログレコーディングをしたときのエンジニアが小谷村に住んでいた! というエピソードは、ミラクルな出来事と言えるだろう。
「そのエンジニアの彼が当時スイスから購入してくれたアナログレコード用の機材が全部、うちの倉庫に眠っていたんです。そろそろ処分しないと……なんて思いながら、ズルズルと20年間も放置していて。それで彼に会ったときに、“あの機材を処分したいから一度見に来てもらえる?”とお願いしたら、“まだまだ使えるから小谷村に持って帰る”って言うんですよ。“えっ、まさか(自分の活動拠点である)小谷村に住んでるの!?”って、ビックリしました。
それにしても、ここ数年はアナログレコードがどんどん売れているとのことで、その古い機材がまた使える時代になったんですよね。ちょうど私も今年、アナログ盤を出そうと話を進めていたところだったので、あまりのタイムリーさに拍手でした。もし、時代がズレていたら、機材もムダになっていたでしょうね」
そういった流れから、今秋に'85年のアルバム『Flower Power』がアナログレコードにて復刻される予定だ。“Love & Peace”をテーマにした作風は、むしろ今の世代に響くことだろう。