やっかいな「無言移動」のルール

 この日の2時間目は体育、4時間目は音楽でした。そうすると、前後の休み時間は「移動」のためにつぶれます。担任は子どもたちを廊下に整列させて、校庭や音楽室まで引率する必要があったんです。本来は子どもたちだけで移動させればいいのですが、私が勤務する学校では、「教室を移動するときは私語をせずに『無言』で」というルールがありました。それを守らせるために担任が一緒に移動することになっていました。

 こういうルールがある学校は少なくないはずです。長い年月のあいだに、どんどん細かくなっていきます。いったんルールができあがってしまうと、それを子どもたちに守らせるために教員の指導が要求されます。こうして教員の仕事が増えていきます。

給食の時間もルールばかり

12:30~13:15 給食
13:15~13:20 歯磨きタイム
13:20~13:40 掃除
13:40~14:00 昼休み

 給食の時間は45分間ですが、実際は食べる前の配膳に15~20分かかり、終わりの5~10分は片づけの時間なので、食べる時間は20分あるかないかです

 給食の指導にも細かいルールがあります。例えば、配膳中も先ほどの『無言』がルールです。担任は食べ残しを減らすための指導を求められ、残飯の量は毎日、給食室から校長に報告されます。後片づけにもマニュアルのようなものがあり、牛乳パックの学校特有の折りたたみ方とか、個包装のパンの袋はクラスでひとつにまとめるとか、箸やスプーンの向きをすべて同じ方向にして入れるなど、細かなルールがあります。

 昔はそんなに細かいルールはありませんでした。だから教員たちは自分のぶんを食べ終わったらドリルの確認などをやっていたものです。今ではそういうのは無理ですね。

 昔は、何をどう指導するかは担任に任されている部分が多かったんです。それが、だんだん全校統一のルールを作るようになりました。給食の片づけはこうやりましょうとか、掃除の手順はこう決めますとか。そうすると、自然とルールは細かくなっていき、これまた教員の負担は増えていきます。

教員の休憩時間は無視されていた

14:00~14:45 5時間目(算数)
~15:10 完全下校
15:10~    職員会議、運営委員会、研修会
16:30~    事務作業

 5時間目が終わると子どもたちは下校です。昔と違って、通学路ごとに班を作って帰る「集団下校」になります。担任は教室で帰りの会をしたあと、校門の前まで出て行って、子どもたちを班ごとに並ばせる仕事が増えました。  ケンカなどのトラブルも起きやすいので結構時間をとられますね。

 放課後は会議で忙殺されます。月曜日は職員会議があり、火曜から金曜もたくさんの委員会や研修会がありました。学力向上推進委員会、人権教育推進委員会、体力向上推進委員会、教育課程(通知表)検討委員会などです。

 本来の終業時刻は17時ですが、それまでに担任としてやるべき仕事が終わることはありません。私はだいたい18時半くらいまで働いていました。宿題の確認などに時間をかける若い先生たちは21時くらいまで残っていたようです。

 もうひとつ重要なのは、本来は教員にも『休憩時間』が設定されていることです。この学校では、清掃後の昼休みのあいだに20分間、さらに放課後の16時20分から45分までの25分間が、教員の休憩時間のはずでした。しかし、この時間帯に休んでいる教員はひとりもいませんでした。昼休みは子どもと接したり提出物を確認したりで忙しいです。放課後はこの時間帯に会議が設定されることもしばしばありました。

 教員たちにきちんと休憩を取らせるのは管理職である校長の責任だと思いますが、当時私が勤めていた学校の校長には、残念ながらそういう意識がありませんでした。