2022年10月1日および2日、東京ドームホテル『天空の間』にて、錦織一清と植草克秀によるランチ&ディナーショー「ふたりのSHOW&TIME『SONG for YOU』」が開かれ、全3回にわたる公演のうち最終回(10/2夜)に参戦!
レポート第1弾では、一気に盛り上がった序盤5曲に始まり、MCで見せた、信頼関係があるふたりならではの掛け合いの様子、そして、ふたりのソロコーナーを通して伝わってきた“前に進み始めた彼ら”について語った(記事→錦織一清と植草克秀『ふたりのSHOW&TIME』密着ルポ【#1】実力・個性・絆が発揮されまくるステージは圧巻!)。第2弾ではショーのクライマックス、さらに、終演直後に実施した植草克秀へのミニ・インタビューをお送りしたい。
熱いデュエットから「君だけに」や「仮面舞踏会」までノンストップ!
ショーの後半は、錦織から植草へ「実家から会場までのJR総武線の駅名が言えるかどうか」という無茶振りもありつつ、なんと、ふたりによる昭和の名曲カバーからスタート。サビ前でふたりが演奏を口でなぞるほどノリノリな様子。いかにもカラオケBOXではしゃいでいる中年サラリーマン風で楽しげだが、ストリングスによる悲しげな音色は本格的。打込みではなく生演奏というのも、本公演の人情深さを大いに引き出す要因であろう。
なお、歌唱前には、今回のショーの大阪公演が追加で決まったことも発表。ここでも錦織は、「大阪では、植草の水中バレエ団並みの泳ぎが見られるはず」と、またもや口から出まかせ状態(笑)のジョークを飛ばしつつ、「植草が(歌詞やダンスで)事故りそうになったときは、大目に見てください」「実は、僕のほうが甘えている」としっかりフォロー。昨今のSNSでは、言葉の一端だけをとらえては憤慨し、それまで仲よくしていたファン仲間との交流を一切遮断する、といった行動に走る人も散見される。しかし、長年の絆を育んだ間柄で交わされた言葉は、たとえ強めのギャグでも批判であっても、その真意は所詮、第三者にはわかりえない。だから、寛大な心で楽しむのがベストなのだ。彼らの関係性から、そんなことを大いに学ばされる。
ここから、6曲を畳みかけるように歌っていく。
まず「ダンス ダンス ダンス」(アルバム『PLAYZONE’90 MASK』収録)では、ふたりが左右に分かれてステージから降りていき、途中に設置されたお立ち台に上ったり、客席を練り歩いたりしながら、後方のステージへと移動。この手法自体は、’21年末に行われた植草ソロのショーで取り入れて大好評だったのだが、この日も、歓喜するファンが多数見られた。それにしても、実際に近くで見ると、ふたりともテレビなどで見る以上にカラダの線が細い。これもスターゆえの、生まれ持ったギフトなのだろうか。
続く「ミッドナイト・ロンリー・ビーチサイド・バンド」は、少年隊のアルバム『35th Anniversary BEST』でも新たに歌った明るいミディアム・ポップス。ただし、ここでは錦織のハモリがシャウトに近いほど強烈に響き、少年隊のニュー・バージョンというよりも、錦織と植草によるカバー曲として独立して楽しめる感じに聞こえる。今回、少年隊のオリジナルよりキーを下げたものが多い。それは当時の高音よりも中音域がよく響くようになったという声質の変化もあるだろうが、こうして上にハモったときに大人の色気が感じられるし、また、天に向かって叫ぶような演出効果のようにも見てとれた。
そして、さらに連続する「パーティーが終わっても」(アルバム『PLAYZONE’88 カプリッチョ -天使と悪魔の狂想曲-』収録)も同様、錦織のハモリ効果により、植草の若々しい高音がよく映える。ここでも演出家としての技量を発揮しつつ、観客にはスター性を振りまくという錦織の唯一無二の存在感に驚かされる。
こうしてクライマックスに向かう絶妙なタイミングで披露されたのが、不朽の名曲「君だけに」と「仮面舞踏会」。
それまでは、前述のように“ふたりによる新たなカバー曲”という風に聞こえたのが、とりわけ「君だけに」は、なぜか確かに3人で歌っているように感じられた。ふたりの立ち位置が東山を意識していたように見えたからだろうか、東山が歌うパートは、あまりにも東山の歌声で刷り込まれているからだろうか、理由は判然としないが、筆者には、この歌はソロでも、ふたりでも、どんな形で歌われようとも、少年隊3人で歌うものが完成形として今後も語り継がれるように感じられた。
