どこにでもいそうな外見をしながら、誰にもマネできないネタを繰り出す、奇跡の中年女性芸人・阿佐ヶ谷姉妹。

 芸も面白いですが、幻冬舎文庫から出ているふたりのエッセイ本『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』も本当に面白いので、おすすめです。姉・江里子さんと妹・美穂さんが同居する6畳1Kアパートでの出来事を交代で綴っているのですが、地味だけどユニークな切り取り方にクスリと笑ってしまう。さくらももこ先生の『ちびまる子ちゃん』みたいな世界観を楽しめます。疲れている時とか、何も考えたくない時にこそ読んでほしいです。

 そのエッセイの中で赤線を引きたくなったのが、今回の言葉です。

 ある日、美穂さんがシチューを作ったのですが、美穂さんが自分の分だけよそって食べ始めたことに、江里子さんがちょっと腹を立てます。「私がお料理を作った時は、たいてい2人分テーブルに持ってくるけど」と、自分ならこうするのに、なんで美穂さんはやらないんだ、と切ない気持ちになったそうですが、しばらくして気づきます。実際には夫婦でも家族でもないふたりだし、自分がしてほしいことを相手に要求していることが変な話なのだと。

やってもらう事は「必須」ではなく「サービス」なのだ。そう思うと、落ち着いてきました。

 家族や夫婦、友人関係でも、私も同じようなことでモヤモヤすることがあったので、そうかと膝を打ちました。江里子姉さん、素敵な言葉をありがとう。(知)