新宿・歌舞伎町に入るとまず目に入るのが、ホストクラブの大型看板。アイドルグループと見間違うようなルックスの男性たちがしのぎを削る中、異彩を放つ存在なのが、降矢まさきさん(33)。現役ホストでありながら、3店舗のプロデューサーもこなす彼は、なんとコロナ禍で年間売り上げ5億2000万を記録! ホスト界以外からも、その手腕に注目が集まっています。
降矢さんは2022年末、自身の経験をまとめた初の著書『日本一「嫌われない男」の億を売る仕事術』(扶桑社)を上梓。インタビュー第1弾では、著書では語りきれなかった母親との関係性や、学生時代からホストの駆け出しになるまでの思い出、大事にしているポリシーなどを詳しく語っていただきました。(インタビュー第1弾→年間5億以上を売り上げたホスト・降矢まさきを直撃! 周囲の顔色ばかりうかがっていた少年は、なぜとび職から“夜の世界”へ?)
第2弾では、新人時代の苦労話やホスト及び降矢さんの恋愛観など、よりディープな内情に迫ります。
超高額を売り上げられた秘訣は、意外と単純!? 駆け出し時代は24時すぎに出勤
──ホストだけでなく店の経営も任されるようになってから、特に意識していることはありますか?
「ホストになりたくて入ってくる子たちって、理想のホストクラブ像を絶対に持っている。だから最初の説明で必ず、“お前が想像しているような仕事じゃないよ”って言うようにしていますね。働き始めると、現実とのギャップが必ず生まれて、だいたいは落胆しますから。あと、雇った子には必ず、走り抜いたあとにふと振り返って、“こういうことがあったよな”って笑ってしゃべれる仲間を作ることが最終的なゴールだ、って伝えています」
──ホストとして働き始めると、どのようなステップが待ち受けているのでしょうか。
「まずは自分が売り上げを出して、そこから給料をもらえるようになるまでが第1ステージ。そのあとは、役職に応じて売り上げ目標があります。月間150万から400万、600万、800万ときて、次に大きな目標となるのが、月間1000万くらいの売り上げ。そこから先は、年間1億を目指していきます」
──降矢さんはホスト界でも最高額となる年間5億以上を売り上げたそうですが、それだけの金額を達成できた秘訣は何だったと思いますか。
「(即答で)無遅刻・無欠席じゃない?」
──そんなに欠勤や遅刻が多いのですか?
「いや~、めちゃくちゃ来ないですよ(笑)! マジで来ない。だからこそ、無遅刻・無欠席がやっぱり周りと違う点じゃないかな。俺、最初のころは歌舞伎町まで、埼玉県から通っていたんですよ。当時はまだ法律上、営業時間に縛りがなかったから、いちばん早い朝営業のシフトだと、スタートは日の出に合わせて、午前4時台」
──早朝ですか!?
「そう。店の準備のために2時間前には着いてなきゃならないから、みんな深夜2時半くらいまでには出勤します。でも俺は、埼京線の最寄駅からの終電が新宿に到着するのが24時前とかだから、時間を持て余すんですよね。それで、“1部”と呼ばれる夜営業が終わる24時すぎにはもう店に行って、“やることがないから掃除しちゃえ!”って、ほかのスタッフが来る前に全部ひとりで掃除していました」
──お客さんからしたら、開店前の掃除や、無遅刻・無欠勤は見えない部分じゃないですか。それを貫くのは、つらくなかったですか?
