2022年に入り、早くも1か月がたちました。「今年こそ、やせるゾ!」と意気込んだものの、いまだに“正月太り”を引きずっていたり、露出が少ない季節であるのをいいことに、脂肪という名の服を着込んでいたりはしませんか?
なかには「でも、健康には気を遣って、朝はスムージをたっぷり飲んでいるんです」「お菓子が大好きで、どうしてもやめられなくて……」「ベジ・ファーストを実践しているのに、やせません」と、さまざまな悩みを抱えている方もいるかもしれません。
しかし! その思い込みが、まさに“デブのもと”。これまで、10万人以上の治療をしてきたダイエット外来の第一人者・工藤孝文医師によると、「ダイエットがうまくいかないのは、効果のない“やせ方”を信じているからです。太りやすい習慣に気づくだけで、二度とリバウンドしない体が手に入ります」とのこと。つまり、やせない原因を知り、マインドをリセットすれば、もう太らなくなる! こんなにラクでうれしいことはありませんよね。
今回は、工藤医師が上梓した『10万人がやせた 今日からできる 神やせ習慣』(主婦と生活社)から、誰でもすぐに始められる5つの「神やせ習慣」をご紹介します。正しい食生活をマスターし、春先に向けて、すてきなボディを手にいれましょう!
思い込み#1:もちろん、食事は毎日ほぼ同じ時間にとっています。規則正しく食べたほうが太りにくいっていうじゃないですか?
→それこそ無意識系デブの原因。食事は本当にお腹がすくまで食べない。飢餓感を覚えるまで待とう!!
時間や周囲の状況に合わせると、とんでもない量を食べてしまう可能性あり。お昼=12時の常識はリセット! 2時でも3時でも、お腹がすくまで待つのが正解。
時間で漫然と食べていると胃が大きくなります!
朝は7時、昼は12時、夜は7時。
こんな風に、自分の生活スタイルに合わせて食事時間をだいたい決めている人は多いと思います。「ダイエットは規則正しい食生活が大切」。これは間違っていません。1日3食も基本です。でも、やせるために一番優先すべきことは、規則正しい時間じゃないんです。
正解は「お腹のすき具合」。それも、ちょっとすいたな、ではなく、お腹がすいてたまらない! 「飢餓感」を覚えるくらいまで食べるのを待つようにしてみてください。
食べ物にあふれたこの現代で、飢餓感って何!? 飢餓まで我慢したら倒れちゃう!? と思うかもしれないですが、大丈夫。飢餓の手前ですから、倒れません(笑)。どうぞ、安心して飢餓感を体験してみてください。
これによって改善されることは、次のとおりです。
●大きくなりすぎた胃を元通りにする。
●空腹ホルモンのグレリンが十二指腸から分泌されて、エネルギー代謝がよくなる。
じつは、時間で食べ続けると、本当の空腹感ってわからなくなってしまうんです。おなかが「ぐぅ~」と鳴るのは、胃が最後の食べ物を腸に送ったよーという合図なのですが、本当の空腹サインではありません。まだ胃の掃除の最中です。
そこで時間がきたからといって食べてしまうと、胃は掃除をやめて消化・吸収の仕事に移ってしまいます。
これをくり返すと胃袋がどんどん大きくなって、満腹感を得にくい体に。「いくらでも詰め込める大きな胃」を自ら作ってしまうというわけです。
惰性の食事が太る原因だなんて、じつにもったいない話ですね!
お腹が鳴って、1時間ほど待つ。すると、本物の空腹、飢餓感がやってきます。このときに食べるように、食事のタイミングを変えてみましょう。
「朝はお腹すいてないけど、お腹がすくまで待ってると遅刻してしまう」など、食事をとりたい時間と合わないこともありますよね。その場合は、夕食に食べすぎているか、食べ終わる時間が遅いことが考えられます。対策としては、食べる時間を早めるか、夕食の量を少し減らしてみるといいでしょう。
ちなみに夕食は、なるべく就寝の3時間前までに済ませるのが理想です。22時以降は、同じものを食べても吸収効率が上がって太りやすいし、未消化の食べ物があると睡眠の質にも影響します。
飢餓寸前まで待って食べたとしても、そこでドカ食いしたら意味がありません。少し食べて空腹感がおさまったら、箸を置く。腹一~二分生活です。
「腹八分じゃないの!?」と思ったあなた。やせている人の食べ方を知りませんね。
やせている人は、みんな腹一~二分でやめています。ひもじい思いが消えるまでしか食べないのです。
空腹感がなくなれば食べるのを止める。適切な量でお腹が満たされるようになれば、ダイエットはあっという間に成功します!
