デザインから発送、SNS発信まですべてひとり

──今は実店舗を持たずに、BASEで販売されていますね。これからもオンラインを中心として販売されていくのでしょうか。

「そうですね。オンラインだけです。『SAILORS FAN CLUB』(Facebookの認証制コミュニティ)でアンケートを取って、みなさんが欲しいものをリサーチするんです。すると42年前のデザインでも可愛いって言われるんですよ」

──セーラーズファンの方の記憶力や思い入れってすごいですね。

「本当、すごいんですよ! うちは商品のクオリティを保つために、日本製にこだわっているんです。でも職人さんたちは、全盛期だったときに30代、40代だった人が、37年ほどたったから、もう代替わりしていて。ジャンパーやスタジャン職人は2代目と3代目。刺繍屋も2代目。奥さんや息子さんが手伝ったりされています

──80年代と現代では、ものづくりで変わった部分はありますか?

「“セーラーズカラー”のターコイズブルーやピンクってあまり売れないから、最近は生地屋さんが作らないらしいんです。だから糸から染めて生地を作るので2、3週間かかる。それに、同じような色味に見えても少しずつ違うので、それぞれ濃いの、薄いのと作ってみるんです。なので、現在のBASEの納期である58日って厳しいんですよ」

元気が出るパステルカラーの生地たちにも、こだわりがたくさん詰まっている 撮影/渡邉智裕

──セーラーズの立体的な刺繍も、ほかにはないですよね。

「当時の刺繍のデータは紙だったんです。紙だから劣化しちゃうし、復元が大変だった。それをパソコンで読み込んでデータ化しました。刺繍は“1針刺すごとに○○円”っていう値段設定で(数十年前に比べてだいぶ単価が上がっているから)その当時の刺繍のデータを使っている『マイケルジャンパー』とかを今の値段で売ることができるのも、あと少しだと思う

──今は、三浦さん自らSNSでも商品を紹介されていますね。

「そうなんです。社長の私が堂々と出ていって、“セーラーズの商品はこういうもの”って説明したいんです。みんなから“元気がある”って言ってもらえるんですけど、小さいころからこんな感じですよ(笑)。セーラーズって大きい企業だと思われてしまうらしいんですが、全然違うんです。娘が送迎バスに乗って出ていったあとに、私が商品にアイロンをかけて、発送もしています

──商品の発送も、三浦さんがされているんですね。

そうです。商品の1個1個に必ずお礼状も書いています。“心を込めて作ったよ”っていうところを伝えたいんです。あと、どんなものでもいいから、プレゼントをつけたい。商品を買ってくださった方に、たとえシール1個だとしても、喜んでもらいたいんです。

 2021年に『渋谷モディ』に期間限定の店舗を出したときも、来てくださったファンやマスコミの方々に何かお渡ししたくて、プレゼント用のマグカップを600個作ったところ、あっという間になくなってしまいました。会計士さんから“シールの作成に30万円、マグカップの作成に60万円ほどかかっていますよ”って言われたりもするんですけれど……(笑)。だから、お土産にしたグッズがフリマサイトに出るのは腹が立ちますね」

──商品紹介の動画の編集も自分でされているんですか?

「撮影は自分でしているので、動画だけだったらそのままアップできるけれど、テロップをつける作業は業者さんに頼んでいます。(テロップの)色は、“こういう洋服のときはこんな色がいい”ってリクエストするので、“うるさいですよね”って言われるんですけれど(笑)。自分で発信するときは、スケッチブックをバサッて開いてレフ板の代わりにして撮っていますよ」

──今年69歳で、まだまだ現役でいらっしゃいますが、今後の目標はありますか?

「100歳まで現役でデザインをやっていきたいなって思っています。あと約30年でしょ。私が歩んできた道の半分以下だから、全然オッケー、きっとできるって思うんですよ」

常に前向きに進むべき道を切り開いてきた三浦さん、とってもカッコいいです! これからもセーラーズの躍進を楽しみにしています! 撮影/渡邉智裕
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 年齢を感じさせないほどパワフルな三浦さん。セーラーズが時代を超えて愛されているのは、三浦さんと職人たちのこだわりが詰まった商品だからこそ。令和の時代も、旋風を巻き起こしながら駆け抜けていくに違いない。

(取材・文/池守りぜね)


【PROFILE】
三浦静加(みうら・しずか) ◎1953年4月12日生まれ。埼玉県出身。19歳で起業し、1984年には東京・渋谷に『SAILORS(セーラーズ)』をオープン。翌年、おニャン子クラブの衣装として起用されたのをきっかけに大人気となり、9坪のお店に1日2000人が殺到することも。セーラーズのファンは日本にとどまらず、マイケル・ジャクソンやスティービン・ワンダーをはじめとする海外セレブたちも愛用していたことで、さらに話題を呼んだ。
1999年5月15日に愛娘が誕生。脳性まひと診断されてからは、二人三脚でリハビリに励む日々。シングルマザーで、要介護4の母も自宅で介護しながら、現在はオンラインショップで新製品を販売している。

INFORMATION
◎セーラーズ公式サイト→https://sailors.thebase.in/
◎Facebookの会員制ファンクラブ『SAILORS FAN CLUB』→https://www.facebook.com/groups/600039134050398/
◎Twitter→@shibuyasailorss
◎Instagram→https://www.instagram.com/sailors.co/?hl=ja
☆5/8(日)、『サンデージャポン』(TBS系・9時54分〜)に三浦静加さんが出演します!