デビューから30年余、もうすぐ50歳の節目を迎える葛󠄀山信吾。インタビュー後編では、広く世に知られるきっかけとなった『仮面ライダークウガ』『真珠夫人』のエピソード、順風満帆に見える活動のなかで「引退の危機」があったこと、窮地を救った意外な人物との出会いなど、さらにディープな内容でお届けします。
※インタビュー前編:『葛󠄀山信吾が事務所から独立「自分で責任を持つ」。コロナ禍での決断と家族の支え』
実は仮面ライダー役だった!?
葛󠄀山信吾の長い俳優生活の中でひときわ異彩を放つのが『仮面ライダークウガ』(2000年)だ。昭和の子どもたちを熱狂させた『仮面ライダー』が久々に復活、今日まで続く人気シリーズの第一弾となった記念すべき作品だ。
「これまで数多くのドラマに出演させていただいて作品への思いはそれぞれあるんですが、やっぱり世の中に知っていただけたという意味では『仮面ライダークウガ』が大きな転機になったと思っています」
葛󠄀山は刑事・一条薫役で人気を博したが、当初は別の役でオーディションを受けている。
「主人公の仮面ライダーに変身する青年の役でお話をいただきました。でも、銀座の東映本社に行って何度か面接を受けたんですが、“ちょっと今回の主演の青年とはイメージが違う”と。
普通ならそこで “ごめんなさい”で終わりなんですが、“実はその青年を補佐していろんなアイテムを渡していく刑事役がありまして。むしろ、そっちにイメージがピッタリなんでやっていただけませんか”っていう、とてもありがたいお話で。僕は『仮面ライダー』は子どものころあまり見ていなかったんですが、刑事役にはすごく興味があったので “ぜひやらせてください!”っていうことで決まったんです」
主演の五代雄介にはオダギリジョーが抜擢(ばってき)され、明るい笑顔で子どもたちを魅了。葛󠄀山演じる一条薫は真面目で責任感の強いキャラクター。この対照的な2人のバディがうけた。
しかも、一条薫は射撃の名手という設定。
「男の子にとってみれば本当に楽しい現場でした。僕は石原軍団とか『西部警察』が大好きだったので、覆面パトカーだったり銃だったりヘリコプターだったり、いろんなものを与えてもらって。本当に楽しくやらせていただきました(笑)。
オダギリくんは、もともとアメリカの大学に演出家志望で入って役者の勉強をしてきた人なので、当時からクリエイティブな感覚をすごく持っていました」
その後、オダギリは映画監督にも進出し、独自の作品世界を構築。昨年NHKで放送されたドラマ『オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ』には葛󠄀山も出演している。オファーはオダギリ本人からあったという。
「オダギリくんが自分で脚本を書いて撮るということで “本当にちょっとしか出番がないんですけど、葛󠄀山さんのイメージなので出てほしい”と。ワンシーンであろうと、声をかけてもらったことがすごくうれしかったです。
現場では少しだけですが話をしました。“変わってないですねー”って言われましたが、僕の感覚的にはオダギリくんも変わってない。若い日の思いを持ち続けてそのまま進んでいる、やりたいことを一生懸命やってるんだ、と勇気をもらいましたね」