そういえば、この公演の正式タイトル『ふたりのSHOW&TIME SONG for YOU』を発表する際、植草は「SONG(赤色)」と「YOU(黄色)」の間にある「for(黒色)」を指さして「(東山のことは)ちゃんと考えている」とファンに話していたことを思い出した。「仮面舞踏会」で魅せた、今の錦織ならではの男気あふれるシャウトも、この歌のとろけるような甘い魅力を醸(かも)し続ける植草の歌声もいいが、東山が歌うことでパズルのピースがはまり、ひとつの絵が完成するように思えてならなかった。
鳴りやまぬ拍手、ラストの曲「君にこの歌を」が感じさせた“3人のつながり”
そして、本編ラストには、「ステージと言えば、やはり『PLAYZONE』(’08年まで少年隊が主演を務めたミュージカル)のイメージ」ということで、「めぐりゆく夏」(アルバム『PLAYZONE 2000「THEME PARK」』)を選曲。《♪同じ夢をみた友よ》という歌詞は、彼らにとっても、またファンにとっても、忘れがたい日々を思い出させたことだろう。さらに、『PLAYZONE’89 Again』収録の高速ナンバー「Baby Baby Baby」を歌って、「ありがとうございました!」と爽やかに挨拶をして本編が終了。いかにも、これで終わらないという雰囲気だったが、予想どおり、すぐにアンコールに入った。
ここで歌われたのが、’86年の1stアルバム『翔 SHONENTAI』収録の「星屑のスパンコール」と、’95年のシングル「Oh!」のカップリング曲「PGF」。どちらもシングルの表題曲ではなかったが、ファンにとっては同様に、あるいはそれ以上に大きく育てられた人気曲と言えよう。「星屑のスパンコール」は、サビの歌詞《♪もう一度アンコール もう一度アンコール》が、「今回のショーのアンコールのみならず、こんなすてきなショーをまた観たい」というファンの思いも反映したのか、涙を見せる観客も少なくなかった。続く「PGF」は、ファンも一緒に踊り出しそうなリズミカルなナンバー。ここでもふたりは、56歳と57歳とは思えない軽やかなステップを踏みつつ、大いに盛り上がりながら1回目のアンコールが終了。
拍手は鳴りやまず、2回目のアンコールが開始。スクリーンには、これまでの日々を振り返るような写真の数々が映し出される中、披露されたのが’87年のアルバム『TIME-19』より「グッバイ・カウントダウン」。出だしの《さよならのかわりに あなたの手のひらの中に 預けよう》という錦織の歌声に寂しさを感じつつ、サビの《♪さよならは愛の強さをためすブリザード~》を響かせる植草の歌声が、また逢える希望をにじませる。
そして、本公演ラストに歌われたのが「君にこの歌を」。もともとは、’67年に初代・ジャニーズが歌い、’69年にフォーリーブスの歌唱にてレコード化、さらに、たのきんトリオや少年隊もカバーしてきたストレートな友情ソングだ。錦織は「30代で歌ったが、そのころよりも、さらに好きになった曲」として選曲の理由を語った。
ちなみに本作は、’21年11月に開かれた『服部克久メモリアルコンサート』にて東山紀之も歌っており、筆者には、この歌で3人がつながっているようにも感じられた。
《♪君はうたいつつ あるきはじめてくれ 君がうたう時 君がうたう時 僕も共に歌う》
そんな楽曲のメッセージにファンも大いに共感したのか、拍手は本当にまったく鳴りやまず(「以上をもって本公演は終了しました」という場内アナウンスをいくら大きくしても)、それに応えるかたちで、着替えをすませたふたりが出てくるほどだった。
植草にインタビュー!「いつまでもジャニーさんが認めてくれるようなショーを」
公演終了後、植草に少しばかりだが、今回の公演について尋ねてみた。(錦織は次のスケジュールの都合ですぐに退出)
──おつかれさまでした! 今回の舞台は、おふたりの信頼関係が垣間見える感じでした。
「楽しかったですね……周りからはずっと怒られながらやっていました(笑)。でも、そうじゃないと成長しないしね」
──昨年末の、植草さんソロのショーへの錦織さんサプライズ出演が、今回につながったのでしょうか?
