アイドル、マンガ、アニメ、スイーツ……さまざまな分野で“推し”を持っていることで知られる、お笑い芸人カルテット『ぼる塾』の田辺智加さん。
2021年10月には初の著書『あんた、食べてみな! ぼる塾 田辺のスイーツ天国』(マガジンハウス刊)を発売し、大好きな“推し”スイーツを紹介するほか、月曜日レギュラーで出演中の朝の情報番組『ラヴィット!』(TBS系)ではグルメを探究。多方面で推しを見つける、推し活の達人としても注目を集めています。
前編では、“好き”という気持ちに忠実で、とことん追究する田辺さんに、推しの見つけ方、そして充実した推し活を続けるコツについて伺いました。
田辺流「いったん試す」、自分に合った推し活の探し方
田辺さんといえば、さまざまな分野に“推し”がいるように、好きなものを見つけるのがとてもお上手。月曜レギュラーとして出演する『ラヴィット!』でも“フードコーター”という異名。ロケ先ではすぐに美味しいものを見つけていました。
「フードコーターという異名はちょっと誇りたくないですが(笑)。確かに、何かを発見するのがうまいというのは自分でも思います。でも昔は下手というか、中学1年生ぐらいまでは、好きなものや推しが一切なかったんです。
その当時、周囲はSMAPさんやKinKi Kidsさんに夢中でしたが、私はイケメンにキャーキャー言うのが恥ずかしいことだと思っていたんです。だから“私は好きじゃないし”という感じで、どちらかというとオタ活に対して否定的な人生でした」
──現在の姿からすればかなり意外。そこから現在に至る、ターニングポイントは?
「中学2年生のときに、好きな人ができたのがきっかけです。ある日テレビでV6さんが『愛なんだ』を歌っていて、“あれ!? イノッチ(井ノ原快彦さん)が、(その)好きな人に似てる!”って思って。
そこから“この人は誰?”と、V6さんを調べるようになって。井ノ原さんを好きになってからアイドルに興味を持ち、そこから派生してさまざまなアンテナを張るようになりました」
──そこからしばらくはジャニーズひと筋の人生だったようですが、NSC(吉本総合芸能学院)に入ったことで、さらに世界が広がったのだとか?
「NSCに入って酒寄(希望)さんに出会ってから、少しずつ好きなものが増えていきました。“田辺さんこういうの好きそうじゃない?”って言ってくれたものを、まずは全部受け入れました。
それが自分にとって、向く・向かないはわからないけど、いったん、全部試してみるっていう方法を取り入れたら、さらにアンテナが広がりました」
──「いったん試してみる」これができそうでいて、なかなかハードルが高いもの。それゆえに趣味がなかったり、推しと呼べるものがなかったりする原因につながるのかもしれませんが。
「ときどき、“趣味がない”とか“推しがいない”という人から“田辺さんみたいに推しが欲しい……”と相談されることもあるのですが、一歩踏み出さないと出合えないんですよね。
踏み出して視野を広くして、いろいろと試してみたり触れてみたりすれば出合えるかもしれないのに、そういう人は行動に移せていないイメージがあります。結局、言い訳をしてしまう。まずは試してみて、ハマらなかったらハマらなかったで、また次を見つければいい」
──確かに、やらない言い訳はすぐに思いつきます(笑)。それよりも先入観を取り払って、まずはやってみるスタンスが大切だと。
「手始めに散歩もおすすめです。私は歩くのが嫌いだと思われがちなんですけど、実は散歩が好きなんです。休みの日は家でじっとしているタイプではなくて、用はないけど新宿に行ってみるとか、渋谷、銀座に行ってみる。特にこの3エリアをフラフラ歩いて、何かを探すっていうのはやってましたね」
──“目的なんて持たなくてもいい。まずは街を歩いて自分の琴線に触れたものを大切にしてみる”これならば、肩ひじ張らずに誰でも挑戦できそうです。
「マンガとかスイーツ、音楽もそう。いつもジャニーズばっかり聴いてるのもあるんですけど、他のジャンルもいったん聴いてチャレンジしてみる。でも結局好きな曲に戻っちゃいますけど(笑)。
いったん聴いてみて、いいところはもらいつつ。だから趣味が欲しいならば“時間と労力”はつきものだと思います」
永遠の推し“タッキー”との出会い
実は14歳のときに初めて行ったV6のコンサートでもうひとつ扉が開き、絶対的な存在、殿堂入りを果たすアイドルと出会います。
「私の人生の中にはKAT-TUNの亀梨(和也)さんがずっといますけど、殿堂入りで好きな人はタッキー(滝沢秀明さん)で、心の中にずっといます。
初めてV6のコンサートに行ったときの、席がめちゃくちゃよくて……! センターエリアの中のステージの通路横、信じられないくらいの神席でした。V6のバックダンサーとしてタッキーがついていて、私の目の前にタッキーが来たんですよ。