「空腹は最高のダイエット薬」。覚えておいてくださいね!
◎時間で食べるのをやめる
◎飢餓感を覚えるまで待つ
◎飢餓感がなかなかこない場合は、食べすぎ
◎その前の食事量を減らす
◎空腹感がおさまったら食べるのをやめる
思い込み#2:朝はスムージーか野菜ジュースを飲んでいます。時短だし、健康的にやせたいからビタミンはとらないと!
→典型的ヘルシー過信タイプ! 甘い果物はお菓子と同じ。健康にいいという思い込みは禁物
果物や野菜のジュースは、砂糖無添加でも糖分高めで血糖値が上がりやすい。そのわりに満腹感が得られず、ダイエット効果に乏しい。残念ですがこれが真実!
フルーツジュースは果糖たっぷり。果物を食べるなら丸ごと食べよう
ダイエットを始めると、急に健康や栄養情報に詳しくなってしまう人がいます。しかし、ちまたにあふれる健康食が、ダイエットに効果的かというと話は別。
女性に人気のスムージーもそのひとつです。スムージーは野菜や果物、はちみつなどが材料なので体にいいイメージがありますが、じつはデメリットが多い。
●果物にはフルクトースをはじめとする果糖が多く、中性脂肪に変わりやすい。
●果物の果糖は血糖値急上昇につながり、どっさりと脂肪が合成される。
●攪拌(かくはん)して時間がたつと酸化して、果物の酵素が失われる。
果物や野菜自体は体にいいものですが、ジュースにすると量をたくさんとってしまうため、結果的にカロリー・糖質過多に陥りやすいのです。
果物を食べるなら、スムージーではなく生のままがおすすめ。ビタミンCや食物繊維が豊富なキウィ、糖代謝を促すクエン酸が豊富な柑橘類のほか、りんごもいいでしょう。
青汁、野菜ジュースも同様に、飲みやすくするため大量の甘みが加えられています。朝、オフィスで缶コーヒーやコーヒーチェーンのラテを飲む習慣の人もいますね。こうした市販の飲料は、砂糖がたっぷり入っているので、できるだけ控えるのが得策です。
ちなみに、朝食とダイエットの関係については、人によって違います。臨床の現場では、食べたほうがやせる人、食べないほうがやせる人、どちらもいますから、自分はどちらのタイプなのか体に聞いてみましょう。わからないときは、朝食を食べた1週間と、食べない1週間を比較して体重を記録すると、体質的にどちらが合っているかわかりますよ。
◎健康ドリンクは一般的に糖質が多い
◎市販の野菜ジュースや甘いコーヒーにも注意!
◎朝食をとってやせるかやせないかは人による
【目からウロコの小話】
Q:やせないのは運動不足のせいもありますよね?
A:違います。運動不足だけでは絶対に太れません!
やせられない人は決まって「運動してないから~」と言うのですが、運動と肥満って、まったく関係ありません。体が不自由な人や、寝たきり状態のお年寄りがみんな太っていますか? いないでしょう? 厚労省のデータからも明確です。日本人の75%は運動不足ですが、肥満は25%しかいません。
運動で1キロやせるには2回のフルマラソンをするくらい効率が悪いし、好きでもない人が続くはずがありません。嫌いなんですから。かくいう僕も運動大嫌いです(笑)。運動しようと思うこと自体はいい心がけですが、ハードな運動はかえって食欲増進のきっかけにもなります。運動信仰はほどほどにしておきましょう。
思い込み#3:お菓子が好きでやめられません。「1個だけ」「ちょっとだけ」がどうしても守れないんです
→おやつはやめなくてよし! そのかわり食べ方を変えよう。量を工夫すれば無理なく減らせる!
