仏のご縁か!? グレちゃんとの出会い
愛するメッちゃんを失い傷心のわたしは、そのころ、座禅に惹かれてお寺に通っていた。その日も、座禅をするためにお寺にいた。すると、携帯電話が鳴った。保護猫団体の方からだ。慌てて出ると、「グレーの子猫を保護しました。これから譲渡会に連れていくので、駅前まですぐ見に来てください!」と言うではないか。他に欲しい人がいるらしい。「今すぐ?」一瞬迷ったが、これも仏のご縁かと駆けつける。
駅前に並べられたケージの中には、もらい手がなかなか見つからないうちに大きくなってしまったのだろう、大人の猫が多い。お目当ての子猫はすぐにわかった。しかし、なんだか元気がない。軽い失望感に襲われる。団体の方の説明によると、この子猫の父親は地域では有名なアメリカンショートヘアのボス猫で、道を渡るときは車を止めるという。母親も野良猫だ。出産したがおっぱいが出なかったそう。大家族の中で愛情をたっぷり受けて育ったメッちゃんとは、真逆の環境で育った子だったのだ。なんだかかわいそうになり自然と涙があふれてきた。
「猫は実家が大事よ」という猫博士の言葉が頭をよぎったが、震えているちっちゃな命を前に、「別の子がいい」とは言いだせない。これもご縁だ。名前は「グレ」よ。
後日、グレは団体の人に連れられてわたしの家にやってきた。知らなかったが、保護団体は譲渡先の環境を確かめてから正式に譲渡するらしい。これは正しいと思うが、ただ、ひとり暮らしの人には譲渡しないと聞いていたので、わたしは姪と二人暮らししている体にして、ドキドキしながら「姪は今、仕事に行っているので……」と嘘をついた。
和猫の穏やかなメッちゃんとは違い、グレはワイルドなアメリカ人と日本人のハーフ。ハーフのせいかなにかが違う。ごめんね、グレちゃん。メッちゃんに出会ったときのような感動がわかない。子猫なのに目つきが鋭い気がする。それに、すぐに隠れてしまう。
ああ、やっぱりあの時はっきり断るべきだったのかもしれない。果たしてこれから先の十数年間をこの子とうまく暮らしていけるのか、初日から不安がよぎり始めた。
*不安ばかりのグレちゃんとの暮らし。さてどうなる……? 第3回に続きます。