座るとオナラの音がする「ブーブークッション」など、40代以上の人が「懐かしい!」と思うアイデア商品をセレクトしたショップ「王様のアイディア(R)」が、株式会社パートナーズの運営により、ECサイトとして生まれ変わって今年2月に復活しました。
昭和と令和のアイデアグッズには、どんな違いがあるのでしょうか。王様のアイディア店長の大澤孝さんにお話を伺いました。
王様のアイディアの人気ベスト3
まずは、王様のアイディアを理解するのに最適な、現在の人気商品ベスト3と店長のオススメ商品を紹介します。
■人気商品3位:「ドリンキング・バード」(1650円/価格はすべて税込み)
帽子をかぶった鳥が、コップの水を飲んでいるように前後に動くグッズ。
「王様のアイディアといえば、これ!」というほどの定番商品です。レトロなデザインで、インテリアとしてもかわいいです。
「“熱力学の法則”に基づいた仕組みになっています。クチバシの部分が水でぬれると頭の部分が冷え、それに比べてお尻部分は温かいため、温度に比例して内部に圧力が生じ、お尻部分にある液体が頭部に吸い上げられるんです。その結果、頭部が重くなり、下がるようになっています」(大澤店長)
■人気商品2位:「レコードランナー」(8250円)
レコードの上をくるくる走る、自走式レコードプレイヤー。
イエローの車体と特別バージョンのゴールドの車体の2種類。車の下についた針でレコードを読み込んで演奏する仕組みで、単四電池2本で約90分駆動します。実は80年代から愛されるロングセラー商品ですが、最新モデルは、針やスピーカーの品質を向上させています。
「レコードプレイヤーを持っていない人も、これがあれば音楽が聴けますし、かわいいのでインテリアにもなります」(大澤店長)
■人気商品1位:「ミャウエバー」(9500円)
本物の猫のように、なでるとゴロゴロとのどを鳴らし、かすかに聞こえる心音まで再現したクッション。
中にはジェルの入った袋があり、電子レンジで温めることでほんのりとした温かさも感じられるようになっています。
「特に、“猫ちゃんを飼えない人”に向けたアイテムです。背中にセンサーがあるので、なでるとゴロゴロと振動する仕組みになっています。触り心地にこだわり、程よい重さが感じられるようにしたので、ひざに乗せて目をつぶると“本物の猫ちゃんがいる”気分になります。この商品には顔がないのも特徴です。人それぞれ、理想の猫ちゃんの顔があるので、想像しながら、かわいがっていただきたいです。
コロナ禍によってテレワークが増えた中で、“(心を癒やすために)ひざに猫ちゃんがいたらいいなぁ”と思い、企画しました。ダイレクトマーケティング会社『フェリシモ』の猫部さんとのコラボで作りました。クラウドファンディングからスタートした商品で、2000万円を超える応援購入がありました」(大澤店長)
大澤店長のオススメはデスクワークにぴったりのマグ
■店長オススメ商品:「マイティーマグ・ソロ」(3960円)
横から押しても倒れないのに、軽く持ち上げられるマグカップ。
パソコン作業をしているときに、机に置いているドリンクを倒してしまうと大惨事になってしまうもの。特にデスクワーク時に最適なグッズです。
「底面に吸盤があり、横から押しても倒れませんが、上部を持ち上げると吸盤の空気を逃す弁の機構によって、スーッと持ち上がるようになっています」(大澤店長)
昭和世代はなじみ深い! エモ~い人気商品
では、「昭和の全盛期に人気だった商品」には、どのようなものがあるのでしょうか? 同店には、「懐かしのグッズセット」(6523円)という、人気商品3位の「ドリンキング・バード」と、「モーラー」「ニュートンのゆりかご」「ピンアート」の4点に、おまけとして「ブーブークッション」が付いたセットがあり、話題になっています。
■「ニュートンのゆりかご」(※単品ではSサイズ2200円、Lサイズ5500円で販売)
運動量保存則と力学的エネルギー保存の法則の実演のために作られたグッズ。
球を引っ張って離すと他の静止した球へ衝突し、逆側にある球が同じ速さで弧を描いて飛んでいきます。
「昔は、インテリアとして置かれているご家庭が多かったです」(大澤店長)
■「ピンアート」(※単品では2200円で販売)
