最近、コンビニやスーパーのチルドカップコーヒーコーナーで、動物の写真のパッケージを目にしたことはないでしょうか。実はこれ、森永乳業が発売している『マウントレーニア カフェラッテ』の期間限定パッケージなのです。
動物パッケージにメロメロになる人続出
Twitterでは購入した人たちがパッケージの写真とともにコメントを投稿しています。
《動物の愛らしさに、またまたマウントレーニアを手にしてしまった。。。》
《マウントレーニアの深い癒しパッケージ冬を買って癒される~》
《マウントレーニアに課金だわっしょい(鼻血)》
《マウントレーニアの深い癒しパッケージ、まじでかわいくて癒されるから今後もずっと続けて欲しい、、、こういうの好き、、、》(以上、原文ママ)
と多くの人がメロメロになり、大人買いする人が増殖中。パンダ、ライオン、イルカなどの人気動物に加え、北アフリカから中央アジアの砂漠地帯にかけて生息する「スナネコ」やオーストラリアに生息するワラビーの仲間「クオッカ」など、知る人ぞ知るかわいい動物があしらわれており、発売中の8種類全てをコンプリートしている人も珍しくありません。
かく言う私も店頭でこのパッケージを目にすると、かわいさのあまり衝動的に絵柄違いの商品を何本も抱えてレジに向かってしまうほどです。
『マウントレーニア』といえば’93年に誕生したチルドカップコーヒーのパイオニアブランド。エスプレッソやノンシュガーなど多彩な味のバリエーションが特徴で、中でもミルクたっぷりのカフェラッテは定番の人気商品です。
コロナ禍の動物園・水族館を救いたい
『マウントレーニア 深い癒やしプロジェクト』の一環として今年の春にスタートしたこの動物パッケージは、2回目の夏に続き、今回の冬バージョンで3回目を迎えます。一体、どんな目的や経緯でこんなかわいいパッケージが誕生したのでしょうか?
プロジェクトチームの一員として制作を担当した森永乳業の営業本部マーケティング統括部 ビバレッジ事業マーケティング部リーダーの佐熊千裕さんにお話を伺いました。
まず、『深い癒やしプロジェクト』とはどういうコンセプトなのでしょうか?
「コロナ禍でのストレスを緩和するために癒やしが必要とされるいま、幅広い層のお客様にマウントレーニアの“深く癒やされる”というブランドメッセージを伝えたいと考えました。どうやったら伝えられるだろうと考えた際に、飲むときだけでなく手にとったときに癒やしを感じられるものということで、動物に着目しました。商品パッケージ、広告、キャンペーンなど、年間を通じてさまざまな形で“深い癒やし”をお届けしています」(佐熊さん、以下同)
なるほど、確かにゴクゴク飲めるペットボトル飲料と違い、一口ずつゆっくり飲みながらホッと一息つける……というのがマウントレーニアの魅力。そこにかわいらしい動物の写真を加えて、さらなる癒やしを届けたい、という思いがあったと言います。
そしてこのプロジェクトで特筆すべきは、売り上げの一部を動物たちの飼料代として寄付する支援型となっている点です。
「外出自粛の長期化で休園する動物園や水族館が増え、来園者数が激減して経営的にも厳しいという状況が続いていました。深い癒やしをお届けしてコロナのストレスという社会的な課題を解決したいという思いと、動物園・水族館を救いたいという思いが重なって、今回のプロジェクトがスタートしたんです。売り上げの一部を寄付することで、動物園・水族館、お客様、メーカーの三者にとって有益な仕組みになるようにと考えました」
飼育員さんが撮影した写真を使用
佐熊さんによれば、コラボする動物園・水族館は地域が偏らないように全国バランスよく、各地から選定して依頼を進めたそうです。登別マリンパークニクス(北海道)、埼玉県こども動物自然公園、姫路セントラルパーク(兵庫)、アフリカンサファリ(大分)など、ご当地で人気の動物園や水族館の動物がたくさん登場しています。
そしてパッケージの動物たちは、飼育員さんが自ら撮影した写真から厳選したもの。毎日お世話している飼育員さんならではの、距離の近さや表情の豊かさが大きな魅力に。普通に動物園に行っただけではなかなか撮れない貴重な写真ばかりです。
「リラックスした表情でこちらを見ているライオンの赤ちゃんなんて、すごいですよね。クオッカもかわいくて個人的に好きなんですが、大きい子が小さい子に草を食べさせているようなシーンなんですよ! すごくないですか?」
説明に思わず熱がこもる佐熊さん。パッケージの写真選びにもかなり力を入れたと言います。
「この角度よりこっちの角度がいいかな? と悩みつつ、よりかわいらしく、いちばん癒やされる写真を選びました。私、動物関係の仕事をしているんだっけ? って錯覚するくらい、動物の写真や動画をたくさん見ました(笑)」
冬のパッケージでは、春夏に大人気だった動物たちの別カットも採用されています。そういえばパッケージの動物たちにはある共通点が……。
「お店の棚で見ていただくと感じると思うんですけど、目が合うんですよね(笑)。あえてそういう写真にしました。後ろのバーコードの部分も、実はパッケージの動物をイメージしたイラストを加えていて、それぞれ異なります。ライオンが草の上で遊んでいたり、イルカが飛び跳ねていたり。ちょっとした遊びも入れました」
細かい部分にもこだわりが光ります。ちなみに佐熊さんの推しパッケージは?
