仕事、私事、志事……3つの「しごと」

唐川 僕は企業でコーチングをする中で、よく感じることがあります。日本企業は、成功した人を真似(まね)ることを考えがちで、ビジネスも欧米のある会社が成功したところを上澄みだけすくい取って真似るようなアプローチをやって大失敗することがあるんですが、なぜ失敗したのかを突き詰めて考えることも必要だと思うんです。

 どう成功したかを考えるのも必要ですが、どうやったら変な失敗をしないのか、失敗からどう学んで少しずつ方向修正できるのかを考えるということも重要です。どうやったら「うろうろアリ」になれるのかも大事ですが、どうやったら働きアリ的な発想から抜け出せるのか、ちょっと違う角度から考えることも大事だと思います。

横井 言われたことをやる働きアリではなく、自分で判断する力のある働きアリになってほしいですね。自分の頭で考えていない人は過去の事例にとらわれて判断するけれど、それではダメ。僕はウィズの社員にもアイデアマンであれと言っていました。アイデアマンというのは、別に企画だけじゃない。経営の人間も財務の人間も全部アイデアマンでないといけない。

 昨日の続きは明日じゃないし、明日の続きは明後日じゃない。とにかく同じことをするな。日々進化しようとする精神は、ものすごく大事です

唐川 会社も働きアリが自分の考えを持ってうろうろすることを求めていると思います。経験やスキルを身につけたうえで言うからこそ聞いてもらえることもあるでしょうが、これまで会社では十分に表現してこなかった、自分の中にある多様性を感じさせることで聞いてもらえることもたくさんあります。

 だから僕は自分が仕える「仕事」と、個人の情熱などの「私事(しごと)」、そして社会に対する目的意識などの「志事(しごと)」という「3つのしごと」を組み合わせることで、新しい仕事に対するやり方はいくらでも工夫できて楽しいものになると感じます。

唐川靖弘さん 撮影/岡利恵子

横井 私は中学時代から焼き肉店でアルバイトしていたんですが、最初に皿洗いをやらされてつまらなかったんですよ。そこで、今日は10分間で20枚皿を洗ったら、次の日は10分間で25枚洗うというように、自分の中でゲームにしたんです。

 そうやって早くなると、周りの人が頑張っていると勘違いしてくれるんですね。仕事だけど、自分の目標を作ってそれを達成していると、一生懸命やっているように見える。つまらないから、いかに面白くしようかを考えると、結果的に面白くなってくるんです。