私が“キャー”ってなっているのを指さししてくれて、初めてのコンサートでこれを受けてしまった私は、もう一生タッキーが好きじゃないですか(笑)。そのときの場面はいまでも思い出すくらい、もう25年前なんですけど一生好きです」
──ひと昔前はひっそりと応援している人も多かったアイドルファン界隈(かいわい)ですが、SNSの普及も相まってずいぶんとオープンになりました。
「私も以前は“なんで隠さなきゃいけないんだろう”って思いながら活動していましたが、最近はみんな堂々と好きと言える風潮になってきて、良かったなって思います。(アイドルを好きになる)努力……努力じゃないですけど、結構こっちも気合入れて好きですよね。本当に“オタクなめるなよ!”って思います。
でも、好きって堂々と言えるからこそ、配慮しなきゃいけないこともある。相手に敬意を持って、“好きだ”っていう声を叫んでいきたいです。その人を好きだからこそ、たまにちょっと否定したくなることも……気持ちはわかるんですけど、それを言うならば鍵アカウントでやればいい。
私も実際に、否定するためではないですけど、鍵アカを持っています。パフォーマンスを見て“キャー!”ってなったとき、言葉にできない思いを書くだけの、誰も見ていないアカウントを使います」
充実した推し活のために、欠かせない仲間の存在
推し活をさらに楽しむために欠かせないのが仲間の存在。“好き”をとことん共有し合えるなじみの友がいるのだそう。
「17歳くらいのときに、番組協力とか(推し活の)現場で出会ったKAT-TUNファンの仲間がいて、今でも本当に仲がいいんです。みんな千葉、神奈川、栃木とか住んでる場所も違って、歳もバラバラ。でも、ほぼ毎日一緒にいましたね。
とりあえず学校が終わったら渋谷に集まって、毎日のように遊んでいました。いまはみんな結婚して子どももいて、そう頻繁には会えないですけど、年に1、2回は会っています」
──仲間とはどんな話をしますか?
「もうずっと推しの話しかしていないです。好きなものが共通していると、それだけで悪口にならないからとても平和です。そういえば最近私がSixTONESさんのアルバム『CITY』の発売日にタワレコの袋を持って新宿を歩いていたら、SixTONESさんのファンの方に“もしかして、SixTONESのCD買ってくださったんですか?”って声をかけてもらって。
そこから1時間半ぐらいおしゃべりしました(笑)。しかもしゃべってたら共通の知り合いがいることが発覚して、“こんなことがあるんだ!”って。このままお茶に誘おうかと、喉まで出かかりました(笑)」
──まさに“類は友を呼ぶ”というべき偶然の出会いですね(笑)。同じ推し活をしているファンから声をかけられることも多いのでは?
「ジャニーズのライブに行ったときに声をかけてもらうことがあります。KAT-TUNさんのライブで大阪に行ったとき、KAT-TUNよりも私を見ちゃってる人がいて。“いやもったいない! 絶対KAT-TUNさんを見たほうがいいよ!!”って(笑)。
あと、わざわざ“この間テレビで話してくださってありがとうございます”と、お礼を言いに来てくださる方もいて。私は何もしていないんですけどね。たまに私が公私混同してると指摘する人もいるんですけど、そういうときにかばってくれる人もいて。この間のライブでは、そのかばってくれた高校生の子に直接会いました」
──アイドルに限らず田辺さんはスイーツもお好きなんですよね? 身近にはスイーツ仲間も?
「これまではいろんなお店に通ったり、バイトを週5でやっていたので、仕事終わりに銀座を探索してたのですが、最近は仕事をいただけるようになって時間がないときもあって……。でも、マネージャーさんをはじめ、高校の同級生、池袋のキャバ嬢、福岡の番組でお世話になっているADさんが、最新のスイーツ情報を送ってくれるんです。
酒寄さんもグルメ本が大好きで、本で読んだ知識を私に教えてくれる。“おいしそうだよ”って言われたものを、試してみる。好きだからこそ頑張れるんです」
目を輝かせながら、“好き”があふれるようにたくさんのエピソードを語ってくれた田辺さん。後編では最近の悩みから、大好きな亀梨さん、芸人を目指した意外なきっかけまで、たっぷりと語っていただきました。
(取材・文/柚月裕実、編集/本間美帆)
【PROFILE】
田辺智加(たなべ・ちか) 1983年生まれ、千葉県出身。お笑いカルテット『ぼる塾』のメンバーであり、ボケを担当する。ジャニーズのアイドルを始め、女性アイドルグループ、アニメ、マンガ、スイーツとさまざまなジャンルに“推し”がいる推し活の達人としても注目を浴びる。2021年10月には初の著書『あんた、食べてみな! ぼる塾 田辺のスイーツ天国』を発売。
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