ラーメンYouTuber・SUSURUさん。ここ7年、毎日ラーメンを食べ続けている彼へのインタビュ―企画、第1回と第2回では彼がラーメンにハマるまでの人生を伺った。
【第1弾→2400日以上ラーメンを食べ続けるYouTuber・SUSURUさんの”食に魅せられた半生”】
【第2弾→「親を泣かせてしまったことがショックだった」SUSURUさんが語る、ラーメンYouTuberになる前の”怠惰な自分” 】
今回はラーメンの不思議な魅力についてインタビュー。「なぜ人はここまでラーメンにハマってしまうのか」「どこの部分にラーメン独自のおもしろみがあるのか」を聞いてみた。読者の皆さんがラーメンを食べる際の参考にしてみてはいかがだろうか。
2000日以上食べても到達できない、“ラーメンの極み”
──前回はチャンネル開設までのエピソードをお伺いしました。それから現在までほぼ毎日ラーメンを食べて7年目です。2022年9月3日現在で2464日目っていう、ちょっともう尋常じゃないレベルまで到達してます。よく聞かれると思うんですけど、さすがに飽きるんじゃないですか?
「いや全然、一回も飽きたことないんですよ。なんなら今のほうが好きなんですよね。食えば食うほど、ラーメンの奥深さに気づいていくのがおもしろいんです。
“おまえ、作れないのになに偉そうに言ってんだ”って思われるかもしれないですけど、食べ方とか、ジャンルの広さがわかってくるので、今のほうが食べていてうまく感じるし、楽しいんですよね」
──なるほど。いやでもラーメンってほんと沼が深いというか。人をオタクにする代表的な料理だと思います。
「たしかに。ラーメンって他のメニューと比べると、ちょっと異様ですよね。なぜかラーメン店にはよく行列ができるし、何年も通ってしまう人が多いですし」
──人がラーメンにハマる理由は何だと思いますか?
「まず麺、スープ、具材と1つの丼でいろいろ魅力があるのがポイントですね。“ラーメンはコース料理だ”っていう人もいるくらい、幅広い魅力があると思います。だからスープが大好きな人もいれば麺にハマる人もいますね。それで極めていったら“このスープには、この具材がマッチする”ってのがわかってくる」
──なるほど。
「チャーシューにしても、こってり系だったら厚めが合うし、あっさり系は薄切りのほうが合うってのが、なんとなくわかってくる感じですね。でも、その定石を覆(くつがえ)すようなラーメンもあったりします。しかもそれがうまかったりするんですよ(笑)。だから“これが正解”ってのがないんだと思います。食べれば食べるほど、奥深さに気づくんですよね」
──パズルみたいですね。スープと麺と具材で無限に組み合わせができて、そのたび新しい魅力に気づける、みたいな感じですか。
「そうですね。だから“極めきった”という到達点がないんだと思いますよ。それとトレンドもありますね。トレンドを追いかけるのも楽しみの一つです」
──トレンドはおもしろいですよね。例えば最近はどんなラーメンが流行(はや)ってるんですか?
「2019年~2020年くらいまでは鶏清湯(とりちんたん)ラーメンが流行りました。”ネオクラシック”ともいわれるんですけど。比較的あっさり系の醤油ラーメンだけどパンチもある、みたいなラーメンです。
で、’20年あたりからは、どちらかというと“麺”に力を入れている店舗が多い印象ですね。自家製麺の店がすごい増えてると思います。今までは各店舗が“スープをどれだけうまくできるか”って努力していたんですよ。今ではどの店舗もスープがうまくなりすぎて、差別化が難しくなった。その結果、麺に注力するお店が増えたんじゃないかと思います」
──知らなかった……。麺に関してトレンドとかあるんですか?
