新しい裁判のポイントを専門家が語る

 第2次訴訟の勝算はいかに。 

 学校教員の給与の仕組みを決める「給特法」という法律には、「超勤4項目(校外実習・修学旅行・職員会議・非常災害)をのぞいて教員に時間外勤務を命じてはならない」と書いてあります。しかし、田中まさお裁判の判決は、田中さんが夕方5時以降にしていた仕事の一部(授業計画の作成など)を「校長に命じられた労働」と認定しました。田中さんの代理人を務める若生直樹弁護士は記者会見で、この点を指摘しました。

「本来は存在してはならない時間外勤務が実際には存在している。しかし誰もその責任を問われていない。公立学校の教員の方たちは明らかに矛盾した状況に置かれていることが、裁判を通じて明らかになりました。これまでの法制度やその運用を改めなければいけないことを、もう一度主張していきたいと思います」

田中さんの代理人を務める若生直樹弁護士=同

 また、田中まさおさんの裁判では、提訴前の11か月間に660時間あったはずの時間外勤務が、裁判所の認定では32時間に減ってしまったことがポイントでした。本来は存在しないはずの時間外勤務だけれど、月に数時間ほどであれば違法とまでは言えない、というのが裁判所のロジックでした。

 田中まさお裁判を支援するひとり、埼玉大学の高橋哲准教授(教育学)は記者会見でこう話しました。

「第1次訴訟(田中まさおさんの裁判)の地裁・高裁判決は、教員の時間外労働が放置され、常態化していた場合には違法となる可能性があることを認めました。ただ、原告(田中まさおさん)の働き方では、違法とまでは言えないというのが結論だったわけです。今もっとも時間外労働が長い中学校教員や、強制部活動が問題になっている高校教員の方々が原告となった場合、違法であると認められる可能性は高いと言えるでしょう」

田中さんの裁判を支援する埼玉大の髙橋哲准教授=同