甘いものが「悪」なのではなく、食べすぎが「悪」。量を減らせば本当は食べても太りません。ただし、糖質の塊の菓子パンを食事がわりに食べるのはダメ。
食べたいものはガマンしない。そのかわりちょっとだけ
スイーツ好きな人にとって、いちばん苦しいのが「甘いもの断ち」だと思います。ダイエット中は、甘いものを食べてはいけない。多くの人はそう思っているかもしれませんが、大きな誤解です。もちろん好きなだけ食べたら太りますから、太らない食べ方を覚える。こちらの考え方にシフトしたほうが、ストレスがたまらずリバウンドしないんです。
まず覚えるべきは、量のコントロール。僕が実践しているのは「チロルチョコ作戦」です。ダイエット中に甘いものが食べたくなったら、チロルチョコしか買わない。板チョコだと一気に食べてしまうけど、チロルチョコなら小さくて包装を取るにも時間がかかるし、大人が10個買うのは恥ずかしいですから(笑)。少ない量で満たされればいいので、チョコに限らず個包装タイプを選ぶことがポイントです(大容量袋はダメ)。
ポテトチップスとチョコだったらどっちが太らない? 糖質とカロリーはどっちを気にしたらいい? こういった質問も多いですが、正解は「自分が食べたいもの」です。
チョコレートだったら、甘いホワイトチョコよりはカカオ70%以上のハイカカオのほうが太りにくいし、カロリーよりは糖質を気にしたほうが血糖値の急上昇を抑える効果があります。でも、そういうメソッドは、じつは体重にさほど影響しません。太るかどうかは、中身より量で決まるからです。
甘いものが食べたくなるのはストレス解消の意味も大きいので、気持ちも大切。たとえばケーキが食べたいとき、低糖のナッツを食べたとします。でもケーキが食べたいという気持ちは結局満たされていないから、あとで大きなしっぺ返しをくらってしまう。ケーキを食べたいときは、ヘタな代替えなんてせずに食べたほうがいい。胃袋じゃなく、心を満たしてあげることが大事です。
◎甘いもの断ちはしなくていい
◎できるだけ少ない量で満足する工夫を
◎迷ったらそのとき食べたいものを最優先にする
思い込み#4:カフェインをとるとやせますか? コーヒーが好きなので飲むだけでやせたらうれしいな〜
→コーヒーのクロロゲン酸にやせ効果あり。緑茶のカテキンを加えた「緑茶コーヒー」がおすすめ!
緑茶とコーヒー、同時に飲むことで緑茶のカテキンがカフェインの覚醒作用を緩和し、副交感神経を優位に。リラックス効果を高めながら、脂肪燃焼効果アップ。
1日3杯飲むだけ。「緑茶コーヒー」なら超ズボラでも結果が出る!
今から7年前、糖尿病内科の勤務医だった僕は、毎日のように患者さんにダイエットの必要性を説いていました。しかし、どれだけ理論的に正しい話をしても、実践してもらうのは難しい。誰でも簡単にできる方法はないかと考えた結果、目をつけたのが「緑茶」と「コーヒー」でした。
当時、健康効果のエビデンスが揃ってきており、緑茶に含まれるカテキン、コーヒーポリフェノールに含まれるクロロゲン酸に脂肪燃焼効果があることがわかっていました。さらにカテキンのエピガロカテキンガレートという成分は、血糖値上昇の乱高下を防ぐ効果も期待できる。ただ、緑茶とコーヒーのどちらがダイエットに向くかはわかりませんでした。
ならばいっそ、2つを混ぜた「緑茶コーヒー」にすれば、より高いダイエット効果が生まれるのではないか!?
そう信じた僕は、自分自身を実験台にして毎日飲んでみることにしました。コーヒーはブラック。緑茶はカテキンが多い煎茶を、1:1の割合で混ぜるだけです。
【1】1日3杯 【2】朝、体重をはかる。 ルールはこの2つだけ。これを10か月ほど続けてみると、90キロを超えていた体重が、まさかの60キロ台にダウン。食事をする時間も、運動する時間もとれない激務のなか、飲むだけで25キロものダイエットに成功したのです。
さっそく100人以上の患者さんにもすすめてみたところ、なんと平均1か月マイナス6.2キロ。驚異的な結果となりました。
「緑茶コーヒー」はとにかく簡単で、ダイエットに向き合うつらさをほとんど感じません。
緑茶のほか、紅茶やほうじ茶、プーアール茶で試しても同様の効果が出たので、アレンジもしやすい。さらに研究を重ね、食物繊維が豊富な「おからパウダー」を混ぜてもよいことがわかりました。
ノンカロリーで絶対に太る心配もない緑茶コーヒー、試す価値ありです!
