ここはどこ? どうやら地球じゃない、宇宙だ! くまモンが宇宙に行っている。くまモンが翔んでいる。それを私たちは目撃している──。
くまモン、ついに宇宙に行く。近い将来、そんなことがあっても不思議ではない。
ステージのオープニングは、そう思わせてくれるような、なんとも夢のある仕掛けだった。3月12、13日の両日、開催された「くまモン誕生祭2022」。
この2年、集客しての開催はできなかった。その代わり、2020年は12月に無観客で収録したオンラインステージ「くまモンのサンくまステージ~ボクからのむぎゅカプッ☆×10年分~」を配信、昨年はメディア・Web・SNS等を活用した「感謝のくまてばこ」を実施した。また、くまモンスクエアで「ハピバ! くまモン」が開催されたが、「誕生祭」と銘打ってのリアル開催は3年ぶりである。
2日にわたって、熊本市民会館での2時間にわたるステージに加え、サクラマチクマモト内の『くまモンビレッジ』、桜の馬場・城彩苑にある『熊本城ミュージアム わくわく座』などにくまモンが登場。また、八代市の『くまモンポート八代』にも現れてステージパフォーマンスを披露、ここでは市民会館での誕生祭ステ
大胆なアクションもバッチリ決めるくまモン
メインはやはり『市民会館シアーズホーム夢ホール』でのステージだろう。冒頭、あいさつした蒲島郁夫・熊本県知事はくまモンに関する「3つの感謝」を述べた。
「くまモンを育ててくれて感謝、くまモンを愛してくれて感謝、そして、くまモン自身に対して感謝」
突然、熊本に現れたくまモンを12年前に認知してバディを組んできた知事ならではの言葉に、ファンはすでに目がうるうる。そして知事は、今後、熊本県を「くまモン県」にすると明言。駅や港、空港、どこへ行ってもくまモンに会えるよう、くまモンランドを計画していると話した。コロナ禍がおさまれば、またインバウンドが見込める。世界中で大人気のくまモンに会いに、海外からも多くのファンがやってくるはずだ。熊本の夢が広がっていく。
くまモンは誕生祭において、毎回いろいろなことに挑戦するのだが、今回は『096k熊本歌劇団』(オクロックくまもとかげきだん)とのコラボで、殺陣やアクションに挑戦。見事に拍手喝采を浴びた。この096k熊本歌劇団は、漫画専門の出版社である『株式会社コアミックス』が熊本を拠点に旗揚げした女性だけの劇団で、漫画を原作としたライブ活動をおこなっている。全国からオーディションで選抜された劇団員は27名、共同生活を送りながら稽古に励んでいる。2021年の夏から本格始動し、演劇に歌、アクションなど、さまざまな魅力で固定ファンも増えてきたという。
そこにくまモンがからみ、両手に刀をもって大奮闘。殺陣にアクションにと大活躍だった。
歌劇団側もくまモンとのコラボが楽しかったようで、ツイッターやインスタグラムなどで練習風景なども公開している。
くるくると変わる衣装にビックリ、お友だちとの交流にほっこり
くまモンダンス部とのダンス、ファッションショー「モンコレ」など、お楽しみは続く。
モンコレでは、「ぶちょう くまモン」と自筆の名前入りの体操着を着て登場。そのまま障害物競走からのパン食い競争で、「謎のお友だちのパンダさん、ちんぱんさん、ねこさん」をおさえて優勝という寸劇も見せた。
また、デビュー10周年のときに作った衣装も初めてお披露目された。王冠をかぶったその姿は圧巻。オーラが半端ないのだ。
新作は現在、熊本市内でおこなわれている「くまもと花とみどりの博覧会」でイメージキャラクターとして活動する際に着ている「モンキチョウ」の衣装。花かごをもって蝶々のように飛ぶくまモンのかわいらしさに、客席がうなった。
