令和においては、幅広い“マス”でなく“コア”を取りに行く
そもそも、商品名『パクチーすぎて草』の「~すぎて草」という言い回しも、若者が多く使うネットミーム。さらにキャッチコピーには《草越えて森越えて山越えてアマゾン生えてしまうかも?!》といった文言が用いられており、これもよくネットで見られる言い回しです。
「商品名やキャッチコピーに関しても、私の世代が理解できるようではダメだと。“私が見聞きしても何のことだかわからないレベルまで振り切ってほしい”とオーダーしました」(小田さん)
社長を交えた試食会でも「草(そう)? え、これ、草(くさ)って読むの? どういう意味?」といった戸惑いの声や賛否両論が巻き起こり、場が驚きで満ちあふれたそう。
「裏話もあり、実は、開発担当者はパクチーが大の苦手でした(笑)。それでも毎日のように何十食も試作を重ね、自分が食べられるよう味つけやトッピングを工夫していきました。完成版はトマトとヤンニョムソースをベースに海老をトッピング。チーズでコクを出し、甘辛い味がアクセントに。開発期間3か月、苦手な食材で試行錯誤を続けた結果、なんとその担当者はパクチーサラダまで食べられるようになったんです」(篠﨑さん)
パクチーが苦手な者が開発したからこそ、パクチーが苦手な人でも意外と食べられる商品に。そしてもちろんパクチー好きにはたまらなかったようで、その見た目、味、香りが好評を得ました。
この狭く、ニッチでコアな場所を狙うというのは今のテレビ業界も同じです。昭和はマス広告が主流で、企業側から消費者に向けて一方的に発信するのが当たり前。テレビも浅く広くの世帯視聴率でしたが、現在は個人視聴率が重視されており、“いかにコアなファンを作るか”が最重要の課題となっています。今回も『パクチーすぎて草』のビジュアル、商品名、キャッチコピーについて、SNS等に「この企業姿勢、好き」という投稿があり、『ピザハット』の狙いの萌芽が見られ始めています。
「今後は企業からの一方的な発信ではなく、お客様からの口コミや、コアファンの自発的な発信によるブランディングが必要不可欠。その観点においても、今回の企画は大きな意味があったと思っています。
そして、こうした自由で遊び心のある施策、さらにはTikTokで社長が試食している様子や、悪役俳優ユニットの純悪さん、お笑いタレント・もりせいじゅさんとの意外なコラボ動画、社員がのびのびと働く姿を投稿することで、“この会社は楽しそうだな”などと思ってもらいたい。若手の人手不足が深刻な今、こういった取り組みが新入社員の増加にもつながっていきます。
『パクチーすぎて草』はネタとして“ついで買い”する方もいらっしゃり、売り上げは想定の2倍以上。ネットでの“バズ”が追い風となってピザ全体の収益も順調に推移しており、効果は絶大です」(小田さん)
「売る」ではなく「バズる」に振り切った結果、企業のファンが獲得され、人手不足も解消方向へ、そして収益も順調という一石三鳥が実現された──。
「見栄えももちろんなんですけど、本当においしさにこだわって作った商品。本当に好きな人には、もう“追いパク(追いパクチー)”もしながら思う存分に食べていただきたいですし、嫌いな方も意外に食べられちゃう可能性もあるので、ぜひ一度オーダーして、アリかナシかで盛り上がっていただきたいです」
と篠﨑さん。そんな『ピザハット』の今後の課題は、「ライバルを同業者に設定するのではなく、お弁当店、コンビニ店などに照準を定め、日本中の“胃袋”を掴むこと」だそうです。
◇ ◇ ◇
デジタル全盛の今、世の中もマーケティングも急速な変化を見せています。当然、そこにZ世代の力は欠かせない。しかし、Z世代を獲りにいきたいからZ世代に任せるという“当たり前”は、リスク面もあり難しい。と考える企業も多いでしょう。ですが「売り上げをたてる」というリスクなしならZ世代にも挑戦させられるし、新たな風を会社に送り込める可能性もある。今後、『パクチーすぎて草』プロジェクトが『ピザハット』の、また日本企業のさまざまな課題解決につながるのであれば、「パクチー効果すごすぎて草」といえる日が来るかもしれません。
【取材・文/衣輪晋一(メディア研究家)】
◎価格 持ち帰りMサイズ:税込2500円/デリバリーMサイズ:税込2800円
◎販売期間 2023年3月20日〜4月9日
◎開催店舗 一部店舗限定(251店舗)
※詳細は公式HPへ→https://www.pizzahut.jp/topic/coriander/lol/?utm_source=pressrelease&utm_medium=prtimes&utm_campaign=coriander
・『ピザハット』公式Twitter: https://twitter.com/Pizza_Hut_Japan
公式Instagram: https://www.instagram.com/pizza_hut_japan/
公式TikTok: https://www.tiktok.com/@pizza_hut_japan
公式YouTubeチャンネル: https://www.youtube.com/user/PizzaHutWeb/videos