現在、ラジオ番組5本(配信含む)でパーソナリティーを務め、根っからのラジオ好きとして知られるパンサーの向井慧さん。この春からTBSラジオで朝の帯番組『パンサー向井の#ふらっと』(毎週月曜〜木曜 午前8時30分〜11時)がスタートしました。
コロナ禍でリスナーが増え、再注目されているラジオ。向井さんにラジオへの思いや、始まったばかりの新番組について伺いました。
あらゆる芸人のラジオを聴いていた学生時代
──ラジオ好きになったきっかけを教えてください。
「僕は昔からナインティナインさんが大好きで、中学生の頃はテレビで『めちゃイケ』(めちゃ×2イケてるッ!/フジテレビ系)が放映されていました。テレビ番組はすべて見ていましたが、ある日、ナイナイさんがラジオ番組をやっていることを知り、聴いてみることにしたんです。そうしたらテレビで知っているおふたりとは違う面を持っていて、衝撃を受けました」
──どのように衝撃を受けたのですか?
「聴いたことのないエピソードや、テレビでは見たことのない負の感情をラジオでは話していたのが新鮮でした。それでラジオって面白いなと思い、お笑いが好きだったのであらゆる芸人のラジオを聴いてみようと思ったんです。部活をやっていなかったので、ラジオを聴く時間はたくさんありました。特に印象に残っているのは『ナインティナインのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)や、ココリコさんの『快楽シャワー王国』(CBCラジオ)です」
──現在はパーソナリティーとして活躍されていますが、向井さんにとってラジオはどういう場所ですか?
「テレビでは自分のことを、1分以上話すことはほぼありません。でもラジオでは10分でも20分でも話すことができます。そのときに感じた細かいこと、その瞬間の怒り、喜び、悲しみなど、ひとつの感情の中にもいろいろな思いがあることを伝えられるのがいいですね」
──聴く側としては、ラジオはどういう存在でしょうか?
「相手が一方的に会話をしてくれる、疲れないコミュニケーション。非常に心地のいいものです。例えば日常生活で嫌なことがあった時に、逃げ込める場所のひとつでもあります。曲と同じように選ぶ番組はそのときの感情によって異なりますが、ラジオの世界に逃げ込むことで、気持ちを切り替えられることがありました」
──向井さん自身もリスナーの助けになったり、寄り添うことを意識していますか?
「僕は誰かを救おうと思って、ラジオはやっていないですね。好みだと思いますが、僕自身は“みんなで頑張ろう!”というような、リスナーに寄り添うラジオはうっとうしいと思うタイプでした。勝手に話しているラジオを、こっちがふらっと聴きにいっている感じが好きだったんです。
なので、今も自分のラジオではそのスタンスでいますが、結果的に僕のラジオを聴いて救われたという言葉をもらうときもあります。それはそれでうれしいですが、それを目的に話したくはないですね。
ただ、春から始まった『パンサー向井の#ふらっと』は月曜から木曜までの朝の帯ラジオですが、朝の番組はもしかしたら寄り添うスタンスのほうがいいのではと思い始めています」
朝と夜のラジオの違いを実感
──これまで向井さんのラジオは比較的、夕方から夜の放送でしたが、やはり朝は違いますか?
「僕の中で夜のラジオは、勝手に話していることをリスナーが盗み聞きしにくるイメージ。始める前はどのラジオも同じだと思っていました。でも朝のラジオはたくさんの人に開かれていて、盗み聞きではないんです。どちらかというと僕がみんなの朝にお邪魔していて、リスナーがしんどいときに元気づけられる存在になれればいいなと思うようになりました。
まだまだ至らない部分も多いですが、放送は毎日とても楽しいです。放送前からみんなでワイワイしていて、2時間半が毎回あっという間ですね。この楽しさをもっとリスナーとも共有できたらいいなと思っています」
──各曜日にパートナーがいますが、それぞれとお仕事してみてどうでしたか?
