働き方が変わる? 全国の教員のみなさんもトライを

 公平委員会に申し立てたのは、われながらグッドアイデアでした。ただし問題は、自分が今いる学校しか変わらない心配があるということです。公平委員会は職員個人の苦情に対応する場所なので、私が勤務する学校限定で対策を促すと聞いています。そうすると、隣の学校にまで影響を及ぼすことはできません。公平委員会は全国各地の自治体にあるはずです。自分の学校の働き方を変えたい教員の方は、ぜひ相談してみるといいと思います。

 もちろん、相談しても必ずうまくいくとは限らないでしょう。私が今いる学校は、校長が「時間外勤務は減らすべきだ」という私の考えを理解してくれています。また、私の裁判のことを知っているので、「法律を守らないとうるさく言われる」と思っているのかもしれません。いずれにしても試してみる価値はあると思います。

世の中全体で「教員の担うべき仕事」を考えよう

 実際には1日に3時間も4時間も時間外勤務をしている教員たちがいます。紹介したようなアイデアでは解決できないレベルでしょう。学校の教員にどこまで求めるのかを考えなければいけないと思います。

 例えば、児童虐待の問題があります。虐待は学校ではなく家庭で起こるものですが、虐待の有無を把握しておくことが教員の大事な業務のひとつになっています。また、不登校の心配がある子がいた場合、1時間目の授業があってもほかの子を待たせて職員室に戻り、家庭に電話しなければいけません。大勢の子への授業と不登校の子・家庭への対応を同時にやる必要があります。放課後には校長から「児童が3日休んだら家庭訪問に行ってきてください」と指示を受けます。私が教員になった40年前はそこまでしていませんでした。

 もちろん、虐待や不登校への対策はとても大切です。私を含め、日本中の教員たちがそう思っているからこそ、その仕事を担っています。でも、実際は教員よりもソーシャルワーカーなど別の専門職の人が担うべき仕事かもしれません。教員の専門はあくまで授業です。授業をうまく構成するには、さまざまな準備や教材の研究が必要です。今はその時間がありません。教員の担うべき業務はどこまでか、世の中全体で議論すべきです。今までのように教員を無賃で働かせる方法では限界があります。

(取材・文/牧内昇平)

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田中まさおさんは第2次訴訟の原告を募集している。詳細は4月23日に発表される予定=3月27日、筆者撮影