先生たちは子どもの心が見えなくなっている

 裁判を起こした当時の私の1日の流れを紹介しました。その後、異動した先の学校では少し状況が変わったのですが、そのことには今後触れたいと思います。

 今の先生はとにかく忙しすぎます。時間外勤務が長いというだけでなく、日中の正規の勤務時間内も忙しすぎる。校長や教育委員会が「そうしなさい」と言っているからです。なにしろ、私の裁判で埼玉県は、「給食の時間に事務作業ができたはずだ」と主張していますから。子どもたちが教室にいるあいだも、暇を盗んでテストの丸つけや書類仕事をすることが奨励されているわけです。

 若い教員たちの中で管理職から「優秀」と言われるのは、こういうことができる人たちです。でも、これでいいのでしょうか? 事務作業に追われていたら、子どもを見る余裕がなくなります。教室の後ろでいじめが発生しても教師は見ていないのです。真剣に見ているのは机上の提出物と書類です。

 計算ドリルをチェックしているから、どの問題ができないかはわかる。けれど、その子がなぜその問題を解けないかはわからない。その子の心を見ていないからです。これが子どもたちにとって望ましい状況でしょうか? 私は疑問に思っています。

(取材・文/牧内昇平)

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