あと1問のところで強敵登場によりピンチに!
こちらとしては早く問題を出してほしいのに、ここぞとばかりに留さんが焦らします。
「フェニックスからバスで6時間近く、遠いところです。めったに来ることができないモニュメントバレーにやってきました。素晴らしい景色ですね。昔は海の底に沈んでおりました。それが隆起しまして、そのあと、風の浸食でこのような風景ができあがったのであります」
そ、その説明、いまはいらん!
「ルール説明を申し上げます」
ここから長々とルール説明。チャレンジャーはこのタイミングで、初めてルールを知りました。
走りながら、「なるほど2点先取ね」と思う私。こうなれば、狙うは2回連続で正解してさっさと勝ち抜くことです。とはいえ、誤答で最後尾へ行くのも避けなければ……。
「問題、『寂しい荒野に埋めてくれるな』がテーマソング、ここモニュメントバレーを疾走する乗り物がタイトルになっている西部劇の名作は?」
ピーン(ボタンを押す音)。
「西沢!」
「『駅馬車』!」
ピンポーン(正解音)。
運よく1問目を正解。問題が監督名にまで及ぶのではと考え、慎重に最後まで問題文を聞いての正解です。
“よし! あと1問正解で抜けられる!”と思ったのに、後ろの列から強敵、森田敬和さんが登場。
「問題、童謡『うさぎとかめ』。うさぎとかめが競走したのは、どこまで?」
ピーン。
「森田!」
「向こうのお山のふもとまで!」
ピンポーン。
ああ、取られてしまった。最後尾へ移動する私。オンエアでは、全員がスルーした問題はカットされているので短く感じますが、それから再び先頭に戻るまでの、長かったことといったら……。私はとにかく無心で腹式呼吸をしながら走っていました。
ようやく先頭の順番が巡ってきて、「セ・リーグ6球団の中で、帽子のマークがアルファベットひと文字なのは何球団?」という問題に「2球団」と正解して抜けることができました。
これ、もうかなり疲れていて、頭の中で整理する間もなくボタンを押して、かなり勘に近い正解だったような気がします。あれが不正解で最後尾へ回っていたら、本当に危なかったかもしれません……。
人から「ウルトラクイズの体力クイズって本当にキツかったの?」と尋ねられたら、こう答えます。
「罰ゲームと一緒で、テレビで見るよりも数倍は大変です」
事実、このときのマラソンクイズでは、勝ち抜けたものの、貧血症状になって体調を崩したチャレンジャーがいました。
余談ですが、このモニュメントバレーでのクイズが始まる前、砂漠の中を移動しているとき、チャレンジャーのひとりが広大な景色に感極まって、「最高だよな。これがウルトラクイズだよな」とつぶやいていました。
その言葉を聞いて、“本当にそうだよな”と、やけに感動したのを覚えています。
(文/西沢泰生)
【PROFILE】
西沢泰生(にしざわ・やすお) 2012年、会社員時代に『壁を越えられないときに教えてくれる一流の人のすごい考え方』(アスコム)で作家デビュー。現在は作家として独立。主な著書『夜、眠る前に読むと心が「ほっ」とする50の物語』(三笠書房)『コーヒーと楽しむ 心が「ホッと」温まる50の物語』(PHP文庫)他。趣味のクイズでは「アタック25」優勝、「第10回アメリカ横断ウルトラクイズ」準優勝など。