豊川さん&中島さんに「ユニークな商品を生み出す秘訣」をインタビュー
──万人受けする商品を作って大量生産を目指すような企業が多い中、「YOU+MORE!」の生み出すものは独創的な商品が多いのですが、こういった商品が作れるのはどうしてでしょうか。
豊川さん「フェリシモは、社会性、事業性、独創性の3つが重なり合う事業活動を目指しているので、独創性のある発想を認めてくれる企業風土があるんです。また、社員は個性的な人が多く、プライベートでも楽しかったり面白かったりすることを探すのを大事にしていることも要因です」
──シビアな話になりますが、個性的な商品であるぶん、ターゲット層は狭まると思うのですが、採算はとれるのでしょうか。
豊川さん「おかげさまで『YOU+MORE!』ブランドは人気で、買ってくださる方が多いと感じていますし、ブランドとしては生産するうえで必要な数量を販売することができています」
──他社にはない商品だからこそ、好きな人には刺さり、購買欲を高めるのかもしれませんね。一般的にオリジナリティの高い商品は価格が高くなりがちですが、「YOU+MORE!」は比較的コストを抑えている印象です。なにかコツはあるのでしょうか。
豊川さん「プランナーたちは、これまで家事やキャラクター雑貨の企画で経験を積んでいるので、“お買い求めしやすい価格帯にするためにはどうしたらいいのか”については熟知しているんです。
特に商品の仕様や素材選びには気をつけていて、できるだけ布を使った“縫製もの”で立体物を作るようにしています。樹脂などで作るものとは違って、型を必要としないぶん、コストを抑えられるのです。
完成するまでに2年かかる商品も!
──1つの商品ができるまでの作業工程を教えてください。
豊川さん「月に1回、アイデア出しのミーティングをしていて、プランナーたちが企画案を持ち寄って話し合います。ここでは、みんなの案をかけあわせながら、進行していきます。その後、商品案を完成させ、サンプルを作ります。サンプルの形状、大きさ、生地の柔らかさなどもチェックして、何度か作り直して、最終仕上げをし、生産していきます」
──商品ができるまでにどれだけの期間がかかりますか?
豊川さん「企画からデビューするまでで、早くても半年以上はかかります。中には2年ほどかかる商品もあります」
──2年もかかると、世の中の価値観や需要も変わりそうですね。
豊川さん「実は私たちは、“世の中の流れとは違うもの”を出しているところがあるんです。
例えば、1位の『ステンドグラスの傘』は大ヒットしたのですが、販売が開始されたのは、コロナ禍になってからで、外出自粛が求められた時期なんです。“多くの人がおうちにこもる流れになっている中、外で使う傘が一番売れた”という、世の中の流れとは逆の傾向が見られました。
それは、物のニーズや世の中の需要とは違う、“情緒的で感動をもたらす商品”になっているからかもしれません」
──確かに! 私も「今すぐに必要ではないけど、いつか使いたい」と思って、ステンドグラスの傘を購入しました。
豊川さん「“誰かに見せたいな” “これを使ったら、楽しい気分になれそう”という気持ちからご購入いただいている方が多いように感じています」
──動物がモチーフの商品が多い理由は、何かありますか?
豊川さん「私たちは、商品を通して楽しい体験をしていただきたいと思っていて、“面白いもの”というよりは、“楽しい時間を作るにはどうしたらいいのか”という発想から商品を作っています。
それで、動物がいてくれると気持ちが楽しくなったり、癒やされたりするところから、リアルで愛らしい立体の生き物を造形していくことが多いんです」
──「YOU+MORE!」をはじめフェリシモの商品は、通販を利用して購入する形で、お届けのシステムは、基本、月1回の定期便になっています。そこにはどんな理由がありますか?
中島さん「“ともにしあわせになるしあわせ”というのがフェリシモのコアバリューで、みなさまと一緒に楽しい時間、しあわせな社会を作っていきたい、という意図で事業を行っています。
例えば、『ひょっこりのぞく 水族館ハンドタオルの会』(月1枚1540円 ※全4枚)という商品がありますが、これは4枚そろうことで、1枚のときよりも豊かな世界(ちいさな水族館)が完成し、“1枚×4種類=4”以上の価値となるコンセプトです。
4枚が一度に届いてハイライトの瞬間が来るのではなく、4か月間、毎月届くことで楽しみが続き、最後は“そろった喜び”を味わっていただきたいと考えています」
商品を届けるだけでなく、「楽しい時間」を提供しているという感じがします。届く期間も含め、「フェリシモさんのお客様を楽しませるための演出」だと捉えてもいいのかもしれませんね。現代は、通販で購入したら、すぐに商品が全てそろった状態で届くことに慣れてしまっていますが、利用者のほうも、フェリシモは“定期便という商品もある”ことを理解して、そのシステムまで楽しむように利用するのがいいのかもしれません。