自分ができる範囲内で、丁寧に暮らしていけばいいのかな
──アンナさんは2021年、『グランマ・モーゼス展』の公式サポーターを務められました。グランマ・モーゼスは70歳で本格的に絵を描き始めて、80歳のときに初個展を開催、今では知る人ぞ知るアメリカを代表する画家です。年齢を気にせず、表現したいことをどんどん表現していくというところが、アンナさんも共通しているのかなと感じました。
「そうかもしれないですね。やっぱりある年齢まで来ると、自分に何ができるのかって考えますよね。止まったらダメだって思うんです。私自身、何かしていたいっていう気持ちがすごく強くて、できるだけ社会に参加したいと思っています」
──確かにアンナさんは、イラストだけではなく、お料理本を発表したり、雑誌のカバーモデルを務められたり、今も生き生きと活躍されています。
「ありがたいなって心から思うんですが、自分からやりたい!って言ったことはなくて、誘われることが多いんです。で、そのときに、“何でもやってみなきゃわからない精神”で、“いいよ!”って答えちゃうんです(笑)。自信なんてないですよ。イラスト展もそうでしたから。
間違ってもいいじゃない、チャンスなんだからやってみようって思うんですよね。自信がないとか、そんなこと言っていたら、死ぬまで自信はずっと出てこないような気がします(笑)」
──そのとおりですね。一度きりの人生、楽しそうと思ったら乗ってみてもいいかもしれません。
「そうそう。失敗したら、その後考えればいいんだから(笑)」
──勇気が出てきました、ありがとうございます。そして、早いもので2022年も最後の月になりました。2023年、アンナさんが新たに挑戦したいことはありますか?
「その質問はよく聞かれるんですけど、50代 くらいのときはあれもこれもやらなくちゃという気持ちがありました。でも、今は新しいことを始めるというよりも、今の生活の中でもっと深いところを見ていきたいと思っています。
別に難しいことじゃないんです。例えば、お散歩していて草花の香りを感じたときに、お花をじっくり観察したり、季節の変化や今まで自分がやってきたことをもっと深く強く感じたいなって思うんです。
年を重ねてくると、時間の流れや動作もゆっくりゆっくりになってくるじゃないですか。そうするともっと気持ちに余裕が出てくるんですよね。忙しく走り回らなくても自分ができる範囲内で、丁寧に暮らしていけばいいのかなと思います。それが幸せの源になるし、最終的にすべてつながってくるのかもしれないですね」
アンナさんの素敵な絵に囲まれて行われたインタビュー。クリスマスシーズンということもあって、麻布十番の街も少し浮き足立ったような華やかさにあふれていました。インタビュー中も、次から次へとアンナさんの知り合いの方々がギャラリーに入っていらっしゃって、アットホームな雰囲気の中の取材となりました。
取材陣が帰るときも「一緒に写真を撮りましょう」と声をかけてくださって、図々しくもアンナさんの横をゲット。そして、「またね」と笑顔で手を振ってくださったアンナさん。ギャラリーから出ると北風が冷たく吹いていましたが、ホットワインを飲んだようなポッと温かな気持ちになりながら家路に着いたのでした。
(取材・文/花村扶美)
《PROFILE》
結城アンナ(ゆうき・あんな)◎1955年、スウェーデンに生まれる。10代から雑誌『an・an』(マガジンハウス)をはじめとするファッション誌、CM、広告などでモデルとして活躍し、俳優・岩城滉一氏と結婚。その後は夫婦でCMやテレビ番組などに出演する。60歳を迎えてから本格的に芸能活動を再開し、60代のおしゃれアイコンとして注目を集め、現在は雑誌のモデルやトークショーなど多方面で活躍。著書に『自分をいたわる暮らしごと』『Anna’s Cookbook 季節の食卓』(ともに主婦と生活社)ほか。
Instagram: @ayukihouse
12月イラスト展 結城アンナ
会場:ギャラリー・ラ・リューシュ(東京都港区麻布十番2-13-2)
電話:03-3452-0800
会期:2022年12月2日(金)〜12月7日(水)11:00〜18:00
入館料:無料