◎緑茶とコーヒーは合わせてとるとやせ効果が高い
◎緑茶とコーヒーを1:1で混ぜるだけ
◎飲むのは1日3回。毎朝体重をはかるのがルール
思い込み#5:血糖値を上げないためにべジ・ファーストを実践しています。でも、全然やせない。むしろ、量はたくさん食べているような?
→じつはミート・ファーストのほうが早く満腹感を得られて糖質中毒も抑えられる!
べジ・ファーストを重視しすぎると、ダイエットに必要な栄養素が不足する恐れが。肉はたんぱく質のほか、肉に含まれる脂質も満腹感にひと役買います。
やせやすい体を手に入れるなら肉から食べよう
血糖値の急上昇を防ぐために「野菜から食べるべジ・ファーストを実践しています」という人が結構います。しかし、べジ・ファーストで健康的にやせるかというと、じつはそうとも限りません。
とくに女性で少食の人、高齢の人は、野菜でお腹いっぱいになってしまい、肉や魚が不足しやすくなってしまう。筋肉の材料となるたんぱく質が十分にとれないため、体重だけでなく筋肉も減ってしまう場合がよくあるのです。
べジ・ファーストとミート・ファースト、どちらが効果的か、僕の病院の患者さんでも実験してみました。各15名ずつで2週間試してみたところ、べジ・ファーストを実践したグループは、体重、血糖値とも減少しましたが、たんぱく質も減ってしまいました。
一方、ミート・ファーストのグループは、体重、血糖値ともべジグループより減少したうえ、たんぱく質は増加。ダイエットに成功しながら、健康状態もよくなったのです。
「ミート・ファースト」は最初にたんぱく源の肉を食べ、次に野菜。最後に炭水化物という順で食べることが大切。肉のあとに野菜を食べることで腸内環境をととのえ、肉の消化、吸収をスムーズにしてくれます。
ミート・ファーストは、糖質中毒の人や大食感の男性にも効果を発揮します。肉を最初に食べると、肉に含まれる脂質によって消化管ホルモンのインクレチンが分泌され、胃のぜんどう運動がストップ。インクレチンは脳の満腹中枢にも働きかけるので「すぐお腹いっぱい」という状態になり、食欲を感じにくくなるのです。肉は食べるときにしっかりかむので、感覚的にも満腹感を感じやすくなります。
野菜をたくさん食べることは一見ヘルシーで健康的に感じますが、かくれ栄養失調に陥る可能性もあります。ビタミンの働きは、たんぱく質がありきであることを忘れずに!
◎べジ・ファーストはたんぱく質不足になる場合がある
◎肉→野菜→炭水化物の順に食べる
◎ミート・ファーストは早く満腹感が得られる
いかがでしたか? 今回ご紹介した5つのメソッドのなかには、難しいものはありません。工藤医師もおっしゃるとおり、ダイエットを成功させるには、一にも二にもマインドチェンジ! 「もう遅い」「頑張ってもムリ」なんて諦めず、まずは1項目ずつからでも実践し、健康的な体形に近づいていきたいですね。
著者:工藤孝文
定価:1430円(本体1300円+税10%)
発行:主婦と生活社
本の詳細:https://www.shufu.co.jp/bookmook/detail/978-4-391-15703-1/
《PROFILE》
工藤孝文(くどう・たかふみ) ◎内科医・糖尿病内科医・統合医療医・漢方医。福岡大学医学部卒業後、アイルランド、オーストラリアへ留学。現在、みやま市工藤内科院長として「世界一のかかりつけ医」を目指して、日々、地域医療に力を注いでいる。専門は、糖尿病・高血圧・脂質異常症などの生活習慣病、漢方治療・ダイエット治療など多岐にわたる。「患者さんに寄り添い、心と体を整える」をモットーに診療を行っている。メディア露出も多く、NHK「あさイチ」、日本テレビ「世界一受けたい授業」、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」などテレビ出演多数。著書は50冊以上。YouTube『工藤孝文のかかりつけ医チャンネル』が人気。