「最近、一部の界隈(かいわい)で流行ってるのは“極太麺”ですかね。数年前までは細麺がブームでしたけど、最近はどんどん太くなってきてます。なかでも『もち姫』っていう、小麦を使った甘くてもっちりした歯ざわりの麺が増えてますね。冗談じゃなく、伊勢うどんくらいの太さの麺を出すお店がちょいちょい出てきてるんですよ。
やっぱりSNSで話題になるために、見た目のインパクトを重視してるんじゃないかなぁ、と思いますけどね。でも“ビジュアルに引っ張られて味が落ちるのか”というとそうじゃない。いざ食べてみると、これが意外とうまいんですよ。やっぱり味が悪いと、リピーターになってくれないじゃないですか。そこはお店側もわかってるんですよね」
頭の中の“ラーメンデータベース”には、味も思い出もいっぱい
──なるほど~。スープ、麺、具材の組み合わせは無限だし、それぞれにトレンドがあるわけですね。そう考えると、極めがいがあるというか。掘っても掘っても終わりがない。
「そうだと思いますよ。僕の場合は仕事ですけど、ラーメンマニアの中にはただ個人的な趣味として数十年ずっとラーメン食べている方もいますからね。終わりがないからこそ、長くオタ活を楽しめるってのがありますね。
それと“食べ続けているからこそのおもしろみ”もあります」
──と、いうと?
「頭の中に“ラーメンのデータベース”ができてくると、初めて食べるラーメンでもピンとくることがあるんですよね。前に地方の何の情報もないお店で食べたとき“東京の、あのお店の味に似てるな”って思ったことがあって。それでご主人にきいたら“そこで修業してたんですよ”って」
──すごい。「修業する文化」があるラーメン店ならではのおもしろさかもしれませんね。
「そうですよね。こういう経験をするたびに、ラーメンの味の違いがわかってきた気がしてうれしいってのはありますね。
それと、サブチャンネルの『SUSURUのミッドナイトTV.』で丼顔(どんがん)クイズってのをやってるんです。ラーメンの画像をパッて出して、それがどこのお店か答えるというクイズなんですけど、僕めちゃめちゃ得意なんですよ。思い出と一緒に味のデータがたまっていくのもオタクならではの楽しみの一つです」
──ここまでラーメン情報が頭に入ってるのって、すごいことですよ。やっぱり続けるってのは偉大だと思いますね。
「食べれば食べるほど楽しくなるから続けられるんですよね。それと、これは個人的な部分でいうと、今はチャンネル登録者数が100万人超えて、ありがたいことに『SUSURU TV.』を楽しみにしてくださる方が少なからずいらっしゃいます。それで毎日食べることがちょっとした”使命”みたいになっているのもあります。
また最近は、お店側に対しての責任感も出てきたんですよ。『SUSURU TV.』に出ると“翌月の売り上げが3倍になった”とか“2時間の行列ができた”というお話も聞くようになりました。
チャンネルを始めた当初も今も“ラーメン食べるの楽しいから、みんなでもっと食べに行こう”というマインドでやっているので、これからも動画を通してラーメン好きの方が増えてくれたらうれしいですし、それがお店への貢献につながったらいいですね」
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好きなことしかできない男の「ラーメン愛」が伝わるインタビュー
SUSURUさんはびっくりするくらい謙虚な方だ。とにかく「いや、だって僕ラーメン食ってるだけっすからね」と繰り返していた。「好きでラーメンを食い続けていたら、いつの間にか超人気コンテンツになってしまった」という部分が正直なところなのだろう。
いま彼はラーメンを食べることが仕事だが、決してビジネスライクにラーメンと付き合っているわけではない。根底にまっさらなラーメンへの愛を感じる。好きなことしかできずに大学を中退しニートも経験したSUSURUさんが、2400日以上もラーメンを食べ続けているということが、その何よりの証拠だろう。決して偽っていないからこそ、私たちは見たくなってしまうのだ。
そして、あらためてラーメンという料理の奥深さを知った。個人的にもインタビュー後にラーメン店で食べたが、麺、スープ、具材のことを考えながら食べるとおもしろい。健康志向が高まっているなか、好きなラーメンを控えている人もいるかもしれない。しかし好きな食べ物を我慢することは、ある意味で不健康ともいえる。心配な人は黒ウーロン茶でも片手に、ぜひラーメンのおいしさだけでなく「おもしろさ」にも目を向けながら食べてみてはいかがだろうか。
(取材・文/ジュウ・ショ)