「もちろん、彼の中ではそれもあったかもしれない。でも、いちばんの理由は、“いつか、ふたりのファンミーティングみたいなことをやりたいね”と言っていたところで、東京ドームホテルが予約できたことですね。せっかく大きな会場も取れたし、まずはディナーショーをすることにしたんです」
──今回の反響の大きさから、大阪公演も具体的に動きました。
「やっぱり、関東だけの3回で終わっちゃうのはもったいないし、みんなにも、もっと会いたい……と思っていたら、ついこないだ決まって、本当にラッキーですね。ニシキ(錦織)と僕が(’20年にジャニーズ事務所を)退所して、(少年隊の)3人がそれぞれの仕事をするのも大事だけれど、やはり35年間続けてきたことが自分たちの財産となっているし、それをまた表現できるという機会をもらえたのは、ファンのみなさんがいてくれてこそ。昔は何も考えずに若さゆえの勢いでやっていたけれど、この歳になると、ひとつひとつのことが、本当にありがたく感じます。
演奏のメンバーや照明、音響含め、スタッフのみなさんが陰で支えてくれているおかげだと実感するし、振り返ってみると、これまでも支えられて今に至っているんだなと、改めて気づきました。だから、本当にもう感謝の気持ちしかないですね。
何かを決めるときに、今でも“ジャニー(喜多川)さんだったらどうするかな?”と自分に問いかけながらやっていますし、たぶん、ニシキも一緒。そのことを忘れずに、いつまでもジャニーさんが認めてくれるようなショーを目指したいなと思います」
──『ふたりのSHOW&TIME』が成功したということは、次は『3人の”SHOW&TIME』も期待されます。
「僕も、できることなら3人でやれることも願っていますし、それがすべてだと思っているのですが、それぞれのタイミングがありますしね。いつか、そのタイミングが合うことを望んでいます。
より大きなステージに3人がそろって……そんなすてきなことって、ないじゃない!? 最近は、後輩たちが頑張っている姿を見て“本当によかった”って思えるし、“俺たちも負けてられないぞー!”って思いますしね。
歳をとっても、こういうことがやれるのが楽しいし、何より、来てくださるお客様の顔を近くで見ると、お客様のほうがもっとすてき! マスクをしていても、目を見たらわかります。みんな、髪の毛や服装まで一生懸命考えて会場に来てくれる。俺たちなんかよりも、しっかり準備なさっているんじゃないかと(笑)。そうやって、すてきな方々とお会いできるのもうれしいし、それだけの場所にしなきゃいけないな、と覚悟しています」
──ステージでも盛り上がる、植草さんのソロ曲「Sha la la」は、いつリリースなんですか?
「何か次のタイミングでリリースできないかと考えています。レコーディングも途中まで仕上げていて、なんとか今年中にできれば。どうせなら、何曲かまとめてお届けしたいですね」
──11月はソロでのランチタイム&ディナーショーですね!
「ソロのほうは、さらにヒット曲満載で、動けるだけ動いて頑張ります!」
今回のショーは、長年の愛と感謝に包まれていたし、繰り返すが、『ふたりのSHOW&TIME』が開かれたことで、いつの日か『3人のSHOW&TIME』が見られるような気持ちにもなった。3人そろってこそ少年隊、という見方から、本公演を否定的にとらえる人もいるかもしれないが、筆者にはそこに向かうまでのステップのように見てとれた。一緒に歌いたい、踊りたいという気持ちから、まずはふたりのショーが実現した。それはただ純粋に、ジャニー喜多川氏と3人が大切にしてきた“SHOW MUST GO ON!”が、今できる範囲で実施されただけのような気がする。
だからこそ、3人がそれぞれの道を歩み続ける中で、また偶然が重なり合って、さらなる夢のショーを期待せずにいられない。そのために、彼らの音楽やショーを愛する人たちは、ネガティブな憶測に振り回されることなく絆を深め合うことが、より大切になっていくような気がする。
(取材・文:人と音楽を繋げたい音楽マーケッター・臼井孝)