「俺からしたら、お客さんに頑張りを知ってもらえないことより、ほかのやつが掃除しているのを見るほうがムカついちゃうんですよね。段取りが悪すぎて(笑)。でも、当時の俺はいい売り上げがあるわけでもなかったし、掃除のことで周りにぐずぐず文句を言うくらいなら、もう自分がやってしまえばいいって思っていました」
お客さんには媚びない。「ついてこられる人だけどうぞ」な“降矢スタイル”を貫く
──降矢さんの場合は、お客さんから本気で好きになられたりすることも多かったのではないですか。
「“ガチ恋”の方が多かった感じはしますね。俺は癒し系とかではないので、動物的な可愛さを求めてくる人よりは、人間性に惹かれてくれたのかもしれないです」
──何人もの人から言い寄られると、どういう気分なのでしょうか。
「めっちゃ言い方が悪いけれど、ありがたいものの、“あっちが勝手に好きなだけ”って感じ。でも別に、俺がそれ(相手の気持ち)をね、ダメだよっていうことじゃないですからね。もしかしたら、相手は俺が自分を好きかどうかなんて、ぶっちゃけどっちでもいいのかもしれない。俺はホストですから」
──お客さんとして接していた人を、本当に好きになってしまったことはありますか。
「俺は全然ないです。でも、ほかの人はいっぱいあると思う。それでホストを辞めていく人もいるから。俺はこの仕事を辞める気がないから、“俺を好きでいてくれる人は、残念ながら(お客さんとして)ずっとついてきてもらうしかないよ。ついてこられなくなったら、そこで終わりです”って言う」
──潔いですね。
「だいたいのホストって、お客さんに対して“これくらいまで(お金を)使ってくれたらホストを辞めるから使ってほしい”ってお願いするパターンが多い。だけど俺の場合は、“いくら使ってもらってもホストは辞めません。だから、ついてこられる人だけついてきてね”って言っているんですよ」
──漫画やドラマの世界でしかホストクラブを知らなかったので、女性側からしたら、もっと甘やかしてもらえる世界だと思っていました。
「人によるかな。店のコンセプトとかでも違ってきますし。もちろん、甘い言葉をずっと囁(ささや)いて好きにさせるタイプのホストもいます。それこそ、女の子の人生を振り回すようなやつもいっぱいいる」
──さまざまなタイプの男女を見てきた降矢さんからすると、「こういうやつはやめておいたほがいい」っていう男性はどんなタイプですか?
「まさに“この男はやめたほうがいいぞ”って言ってくるやつ(笑)。性格が悪いか、下心があるから。例えば俺の場合、女の子が相談してきた相手のことを、あんまりよくないなって思っても、本人の前では言いません。女の子の前にいるその男は、俺に見えている男とは違いますから。それに、好きになっちゃったら一緒にいたいんだろうから、周りが何を言っても無理なんですよね。“やめろ“っていうよりも、一緒にいられる方法を考えてあげたほうがいいんじゃないかなって思います」
──逆に、「これは嫌だな」と感じた女性の言動はありますか?
「俺の文句はいくら言ってもいいけれど、うちの従業員や俺の仲間に上から目線で物を申
すのだけは許せないですね。文句があるなら、その人たちに言わずに俺に言ってほしい。俺は女性に対しても“お前ごときが言える立場じゃない”って思っちゃうから」
──女性はアドバイスをしているつもりで、つい言ってしまうこともありますね。
「面倒なタイプの子の特徴って、直接的な言葉を使わないことだと思うんです。例えば、“今日は一緒にいたかった”って言えばいいだけなのに、そのワードだけは発さない。なのに、ずっとグチグチ言ってくるから流していると、“なんでそんな態度なの”って返してくる。だから俺はそうなったら、あえて無視! (笑)」
──最近では『ホス狂い』という言葉も生まれてきましたが、ホストにハマりやすい女性の特徴みたいなものってありますか?
「友達が少ない人と、シンプルに男好きなタイプ。あとは、寂しがりやとかですかね。たとえ、付き合っているメインの男性がいたとしても、それ以外にも常にプラスアルファで男にいてほしい人」
──なにかしら当てはまる女子は、結構いると思いますよ。
「そのときに出会った担当が、その人が求めているニーズにしっかり応えてくれるホストだったら絶対にハマると思います。仕事とかで疲れたときに、通うようになるんじゃないかな」
ホストクラブは少額でも遊べる?「嫌がるホストはいないけど俺は13万円から」
──例えば、高額ではなくライトなお金の使い方でもホストクラブに行っていいのですか?
「ライトなお金の使い方でも、遊びに来て迷惑っていうホストはいないと思う。でも、俺は自分のブランディングがあるから最低金額を設けていて、SNSでも“いくらからならOK”って書いています」
──SNS経由の問い合わせはどれくらい来るものですか?