「月曜パートナーの滝沢カレンさんは、言葉のチョイスがとにかくすごいです。カレンさんにしかないボキャブラリーで、しかもそのスピードが速い! どのような言葉が返ってくるのかなと、いつもワクワクしていますね。
火曜のココリコ田中さんについては、僕がもともとココリコさんのラジオ番組『快楽シャワー王国』のリスナーでファンでした。なので、ご一緒できてうれしいです。4人のパーソナリティーの中では唯一同じ芸人で自分に近いため、安心して火曜日を迎えられています。
番組内の『ドッキドキ!協会マッチング』というコーナーでは、田中さんが毎回コンシェルジュ役にふんして、僕の趣味を探すためにさまざまな協会の方を招いています。そこでのやりとりがコントみたいで面白いのは、田中さんならではです。
水曜の三田寛子さんは、以前にレギュラー番組でご一緒したことがあります。その時から大先輩なのにチャーミングで隙があり、梨園の妻というしっかりした立場なのに面白いという三田さんの魅力を、ぜひみんなにも知ってほしかったんです。今回のラジオで“番組を通して、三田さんのイメージが変わった”という声をもらったことが、一番多かったかもしれません。
木曜の高橋ひかるさんはまだ20歳で、この若さで朝のラジオ番組をやるのは、今までに例がなかったのではないしょうか。若いのに自分が話したいことを、しっかりと持っているのがすごいですね。今後、ひかるちゃんと同年代の方たちにラジオを聴いてもらうためにも、必要な方だなと思います」
──今後、『#ふらっと』でやってみたいことはありますか?
「イベントはぜひやってみたいです。昨年、『むかいの喋り方』(CBCラジオ)という番組でイベントを行いましたが、そちらは夜のラジオなのでイベントも秘密集会のような感じでした。『#ふらっと』は朝の番組なので、ふれあいがあるような、楽しいイベントができたらいいですね」
朝の生活のBGMになれるように
──来てほしいゲストの方もいるのではないですか?
「ゲストの話を聞くのが好きなので、たくさんの人に来てほしいです。『#ふらっと』の仕事を引き受けるか悩んだ時に相談に乗ってくれたオードリーの若林(正恭)さん、Twitterで『#ふらっと』のスタートをお祝いしてくれた有吉(弘行)さんにはいつか来てもらいたいですね」
──向井さんはゲストの方のお話を聞くのがお上手ですよね。
「自分の聞きたいことをはっきりさせてから、臨むようにしています。もう知られている情報よりも、あまり聞かれてないことに絞って聞いてみたり。相手に“あれ? これは本腰を入れないと答えられないな”と思わせるように質問しています」
──それはすごいことですね。今後もいろいろなラジオ番組をやっていきたいですか?
「いろいろなジャンルのラジオ番組を5本もやっているので、今は新しい番組をやりたいということはないですね。やりたいことがあったら、『#ふらっと』の中でできないか一度検討したいと思います。どのラジオでもできない新しいことが見つかったら、そのときは考えてみたいなと思います」
──最後にリスナーの方にメッセージをお願いします。
「春から『ふらっと』がスタートしました。ずっと続いてきた歴史あるTBSラジオの朝と、年齢とともに育ってきた方も多いと思います。この春から番組が変わり、“落ち着いた場所を奪われた”と思っている方もいるかもしれません。
難しいことですが、そのような方たちにも楽しんでもらえるように、現在は模索中です。ただ、諦めたくはないので、時間をかけていくしかないと思っています。
ずっとこの枠の番組をやられていた大沢悠里さんに、“朝のラジオは生活のBGMになれ”というお言葉をいただきました。みんなの忙しい朝の後ろに流れるようになれたらいいなと思ってやっているので、よかったら耳を貸してもらえたらうれしいです」
(取材・文/酒井明子)
〈PRIFILE〉
向井慧(むかい さとし)
1985年12月16日生まれ、愛知県出身。2005年にNSCに入校。2008年に菅良太郎と尾形貴弘とともに「パンサー」を結成。舞台やバラエティー番組を中心に活躍中。ラジオパーソナリティーとしても人気を誇り、現在5本のレギュラーを持つ。『パンサー向井の#ふらっと』(TBSラジオ)、『#むかいの喋り方』(CBCラジオ)、『パンサー向井のチャリで30分』(ニッポン放送)、『あとは寝るだけの時間』(NHKラジオ)、『向井と裏方』(AuDee)に出演中。