精神医療の現場で医療者たちが思っていること
──精神医療者がナーバスになるのは、以前、精神疾患がタブー視されていたこともあるのでしょうが、最近はどうですか?
「以前より患者さんが気軽に受診できるようになり、早い段階で治療をスタートする方が増えていると聞いています。
精神疾患が早期に気づかれるようになったのは進歩ですよね。例えば、発達障害があって孤独な人は、二次疾患として統合失調症など、ほかの精神疾患を患うケースもあるそうです。
また、父が入院していたころに、“ナースは心のケアをしてくれるけれど、医師は治療こそちゃんとしてくれるものの、患者の感情にはそこまで目を向けてくれないんだな”と思うことがあったのですが、医師の中にも患者さんへの心のケアをしたいとおっしゃる方がいました」
──私も親族に医師がいますが、多数の患者さんを診察するために、心のケアをしにくい状況があると言っていました。
「私が取材した医師の中にも、“患者さんの心のケアをする時間が思うように作れない”、“ナースがうらやましい”とおっしゃる方がいて。
医師は周囲にも治療についての相談がしにくく、万一、誤診をしてしまったら訴訟になるリスクも背負っています。重い責任がつきまとう孤独な職業だと感じました」
──医療者に対するインタビュアーをしている中で気づいたことは?
「無意識のうちに自分の考えを捨てて、医療者の言うことが正解だと思おうとしすぎるときがあります。でも、取材中に違和感を抱いたらスルーしないようにしよう、自分の気になることをはっきり聞こう、と心に決めました。
2020年以降は新型コロナの影響で取材がほぼオンラインになり、訪問看護の同行もできなくなりました。プライベートでも友だちに会えなくなったので、気づかないうちにストレスがたまっているなと自覚しています。
医療者に取材をして漫画を描く中で、
(取材・文/若林理央)
【PROFILE】
水谷緑(みずたに・みどり) ◎神奈川県生まれ。2013年にKADOKAWA/メディアファクトリーの「コミックエッセイプチ大賞」を受賞。翌年、受賞作を『あたふた研修医やってます。』として書籍化し、デビュー。著書に『精神科ナースになったわけ』(イースト・プレス刊)『大切な人が死ぬとき』(竹書房刊)『32歳で初期乳がん 全然受け入れてません』(竹書房刊)など。現在、『月刊!スピリッツ』で『こころのナース夜野さん』(小学館刊)を連載中。
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