「毎日1通くらいはDM(ダイレクトメール)が来ますが、月30通きたとしても、来店数ってマジで5人くらいです」
──思ったよりも実際の来店数は少ないのですね。
「冷やかしでDMを送ってくる人もいるのかもしれないけれど。予算などを聞かれたら、ちゃんと返信して質問に答えていますよ」
──今、降矢さんに会うにはいくらくらい必要なのでしょうか。
「理想は最低13万円ぐらいあるとありがたいですよね」
──結構な金額ですよね。
「すごーく安いホストなら、1時間1万円。俺の場合だったら、1万円じゃ店には入れないですね」
──やはり金額にたじろいでしまうのですが……。
「じゃあさ、コンサートのチケットとして考えて」
──8000円くらいですかね。
「でもさ、そのチケットで憧れのその人と、実際にしゃべれる? 」
──……ステージを挟んで一方的に拝むだけですね。
「それです! (笑いながら)それを考えたらどうですか」
──(笑)そうですね。かなりの“推しメン”とそれ以上のことができるなら、何万円か払っちゃうかもしれないですね。
「ホストの場合は、一緒に乾杯もして、隣で笑って話してくれる。それを考えたら、その金額になるでしょっていう。いちばん安い価格帯で通うとしても、普通の人の“使うならこれくらいまで”という考えにプラスアルファを上乗せするのがホストの役目なんです。俺は“降矢まさき”というブランドは崩さないから安売りはしないけれど、ちゃんとお金を使って応援してくれる女性に対しては、全身全霊で話を聞くし、楽しませる努力を惜しまないですよ」
──よくホストは『色恋営業』と言われますが、なかなか奥が深いのですね。
「ブランディングがうまくいくと、次第に自分に自信がある人だけが寄ってきてくれるようになります。一流の人が増えると、中途半端な面倒くさいこととかは起きにくくなるんですよね」
──すごく裏表のない性格というのが伝わってくるのですが、降矢さんがホストとしてナンバ
ーワンになるために応援してくれた女性たちはどのようなタイプでしたか。
「まず面倒なことは言ってこない子たちでしたよね。職業は風俗や水商売だったり、それ以外だったりとバラバラでしたけれど。自分の立場をわきまえているというか、向こうの一方的な要求などはしてこないでコンスタントに通ってくれたから、大事にしたいなと思っていました。ずっと我慢をしてくれている子たちだから、こちらから寄り添ってあげないといけないなという気持ちもわいて、より一層、丁寧に接していたと思います 」
──お話を伺っていると、ホストクラブに通うお客さんの中にはちゃんと満足している方も多いと思いますが、世間的にはまだホストクラブ自体がいい印象を持たれていないですよね。
「悪いイメージが先行しがちになってしまうのは、例えば、おじさんがキャバクラとかで女性を口説いて、お金や時間を注ぎこんだのにうまくいかなくても、“バカだね、相手にされるわけないじゃん”で終わることも多いじゃないですか。でも、女の子が遊ばれたとか騙(だま)されたってなると、“大変だったね、裁判したほうがいいよ”って、どうしても深刻なほうに行きがち。そういうことだと思うんですよね」
──最近はホストクラブの路上看板や街宣車なども見かけます。客層も変わってきましたか?
「SNSの普及で、だいぶ入り口が広がりましたよね。SNSで見たホスト目当てで来店する子や、ホストクラブに友達を連れてくる子も増えましたよ」
現在は結婚より断然、仕事。 売り上げ5億2000万に「強い喜びはなかった」
──降矢さんは自身はホストになる前となってからで、恋愛観に変化はありましたか?
