「教員の無賃残業はおかしい!」と訴えた小学校教員、田中まさおさんの裁判で、最高裁は今月上旬、田中さんの上告を退ける決定を下しました。2018年9月にさいたま地裁で始まった裁判は田中さんの敗訴が確定したことになります。でも、田中さんはまったく気落ちしていません。次のアクションを起こそうと元気いっぱいです。今考えていることを聞いてみました。(以下、語り:田中まさお/聞き書き:牧内昇平)
(田中さんが立ち上がったわけや裁判を始めた経緯はプロローグ記事で詳しくお伝えしています→https://fumufumunews.jp/articles/-/23602)
裁判を通して「全国の至るところに“田中まさお”が現れてくれた」
──最高裁の決定を知ったときはどんな気持ちでしたか?
田中:私は今月9日に弁護士の方から結果を伝えられました。最初はやっぱりショックでしたよ。教員が時間外勤務を強いられているのは間違いないのに、裁判所がその状況を正してくれないことが確定したのですから。でも、提訴からの日々を思い返したときに感じたのは「うれしさ」でした。
──「うれしさ」とは?
田中:教員の無賃残業の現状をみなさんに知ってほしいと思って裁判を起こしました。ひとりで裁判を闘って、「せめてこの状況を知ってもらいたい」という気持ちだけでした。でも、実際に裁判を起こしたら、全国の人が励ましてくれたんです。Twitterの私のアカウントには、たくさんのメッセージが寄せられています。「教員を辞めようと思っていたけれど、田中さんが裁判を起こしたおかげで頑張れます」と言ってくれた人もいます。こうした応援は私にとって、一緒に闘ってくれているのと同じです。
──田中さんの「ひとり裁判」はいつの間にか「みんなの裁判」になっていたのですね。
田中:そうです。名前も顔も知らない人たちが「教員の無賃残業はおかしい」という方向性を共有してくれて、今回の最高裁の決定に対しては、「残念だ」「間違っている」と声を上げてくれました。私は「田中まさお」という仮名で活動しましたが、全国の至るところに「田中まさお」が現れてくれたんです。ひとりで闘おうと思っていた私にとって、これは予想外のうれしい展開でした。私はその感激を自身のTwitterにも書き記しました。