「個人的にはジャイアントパンダの楓浜(ふうひん/アドベンチャーワールド)ですかね。ちょっと転んじゃったのかな? っていう、なんとも言えないポーズに癒やされます。あとはスナネコのアミーラ(那須どうぶつ王国)も目がクリッとしてかわいいなと思います。ホッキョクグマのホウちゃん(天王寺動物園)もかわいいです……キリがなくなっちゃいます(笑)」
癒やされすぎて労働意欲が0になるホームページ
深い癒やしはパッケージだけではありません。マウントレーニアのホームページ『深〜〜〜〜〜く癒やされるサイト』では動物園や水族館から提供された動物たちのおすすめ写真や動画がこれでもか! というほどふんだんに紹介されています。
こちらのサイトは春の立ち上げから半年間でページの来訪者数は約37万人と大好評。「かわいい写真がスライドショーでずっと流れる『夢のようなボタン』」「深く癒やされすぎて労働意欲0になる映像集」などコンテンツも秀逸で、気づけば時間を忘れて見入ってしまうこと間違いなし。写真と動画もいいなと思うとハートボタンを押せるようになっていたり、工夫も満載です。
「日本人の特徴なのかもしれませんが、クリックして次のページに飛ぶ瞬間にもストレスを感じるというデータがあるので、このサイトは、あえて縦長にしてスクロールするだけで全部見られるような作りにしています。スクロールしながら、ボーッと見ていられるっていうのも癒やされるポイントかなと思います」
さらに動物園・水族館にライブカメラを置き、『ZOOm』と銘打って『Zoom』のオンライン会議に無料で動物を招待できる日本初のサービスを提供。バンドウイルカ(横浜・八景島シーパラダイス)やホワイトタイガー(伊豆アニマルキングダム)などをメンバーとして呼び出すことができます。
「オンライン会議は慣れない中で行うストレスもあったかと思いますので、『Zoom』にちょうど『ZOO』がかかっているということで企画しました。会議に呼び出しても、定点カメラのライブ映像なので動物たちが顔を見せてくれるかは、タイミング次第です(笑)。Zoomで使用しなくてもライブ配信だけを見ることもできるので、お子さんと一緒にオンライン動物園として楽しまれている方もいらっしゃるようです。あとはZoomの背景用静止画もダウンロードできるので、それをパソコンの壁紙に使うのもおすすめです」
「ありがとう」感謝の声が届いたトレイン広告
柔軟なアイデアでキャンペーンを行っていますが、春夏には電車の一部車両の広告を全て動物たちでジャックする『深い癒やしトレイン』も企画。東京、大阪、名古屋、北海道の複数路線で実施し、こちらも大好評だったそうです。
「車内の動画では飼育員さんが撮影した、思わずほほえんでしまうような動物の映像を何本もつなげて流しました。私も乗車したのですが、みなさん一度動画に気づくとずっとくぎ付けになっていて、あぁ癒やされている、よかった……とうれしくなりました。SNSでも《乗っているだけで癒やされる》というコメントが寄せられ、弊社のお問い合わせ窓口に、わざわざ《ありがとうございます》と感想のメッセージを寄せてくださる方も多かったです」
冬は『深い癒やしトレイン』の実施はないということで残念ですが、次回があればぜひ私も乗って体験したいなと思いました。
このようにSNSや生の声での反響が大きいだけでなく、限定パッケージの春夏の累計出荷は4500万本を記録し、前年実績を大きく超える結果に。プロジェクトとしても成功を収めており、「動物たちのおかげです」と佐熊さんは話します。協力してくれた動物園・水族館からも続々と感謝の声が届いているそうです。
「動物園や水族館で働く方からすると動物たちは子どもみたいなものなので、“大事に育てている動物たちがいろんな人に知ってもらえてうれしい”というお声がいちばん大きいですね」
12月中旬からは、冬パッケージの第2弾が発売予定です。チーターの赤ちゃん(姫路セントラルパーク)、ラッコ(鳥羽水族館)、カピバラ(長崎バイオパーク)など、激かわパッケージがめじろ押しですので、こちらもお楽しみに。仕事や家事の合間の癒やしに、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。
(取材・文/小新井知子)