「変わらないですね。だって、“女ってこういうもの”っていう基準が自分の母ちゃんだから。でも逆に言うと、母ちゃんみたいな破天荒な女性はいちばん嫌いですね。だから、たぶん反抗期もあったんだろうけど、学生時代に付き合っていた彼女はみんな、母ちゃんとは逆のタイプ。一歩下がって男性を立てる、みたいな感じでした。でも、あんな母ちゃんだけど、女手ひとつで俺のことを育てた我慢強さはあった。昼も夜もずっと働いたり、どこかで“そうしなきゃいけない”みたいに思っていたりするところは、母ちゃんから受け継いでるのかもしれません。母ちゃんは風俗店であれだけ働いていたのに、なんであんなに金がなかったんだろうって思うけど(笑)」
──これから結婚したり、家族を作ったりしたいという思いはありますか。
「俺、もうバツ2ですからね。でも、もし子どもができたら、自分からやりたいって言ったことは全部やらせてあげたいって思います。だけど、結婚相手からしたら、俺が相手なのはキツいですよね。だって、絶対的に仕事優先だから。家に帰ってくるかもわからないし、家事は基本的にやらない。ほかの女性を相手にするうえに、仕事の合間の時間でしか、どこかに連れて行けない。これが1つめの地獄。2つめは、俺と一緒にいるなら、お金を誰よりも俺に使わなきゃならない。俺と一緒にいると、この2つの地獄が舞い降ります。そうしたらもう、その人幸せじゃないじゃん。だから今は、やっぱり仕事を大事にしたいですね」
──ホスト界を上りつめた降矢さんですが、次なる目標は何ですか?
「ホスト界で年間5億2000万売り上げたけれど、“むちゃくちゃ小せえな”って思ったんですよ。歌舞伎町の中で、5億2000万という数字でドヤ顔をしているのが恥ずかしくなってきた。今後はホスト界にとどまらず、こういう取材を受けることもそうですが、今までやってみたかったことを、もっと引き寄せられるような活動をしたいです」
──人生でうれしかったことって、売り上げがよかったときでしたか?
「5億2000万売り上げたとわかったときは、むしろ人生でうれしくなかったときに入りますね。“俺が稼いだんだ!”みたいな強い喜びはなかった。逆に“これだけ毎日、毎日、身体を張って、ウソをついたり人を傷つけたりもして、たった5億2000万かよ”って感じました」
──幸福感よりは達成感のほうが大きかったのかもしれないですね。
「幸せを感じたことがないから、まだ探しているのかもしれないです。今こうやって思い返してみても、何か飛び抜けて“幸せな瞬間は、これだ!”っていうのがないんですよ」
──逆に、人生の中でつらいことのほうが思い返したりしますか?
「幼少期からホストを始める前までのつらいことは、まったく思い出せないんですよね。俺の脳みそって、めっちゃ都合よくできているから、全部消しているのかもしれない。でも、“あれが嫌だったな”っていう記憶はいっぱいあるんですよ」
──例えば、どのような記憶ですか?
「親戚で集まったときに、俺だけお父さんがいない。みんなはプラモデルとか買ってきて、お父さんに作ってもらえるけれど、俺はもう、誰に頼んでいいかわかんない。だけど母ちゃんは作れないから、自分でやるしかない。それで自分だけ作れなかったときの苛立(いらだ)ちとか……。今でも忘れられないです」
──もしかしたら、そういうマイナスの記憶を原動力として、這(は)い上がっていく力をつけたのかもしれないなと感じました。すごいと思います。
「たいしたことはないと思いますが、まずは何事も一生懸命やる。それを続けていたら、早いうちになんでも自分でできるようになっちゃったんですよ(笑)」
──最後に、降矢さんが大事にしている言葉はありますか?
「うちの社長がよく言う言葉なんですけれど、『ピンチはチャンス』。実は、この言葉を社長に教えたのも俺なんですけどね(笑)」
(取材・文/池守りぜね)
【PROFILE】
降矢まさき(ふるや・まさき) ◎日本一のホスト。1989年、東京都生まれ。2021年に32歳でホスト史上最高の年間売り上げ5億2000万を達成する。「FUYUTSUKI-PARTY-/-KARMA-」に加え、今年7月に、盟友の姫乃昴とタッグを組んで完全新規店「FUYUTSUKI ―JP[W]1―」をオープン。現在、3店舗のプロデューサーとして昼夜、新宿歌舞伎町を駆け回っている。YouTube「まーくんTV」では、建築会社社長として、ホストとして得た自身の経営哲学や人材育成論などについて熱く語る。その超合理的な「自分を売る」技術は多くの経営者を魅了する。
◎公式Instagram→@masaking_f927
◎公式YouTube「まーくんTV」→https://www.youtube.com/channel/UCYrnCyooYseljmK9_Nfduhw