たくさんのピンに手のひらなどを押し付けて、形が浮かび上がる様子を楽しむグッズ。
当時は、自分で好きな形のアートが手軽に作れると人気でした。令和版は、ピンクとブルーの、安全なプラスチックバージョンでできています。
■「モーラー」(※単品では473円で販売)
謎の生物がまるで生きているように動き回るグッズ。
「口元に細い糸がついていて、糸をひっぱることで動き、生きているように見せることができます。手品と同じ仕組みです」(大澤店長)
■「ブーブークッション」(※「懐かしのグッズセット」のみで購入でき、単体では非売品)
上に座るとおならの音がするクッション。
「王様の顔がプリントされた特別バージョンです。中にクッションが入っていて、使った後は自然に膨らむ仕様にバージョンアップしています」(大澤店長)
令和の今こそ、“無駄だけど楽しくてワクワクするもの”を
──昭和と令和のアイデアグッズの違いは何でしょうか。
大澤店長「根っこの部分は同じで、“面白い”というところは変わらないのですが、令和版は、“デザイン性があること” “実用性があること”が特徴です。また、昭和版は“役には立たないけど、見て楽しむもの”が多かったのですが、令和版は“面白いだけでなく、使えるものや癒やされるもの”にニーズがあります」
──王様のアイディアは、今年の2月にECサイトとして復活しましたが、どういう経緯があったのでしょうか?
大澤店長「もともと弊社(株式会社パートナーズ)は、いろいろなアイデア商品を作っているメーカーなんです。現代は、コスパ、効率性、利便性が求められていますが、だからこそ、むしろ“無駄だけど楽しくてワクワクするもの”が必要だと考えています。そういったユニークなものを集めたお店があってもいいのではないか、ということで、あの『王様のアイディア』を令和に復活させようということになりました」
──利用者はどういった年齢層が多いですか。
大澤店長「開店したての頃は、昔の王様のアイディアを知っている40〜50代の方々に向けて、懐かしのグッズを中心にラインアップしていたのですが、いざ蓋を開けてみると、20〜30代の方々に多くご利用いただいています」
──王様のアイディアとも連動しているサイト「アイディアステーション」では、“商品アイデアの投稿”を募集されていますね。実際に商品化はされているのでしょうか。
大澤店長「こちらのアイデアを元にノベルティ商品を作ったことはありますが、商品化はまだです。でも、これからいろいろと商品化し、販売していきたいと考えていて、現在、準備を始めています」
──日々、ユニークなものづくりをしているクリエイターさんたちを応援する「アイディアの王様」というプロジェクトも面白いですね。ここではどのような活動をされていますか。またどんな方がどのような商品を作っていらっしゃいますか。
大澤店長「王様のアイディアのコンセプトに賛同してくださっている19組のクリエイターさんたちを“アイディアの王様”として、その方々が手掛けている商品を販売しています。例えば、乙幡啓子さんの『魚ケース(さんま・あじ・ほたて)』(各1320円)は、とてもユニークなポーチです。ポーチを開くと、魚は“開きの干物”に、ほたては“バター焼き”になっています」
「最近発売になった、ミニチュアアーティストのMozuさんが手がけた『NOUTO BOOK(ノウト ブック)』(1320円)もオススメです」
「誰かが落書きをしたかのようなトリックアートがたくさん詰まったノートになっています。写真を撮ると、立体的に見えるんです」
──今後、「王様のアイディア」で目指すことは何ですか。
大澤店長「“アイデアで世の中を楽しくする”というのがコンセプトなので、面白いもの、そしてそれを作る人たちを増やしていきたいと考えています。面白いものを作っている人に焦点を当て、さらに、そういう方々に憧れを持った人たちにもアイデアを出していただき、どんどん面白い商品を作っていきたいです」
世の中に、安くて使える日用品はあふれていますが、アイデア商品には、それらとは違う“血の通った人間味(にんげんみ)”を感じます。ユニークで、誰かの役に立つアイデアが詰まった商品。そんな素敵な商品が世の中にあふれたら、使う人たちの笑顔も増えていくでしょうね。
(取材・文/加藤弓子)