そして誕生祭でしか見られない「くまモン体操 初音ミクバージョン」も。おそろいの服を着たくまモン隊がずらりと並び、くまモンとともにキレッキレのダンスを見せる。これを見ると、過去の誕生祭の思い出が浮かんできて、「泣ける」というファンは多い。
さらに、定番の「熊本のお友だち」との「わちゃわちゃぶり」もまた楽しい。仲よしの鞠智城(きくちじょう)のさきもりころう君をはじめ、上天草四郎くん、荒尾市のマジャッキー、玉名市のたまにゃんなどなど、県内から多数のお友だちがプレゼントを持ってやってきたから、くまモンのはしゃぎっぷりもとどまるところを知らない。
最後、拍手が鳴りやまない中、アンコールがあった。そして出てきたのは、ボディがジャパンブルーに変色した「藍色くまモン」だ。昨年夏、
コロナ禍においても東京オリンピック・パラリンピックで夢に向かって頑張っているアスリートを見ているうち、「すべてのがんばっている人たち」を応援したい気持ちが高まり、
全身が藍色に変化したと言われている。
今回の誕生祭でも、熊本地震や豪雨災害の被災者、コロナ禍で苦しい生活を強いられている人々の気持ちを癒やしたいという思いが募り、さらに、久々の大規模集客イベントでくまモン自身の気持ちが高ぶって、また藍色に変身してしまったらしい。会場内からも、声にならない歓喜の声が漏れた。
最後は096k歌劇団やたくさんのお友だちも全員そろって「くまモン体操」を踊ってフィナーレ。藍色くまモンは、ステージ上を機敏に動きながらキレッキレのダンスを披露、興奮冷めやらぬ気持ちが伝わってきて、観客からは拍手の嵐。幕が下りてきても、藍色くまモンは最後まで寝そべって顔を見せて手を振り続ける。余韻はいつまでも残っていた。
どの会場でも全力投球する姿を前に、「くま切れ状態」から回復
前述のわくわく座では、熊本城おもてなし武将隊ともコラボ。くまモンも演舞に参加、さらに武将隊をいじりまくって場内は爆笑となった。普段はかっこよさを売り物にしているため、あまり笑わない武将隊も、くまモンが相手となると気が緩むのか、つい素が出て大笑いする場面も。くまモンの力、おそるべし。
くまモンビレッジでもくまモンは大活躍。ここはくまモンのベースキャンプとなっており、くまモンが県内で集めた「宝物」を紹介してくれる場。ここでの定番衣装も「むしゃんよか」なものとなっている。
※「むしゃんよか」……熊本弁で「かっこいい」「すてき」の意。
そして、くまモンスクエア。当日は例年のごとく、くまモンにケーキのプレゼントがあった。ケーキを見るなり、よだれを拭うくまモン。なんと、今年はシャンパンタワーならぬ「デコポンジュースタワー」も。
さらに、スクエア前の通路に緋毛氈(ひもうせん)を敷いてランウェイとし、スクエア内から外を一周するファッションショーが繰り広げられた。歩き方もモデルばりで、ファンの声援に応えながら楽しそうだった。
新型コロナの影響で、いまだに、くまモンとはハイタッチもハグもできない。飛沫防止のため、声援も送れない。それでも「近くでくまモンを見られた」だけで3年間の「くま切れ状態」を満たされたファンも多かったのではないだろうか。
この誕生祭を開催する上では、あらゆる関係者の並々ならぬ努力と苦労があったのだろうと推察できる。
そして……くまモン本人は、この誕生祭を楽しんだだろうか。いつだってみんなの笑顔を楽しみにしているくまモンだが、くまモン本人にも楽しんでほしいというのが、ファンの切なる気持ちでもある。
それにしても、くまモンはさまざまな魅力を武器にして、これからも熊本で、日本で、世界で、ますます人気者になっていくに違いない。くまモンが世界を席巻する日がまた近づいている。
(取材・文/亀山早苗)