あなたは“結婚がしたい”? それとも “幸せになりたい”?

二村「幸せになる、満足して生きていくための手段として結婚の相手を探しているのに、どうにも相手が見つからないのが原因で “幸せじゃない” んだったら、とりあえず婚活以外のことを楽しんでやっていたほうが道が開けます。いい精神状態でいるほうが、いい相手と出会いやすいです。

 でも、いきなり “あなたが本当にやりたいこと(本当の欲望)は何でしょう?” なんて問われても普通は答えられないですから、まずは出会い系アプリも婚活もやってみたのは、ムダな時間ではなかったと思いますよ。ろくな男と出会えなかったって経験で、“つまらないデートをしているときは、自分の欲望は満たされていない”って、わかったわけですから

──理屈じゃなくて本能的な部分で、合う合わないを判断したのかもしれないですね。

二村「その人のことは好きなんだけど、その人と会ってるときの自分が好きになれない(どこか無理している)ように感じる人とは別れたほうがいいって言いますよね。あれと同じで、どんな欲望を満たしているときの自分が、自分で好きだと思える自分なのか。それが大事です

 自分に無理を強いて叶(かな)えようとしてる欲望は、社会によって作られた欲望であることが多いので、それを満たすと親からほめられたり、他人からうらやましがられたりはしますが、最終的に幸せになれないんです

──確かに結婚願望というのも、社会に作り出された欲望なのかもしれません。

明日香「言われてみれば出会い系アプリで会った、結婚できない悪い男性を好きになってしまっていたときは、心がときめいて絶好調に楽しかったですね(笑)。でも、それもなんか違うんですよ。だんだん自分が大事にされていないことが明らかになってくると、今度は、そんな男と過ごしている自分が嫌いになっちゃう

二村「それはやっぱり、自分にとって “いい欲望”だったのではなくて、ただ脳内麻薬物質が出ていただけだったんじゃないですか。恋愛で取り乱していると、自分の心を守るためにそういうものが分泌されて一時的にハイになって、そのあとで必ず落ち込みますからね」

明日香「ひどい(笑)」

二村「でも何度も言うけど、それもムダじゃなかった、そのときの明日香さんに必要だったんだと思いますよ。20代の10年も、もちろんムダじゃなかった。恋愛でも仕事でも、時間をかけないと “自分は本当は何が欲しいのか” なんて見えてこないです。その人の人生のテーマですから。

 自分の欲望を発見するためには “偶然性” を大切に扱うことも必要です。マッチングアプリでの出会いは一見、偶然のかたまりのようにも思えますけど、事前にわかるスペックにこだわり、微妙だったらお互いすぐに次の人に行けるのは、自意識での判断が働きすぎちゃうでしょ。マッチングアプリは今みんなやってますけど、向いている人と向いていない人がいるのは確かです。

 アプリでもSNSきっかけの恋愛でも、自分の仕事や生活の範囲外にいる人が、いくらでも恋人候補になりえる偶然性はとても面白いですけどね。それが風通しの悪い交際になると視野が狭くなって、その人のヤバい部分に気づくのが遅くなりがちだったり、いいところに気づく前にすぐ諦めて次に行きがちだったり、ということはあるかもしれない

──明日香さんは、ここまで二村さんとお話をされて、なにか心の変化はありましたか?

明日香「最初は、パートナーがいない状態はつまらないし、なんか自分が欠けているんじゃないかって思って、焦っていたんです。でもお話ししているうちに、そこは無理して頑張るべき部分じゃないんだなってわかってきました。

 結婚する気がない男性にふりまわされるのも、婚活のスケジュールを詰め込みすぎて毎週末、土日の昼・夜を使って4人と会うなんていうのも、ハイにはなりますけど、生活に余裕がなくなるんですよね(笑)。

 婚活はゆるく続けるとは思いますけど、 余裕がない自分はあんまり好きじゃないので、アプリに頼るのはほどほどにして、自分のペースでいろんなところに出かけて、いろんな人に直に会って、偶然すてきな人と仲よくなる可能性を増やしていこうって今は思っています

*本日の二村格言*

「理想論での結婚像を持たないで、やっぱり女性こそ “いま現在の自分の欲望” と向かいあうべきなんです。(中略)どんな欲望を満たしているときの自分が、自分で好きだと思える自分なのか。それが大事です」

 まるで心の奥底を見透かされているような二村さんの言葉。実は、みんな本心では、これまで親にも友達にも明かしてこなかった欲望が渦を巻いているのかもしれません。人にも言えないような悩みや不安を、そっと二村さんに話してみませんか?

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(取材・文/池守りぜね、監修/二村ヒトシ)


【PROFILE】
二村ヒトシ(にむら・ひとし) ◎1964年、六本木生まれ。慶應義塾幼稚舎卒、慶應義塾大学文学部中退。AV男優を経て、'97年からAV監督。現在では定番になっているエロの演出を数多く創案した。著書に『すべてはモテるためである』 『なぜあなたは「愛してくれない人」を好きになるのか』(いずれもイースト・プレス)、共著に『オトコのカラダはキモチいい』(ダ・ヴィンチブックス)、『どうすれば愛しあえるの ──幸せな性愛のヒント──』(KKベストセラーズ)、『欲望会議』(角川ソフィア文庫)など。
本人Twitter→@nimurahitoshi