ここ数年(もっと前からかもしれませんが)、私が働いている出版界は厳しい状況が続いています。全国の書店数が減り(30年前には、全国に約25000店舗あった書店数も今はその半数にまで減りました)、本の輸送代金も値上がりし、さらに国際情勢の不安定な煽りを受け紙の値段も跳ね上がり、本作りがままならない状況です。
ネットの情報は、そのほとんどは無料で読めますし、お金を出してリアルな雑誌や書籍を買う人が減ってしまいました。
そんな状況の中、弊社の管理部門の幹部と雑談をしていると……。
「確かに取り巻く環境は厳しいけど、最近作り手の熱量も下がってきているように思います」
と。彼は弊社の幹部として新たに刊行する書籍などの企画会議には必ず出席しています。その会議では、管理部門の視点から採算などの問題点を鋭く指摘する役割を担っています。作り手からは「数字だけ」を見て厳しい話をしてくる人という印象です。
しかし、彼は「もちろん、会社なので数字は大事。でも編集者の熱量はもっと大切ですよね。確かに採算は悪いかもしれないけど、でもどーしても出したい! という声をあげてほしい」と。この言葉で最近の私は、数字ばかりを気にしていたことに気づきました。逆に管理部門の人が「数字だけ」ではなく、作り手の「熱量」も気にしていたことを知りました。モノ作りの基本って、情熱(エネルギーといってもいいかも)ですよね。環境が悪いことを理由に原点を忘れかけていました。自戒を込めて『情熱の薔薇』の一節を選びました。(文)