プリン食べる?
だんだん、姉妹の病院やら、ケアの時間も必要になり、お弁当の仕事もセーブした頃、テレビで目にしていた著名なタレントさんへのお弁当のお届けも増えた。
ある雑誌でタレントさんへお弁当をお届けした後、お弁当を依頼してくれた編集者の方から「お料理の本を出しませんか?」とご連絡を頂いた。
レシピ起こしは得意じゃないし、そう思いながら、半分断るつもりで、打ち合わせに出かけた。丁寧に僕の話を聞いてくださり、いろいろわがままも申し上げながら、パートナーの協力のもと、1冊目の本『僕の献立 本日もお疲れ様でした』(光文社)が完成。好評だったこともあり、2冊目『僕のいたわり飯』(光文社)も約1年後に発売となった。
本が出たことで、雑誌の取材や執筆依頼も増えてきた現在、お弁当や料理の仕事よりも書く仕事のウェイトが高くなってきている。
これは文芸評論家だった姉妹のお父さんである、賀一郎さんが僕に力を貸してくれているのかなと思っている。書くことは、この家を継ぐ者の宿命なのかもしれない。だいたい、賀一郎と要一郎という名前は本当の親子のようだし、偶然だけでは片付けられない、因縁めいた何かを感じる。
母が亡くなり、チョビを抱っこして、これからは二人で強く生きて行こう。どうなるか分からない、この先何が起きても、いつでもチョビを抱っこして守れるようにと購入した大きなリュック。
あの時は、まさかこうしてまた家族ができるなんてことは想像もしなかった。
家族がいるというのは、嬉しいとか、楽しいとか幸せだとか、そんな言葉で片付けられないことのほうがたくさんあると思う。
だけど、ほんの一瞬だけ煌めく瞬間というのが必ずあるのだ。それで全ては帳消しになる。
冬に姉が自宅で転倒し骨折して入院療養となってからは、今はずっしりといろいろなことが僕の肩にのしかかっている。
この家に来た頃、姉がプリン食べる? そう言って、近くの高島屋で買ってきたモロゾフのプリンをいつも出してくれた。時が経ち僕が買いに行くようになり、今は僕が姉の病院へ差し入れ、少し力を貸してほしいなあと思う時に自分で買って食べるのである。この原稿を書き終えたら、モロゾフへプリンを買いに行こう。
(完)