公園遊びやリトミック体操で育まれたもの
両陛下は、特別な環境で育つ愛子さまの情緒を育てるため、なるべく一般の子どもたちと関わらせようとお考えになっていた。
愛子さまを乳母車に乗せて、当時のお住まいだった東宮御所近くの公園まで何度も足を運ばれたのは、愛子さまに外の風景を見せたかったことと、公園に集まる子どもたちと一緒に遊ばせたかったからだ。
愛子さまは、お話しをする時には構えてしまわれるが、身体を動かしながらコミュニケートすることは得意だった。雅子さまは愛子さまの得意なことを生かされようと、リトミック体操を始められた。東京・渋谷の『こどもの城』にある教室に通われて、ご自宅にもお友だちを招かれた。
一般の子どもたちと公園で遊んだり、リトミック体操などといった集団行動を行うことで、子ども同士で並んで順番を待つことを覚えられたり、道具の貸し借りやお友達がお休みしていることを気にかけたりする社会性も育まれた。
さらに幼少期に身体をたくさん動かすことは必要で、健康になるだけでなく、大人になっても生活にスポーツを取り入れやすいと思っていたのかもしれない。
体力作りでは、陛下も幼少期に天皇皇后両陛下(現・上皇上皇后)から赤坂御用地内の木に登られることを学ばれた。愛子さまが木登りをなさっている写真が公開された時には、上皇夫妻からの教育を受け継いでいらっしゃることがうかがえたものだ。
その後、愛子さまは学校の運動会では足が速いことで知られ、3歳から始められたスキーもプロ並みだという。唯一、苦手といわれたのが水泳で、学校の授業でビート板を使って短い距離を泳がれていた。練習を重ね、初等科6年生の夏に沼津で行われた臨海学校では500メートルを泳がれた。学習院初等科の卒業文集では『大きな力を与えてくれた沼津の海』というタイトルで作文を書かれている。
女子中等科2年生の夏には、さらに練習を重ねて3キロメートルの遠泳に挑戦。見事に泳ぎきられた。
コロナ禍の現在では、オンライン授業の合間に両陛下や職員たちとバドミントンやバレーボール、テニス、ジョギングなどマルチにスポーツを楽しまれている。
人の気持ちに寄り添えるように
陛下は2005年のお誕生日の会見で、当時3歳だった愛子さまの養育方針について、
「どのような立場に将来なるにせよ、一人の人間として立派に育ってほしいと願っております」と質問に答えられた。
この会見で、陛下は米国の家庭教育学者、ドロシー・ロー・ノルトの『子ども』という詩を紹介した。
《友情を知る 子どもは 親切をおぼえる》
《安心を経験した 子どもは 信頼をおぼえる》
《可愛がられ 抱きしめられた子こどもは 世界中の愛情を感じとることをおぼえる》
陛下はこの詩について、
「子どもの成長過程でとても大切な要素を見事に表現していると思います」と感銘を受けられたと語った。
ある宮内庁関係者のひとりも「まだ幼い愛子さまには、帝王教育などではなく、人の気持ちに寄り添えるよう情緒豊かなお子さまになってほしいと願われているのではないでしょうか」と話す。
そのためにもご両親は多くの絵本の中から想像力をつけてほしいと願われた。愛子さまは寝る前に読み聞かせを雅子さまによくせがまれたそうだが、ご自分で読まれるのも大好きで、ついには早く読まれたり、覚えられてしまったり、おふたりで輪唱のように別々の絵本を読みながら楽しまれたという。絵本の中に出てくる言葉をきっかけに「ことばあそび」をなさるようになったという。
七五調の遊びでは、家族でお題を出し合って声にするなどして笑いが絶えなかったそうだ。
当時の東宮大夫の発表では、5歳の愛子さまは「昔話の紙芝居で覚えた『拙者(せっしゃ)』や『わらわ』といった古い言葉を使って、遊ばれています」というものだった。